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【二度目の決着 アネモネの視点】


【二度目の決着 アネモネの視点】




完璧に倒す。勇者の王のロボで。


タリアは恐らく自分の理想の勝ちを確信し、完全に眠りに落ちた。だからもう結末は決まっている筈。あとはそれに沿って締めを託された私がやり遂げるだけ。




異界の穴から迫る巨大な足の化け物。大きすぎてまるでゆっくり近づいてるような錯覚がある。



──こいつを倒し、ついでに一応穴が閉じるまで向こう側を破壊し尽くして、今回は、終わりよ!




「まずは!スクリューネイル!!」



聖乙女の短剣……はもう烏滸がましい表現過ぎるわね。『命令』を通しやすい特別な短剣を強く振るう。風を通して、地上の素材に全力の魔力伝達を開始する。




大量の魔法素材が変化して、長い長い天を貫く極太スクリューネイルが地面から生えていく。あれよね。途中からぐるぐるしてる釘。いわゆるネジ釘よね。たしか図を見た感じこれだったはず。




「なぜ!?巨大ロボの話はどうした!!?」

「なあ勇者!我まったく話についていけないんだが!」

「俺もだよ!あ、一応俺の溢れてる魔力アネモネのほうに流してくれ」

「ぬ……確か姉御達は勇者召喚を超えたいって話だったぞ?勇者の力使っちゃダメだろ」

「大気中の魔力が濃くなっただけ。バレなきゃいい。最優先は皆の安全だろ?」

「さすがインテリ長話エロ勇者、一理あるな!」

「皆わりと俺のカテゴリ分け酷いな」



何かまた暗躍しようとしている。意外と賢い枠同士のサキュバス格闘家と勇者様に細かく説明したい気もするけど、私もあんまり理屈で理解出来ているわけじゃないし、説明も下手。だから見せるのが手っ取り早いわ。たぶん。




ついに穴からこちらの世界にまで迫る巨大な足。


その足に向かって巨大化しながら伸びていくスクリューネイル。



……まずは、動きを止めるわ。止めるというか、沢山のネジ釘を踏んだら止まるしか無いわよね!




ズブブブという音が同時に複数。わぁ痛そう。



『ギィイイアアアアアアアアアアアアアア!!!』

「うわあああグロォオい!!!」「ひぃいいいいい!!!」



幾つものネジ釘を踏んだ化け物が絶叫し、ついでに勇者様とサキュバス格闘家が痛みを想像したのか恐怖に叫ぶ。



足に口が沢山あるだけでだいぶ気持ち悪いけど、スクリューネイルを踏んで全部の口が叫ぶのは確かにちょっとホラー映像かも知れない。



でも止まった。そうでしょう。数本なら頑張れるかも知れないけれど、私の硬い風に下から押し返されて、沢山のスクリューネイルを全部踏み抜いて、足の形を保ったまま地上に到達するのはさすがに無理でしょう?



長い長いネジ釘の剣山に刺さった足はどうやら引き抜いて戻ることも出来なくなったらしく、絶叫しながらもがき続けている。さすがタリアの設計図ね。出した時点で勝ちが確定するあたり容赦が無いわ。なんかもっとこう細かく格好良い感じだった気もするけど大体こんな感じの筈。




よし。いける。



「見ていて皆」

「待て!もう無理!もう見たくないが!」「我も!我も全然無理だ姉御!!」




異常を察知して飛び交う観察用の鳥型魔法生物の群れと、勇者様、ライラ、きっと下で見ているウラニアさん。




──皆に、今こそ見せよう。タリアとウラニアさんなら間違いなく勇者召喚を超えられると。




「ゴーレム。作成開始」




巨大な足の化け物を止めておけるだけのスクリューネイルを残し、過剰っぽい数本を素材に再変換して回収。



馬車群に満載されている残りの素材と合わせて、部品を作成。



呼び寄せた私の分身達を核に合体パーツを構成。




……そして唐突に思い出す。最初に私が人形を作った時、褒めてくれたタリアの言葉。



「確か……『それちょっとずつ膨らませて削って作ってくやつだから』って言ってた。そうよ。最初からそう聞いていたわ。膨らむのよ」


「その一言一句覚えてるの結構怖いぞアネモネ」




思い出す。私だってかつては聖女としてお淑やかで賢そうに暮らしてきた。




「膨らむ。この素材は魔力で膨らむ。エネルギーは質量の2倍くらいなのよ!」

「姉御!!2倍どころではないかも!!」


「うわっ、Eイコールmc2の例のやつ!!科学漫画とかで語られるのは大好きなんだけど正直ちゃんとは理解してないし魔法のある異世界でそれホントに成立すんのかなって!!」




式の誤差を訂正されるし、勇者様は何かぶつぶつ早口で言い始める。


細かい話は全然おぼえてないけど、確かそうなのよ。エネルギーはだいたい質量って聞いた気がするもの。『膨らむ』っていうのは、つまり注ぎ込んだ魔力が質量に変換されやすい素材だと言うことでしょ。



内側が空洞になるタイプの膨らむだったら話は別だけど、この素材はそうじゃない。注ぎ込んだ少量のエネルギーに対して質量が大きく増大する。まさに魔法のふしぎ素材。


どうしよう私もしかしたら天才かも知れない。タリアの力が流れ込んだりしたのかしら。




つい感覚で適当に操っていたけど、この素材の真価は恐らく「魔力と質量の変換効率」。だから、「体の内側の魔力」だけじゃなくて「外側の魔力」も使える私と相性が良いんだわ。



どう考えても私がずっとこの素材を使って慣れ親しんできたのは賢すぎる。鍛錬だったのね。タリアの力に足りないのはいつも説明だけ。




膨らむ。整える。削る必要は無い。私なら最初から魔法の型枠通りに出来る。中身も外も材質も。簡単よ、魔力にそのままお願いするだけ。




タリアの設計が示した、結合部を補強するように鎧で纏う大きな大きなゴーレム。あくまで基本は私の体そっくりに。私が操りやすいように。


異世界の勇者の鎧を纏う、人型の巨大な兵器。




ガシャアアアアン!という外装の装着音を派手に響かせて完成する。


──これぞ、勇者ロボ!




「だから違うって!ジャンルが全然違う!!これじゃロボ美少女化系の巨大なエロフィギュアじゃん!?」


「エロじゃないです。確かにちょっと設計図とはちがうけど、雰囲気があってれば大体なんとかなるはず」


「あっ、いや、う……ぐ……。そ、そうだ、完全に再現されてもダメだった。いやダメじゃないとは思うがダメな気がする。確かに大体でいいかも。いいんだけど……だって裸のエロフィギュアじゃん……!」


「エロじゃないです。全然裸じゃないわ。鎧を装着してるもの」


「いや、その、パージ出来るっていう事実がぁ……それ系のアレでぇ……」




確かに半端に鎧を着せたから逆に露出してる感じはあるわね。裸ならただの人形ゴーレムだったのに。別にそのまま私というわけじゃないのだけど、妙に恥ずかしいかも知れない。最初から肌着でも着せておけば良かった。




『ギィアアアア!!?』



自らの運命に気付いたのか、巨大な足の化け物がもがきながら悲鳴を上げる。


でも逃げられない。無理よ。なんで人間の足なんて模したのかしら。筋も骨の位置も分かるから固定が簡単過ぎる。



……さあ、完成よ。死になさい。




『これは、異世界の、勇者の王』




攻撃に備えて、離れながらゴーレムに命令を通す。


幸いスクリューネイルを踏み抜いて砕けた魔法生物から膨大な魔力が漏れているので、今ならもうやりたい放題でなんでも出来るわ。




『これは、異世界の、勇者の武器』




そして、巨大なハンマーが生成される。これこそ王と呼ばれるほどの力を持つ、異世界勇者の必殺武器!




「うわー!!トンカチすぎる!!本当にただの工具だ!!全然違う!!」

「異世界の勇者の武器グロいな!我この後の光景あんまり見たくないかも!!」

「違うんだよ!違う!!もっとこう、光になる武器なんだよアレは!!」




これだけは間違いない。タリアが見せた図面の中でもこれほどわかりやすいものは他に無かった。超巨大ゴーレムに、でっかいハンマーをもたせる。



恐らくは、こいつを砕いて、私の魔法を発動させる為に。


タリアは知っている。私のもう一つのファイアボールが敵の魔力を使っていること。ある程度すりつぶして大気に拡散させてからじゃないとあの規模であの密度の大魔法は発動できないことを。



ネジ釘で穴を開けて固定しつつ魔力を漏洩させて、そのエネルギーを使って今度は粉々に砕いて膨大な魔力を絞り出す。たぶんそういう意図の設計。天才としか表現しようがないわ。




「なるほど。光にする。わかりました」

「まっずい!ちょっと待てアネモネ!多分違う!!どう違うかまだ分からないけど違う事だけは絶対に分かる!!」




さあ。殺るぞ!!




「ゴーレム、起動!!」




一度合体させて完成したゴーレムに、更に魔力を注ぎ込んで巨大化させる。完成品を均等に膨らませるのはさすがに難しいので思ったほど大きく出来ないけど、そこらへんの山よりは遥かに大きく、前回のヤマトさんと同等のサイズはある。


元々アレを目標にしていたけれど、まさか今回いきなり一発でこの大きさにまで辿り着けるとは思っていなかったわ。



ちょうどよくライラのスラスター付きジェットパック翼という見本が来たので、それを真似てゴーレムの背中装甲にはスラスターが付いている。なんとこの巨大さで空を飛ぶのよ。



図面を見ても何かよくわかってなかったのよね背中のやつ。飾り羽か何かかと思ってた。別に背中に限らず色々よくわかんない部品だらけだけど。



そもそもサキュバスの翼ってあんなんじゃなかったと思うのだけど、高身長の筋肉ムキムキ巨大格闘家が羽ばたいて飛べるとも思えないし、なんかこう、羽の筋トレとかで噴射式の飛行システムに肉体改造したのかしらね。



ただちょっと設計図で説明されてもエンジンとかよくわかんなかったので多分あまり長く飛べない。むしろなんで飛んでるのかしらこれ。落ちないうちに殺ろう。




『ギィイ!?』




若干のラグ……ううん、結構操作が重くてがっつりラグが発生しているけど、動き自体は想定通りに動き、左手の巨大なアームがネジ釘に刺さったままの足の化け物を掴む。


タリアの設計だからなのか魔力が不自然なほど通しやすく、これなら距離はかなり離れても大丈夫だと思うけれど、あんまり機敏には動かせない。なるほど、だから細かい作業が必要な近代兵装ではなく鈍器。


異世界の勇者の王を名乗るだけはあって、よく考えられている。




「私、気付いた瞬間に感動したんです。異世界の人間が思い描く勇者の美しさに」

「今俺が見てる光景はあんまり美しく無いよ」


「そう。大工。確かに大工もまた勇者にふさわしい」

「あ、え、そうかな。俺は割と初めて聞いたかも」




人類は、大工の作り上げたものにどれだけ守られてきたのだろう。改めて指摘されたらとても数え切れない。




「きっとどんな世界でも、私達に似た人類は家に住むのでしょう。家が、建物が人を守るのならば、それを作るため危険な作業にも勇敢に立ち向かう大工は人類の守護者であり、まさに勇者だわ」


「あー、うーーん、どうしよう良い話っぽくて否定しづらくなったぞ」「だとするとその大事な大工道具を抹殺兵器にしていいのかな姉御?」




「きっと魔法の無い世界の大工は、いずれ科学的な巨大ロボットに乗って星を渡り、山を砕き、都市を作るものなのよ。まさしく勇者の王。民が住む国を作る勇者。巨大な化け物退治なんてついでよ!……かっこいいわ!!」


「本当にどうしよう、俺の世界に対してとんでもない誤解があるんだ。とんでもなさすぎてどこから否定すればいいのか分からないくらいに」




巨大なハンマーを更に巨大化させながら振りかぶる。左手のアームに掴んだ敵を一撃で粉々に出来るように。


幸い、足を模した時点で弱点は丸見えだから、多分簡単な筈。




「素足で踏み込んだことを後悔しながら死になさい」

『ギィ!!?』「あっ」「うわっ」




「足のスネは……痛いわよっ!!」




──唸る風。私の全力魔力操作。私の勇者ロボの、全力の一撃!




「必殺っ!!巨大鈍器殴打!!!」




ゴギャァァアアン!という若干金属的な爆音。





『ギョオアァアアアアアアアア!!!!』

「うわああああああ!!」「ひぃいいいいいいいい!!!」




足の化け物の断末魔と二人の悲鳴。インパクトの瞬間、ネジ釘を巨大化させて内圧もかけ、掴んでいる自分の左手の装甲を一緒に破壊する勢いで足のスネをぶん殴ったので、それはもう痛そうな感じで悲鳴を上げながら化け物が砕ける。



必ず殺すから必殺。このゴーレム凄いわタリア!まるで短剣を刺した対象みたいにすごく気持ちよく命令が通るの。でかすぎてラグも重いけど。


……あ、もしかしてあれかしら。最近流行りの逆がどうこうってやつ。この短剣の逆の力を受信機みたいに埋め込んでるのかしら。どこの図面か分からないし上手く再現できてるかもわかんないけど、なんか凄いって事は、その、こう、何かがどうにかなってるはずよきっと。




必殺技をまともに足のスネに食らった化け物は、一瞬遅れてから高圧と高熱で周囲の大気ごと大爆発を起こし、巨大な大工勇者ロボのハンマーや腕にも被害が出てお互いの魔力素材が粉砕される。



バラバラになって吹き飛んでいく足型の超巨大魔法生物。その破片を風が受け止め始める。……魔力のかけらを大量に含んだ風が、大きな力を帯びていく。




準備は整った。


敵にとってはこの足が決死の反撃だったのかも知れない。でも私の前に魔法生物の大きな塊を無防備に放り投げるなんて。あれは終わり際だったから学習出来なかったのかしら。




「な、なんだ!?破片が渦巻いて……何やってるんだアネモネ!?もう完全に倒しただろそいつ!?死体撃ちは炎上するぞ!!もう粉々じゃん!!」


「勇者様、私のファイアボールはここからなんです」

「何言ってんの!?どこの何がファイアボール!?」

「あ、姉御!穴がじわじわ閉じ始めてるぞ!」

「なるほど。本当に完璧なのねタリアのタイミング調整は」




視覚化出来るくらいに竜巻が成長し始め、やがて天地を貫き穴の奥へと侵入していく。



海からの狙撃や低空の敵に絡まれたくなくて一気に高く高く跳び、鳥どもが羽ばたけない真空層を置いて制空権を取っていたのだけれど、ついでにもう細かいのも掃除しておきましょう。教会上空あたりの低空だと、寄ってくる見えない鳥だの虫だの面倒過ぎたもの。




「さあ勇者様、ライラ、ジャイアント大工勇者ロボからもっと離れて」

「ジャイアント大工勇者ロボ!!?」

「言われずとも暴風で弾き飛ばされそうだぞ姉御!」




さすがに私自身も巻き込まれると絶対に痛いし、何より今は大事な大事なタリアを抱えているので安全第一。


勇者ロボを中心に発生している大竜巻から大きく距離を取るために二人を吹き飛ばしながら私も飛ぶ。


「ぶわぁあああああ!!」「姉御ぉおおお!!?」




穴が閉じるというのならもう時間は無い。別に閉じたら安全になるだけだけど、これだけ巨大なゴーレムを出現させたからには最後の最後まで活かしきって使い切らないと。



準備は出来た。



前と同じく、大竜巻の中に巨大な回転ノコギリとか色々混ぜる。案の定まだ結構居たっぽい低空の敵も、足の化け物だったものの破片も、ぜんぶぜんぶ細かく砕いて魔力を吸い出して、竜巻を成長させていく。


その竜巻の中心に居る巨大ゴーレムも全然無事では済まないけど、さすがにタリアの設計だけあって装備が頑丈。これならいける。




「えっと、何式だったかしら。まぁいいわ!みんな光りなさい!!流星になって!!!」




ジャイアント大工勇者ロボが、大竜巻を纏いながら発進する。閉じ始めた穴の向こう側へ。




「な、なにするんだアネモネ!いや何してるんだ!?」



ちょっと吹き飛ばしすぎた勇者様がライラを抱えてぜーぜー言いながら近寄ってくる。




「ちょっと待っててください勇者様。今からラストアタックで敵に出来るだけの損害を与えるとこなので」




巨大ロボと大竜巻が穴の向こうへと侵入する。




「お、おい、大丈夫かなこれ。向こう側が阿鼻叫喚になってないか」

「大丈夫です。ちゃんと言われたとおり、ぜんぶ光にします」

「言ってない!いやごめん言ったけどちょっとニュアンスが違っ……、おい、まさか……」




穴がどんどん閉じていく。


一応念の為、素材の一部を使ってこちらからも穴を覆う。




「まさか、あのサイズのロボを自爆させる気かアネモネ!!?」


「さすが勇者様。タリアとウラニアさんが褒めてくれたんです、投石って実は凄いファイアボールなんだって」


「投石は投石だよ!?ファイアボールじゃないんだってば!」


「エネルギーで直接攻撃するより、エネルギーの塊である物質を使ったほうが、こう、なんか、凄いんですって」


「覚え方が曖昧すぎるだろ!言ってることは分かるが……あ、嘘だろ、そういう話?エネルギーで巨大化する物質を、今度は逆にエネルギーの塊扱いして爆発させるってこと?増殖バグじゃん」




もう塞いじゃったのでこちらからの肉眼では見えないけれど、ロボと視界共有している私からは穴の向こうの破壊が見えている。


なんかちょっとよく分からない見えないものとかも破壊しまくっているけど、どうせ全部吹き飛ばすので何があっても一緒よね。




「まだ謎が多いし、今の段階だと多分またいつか次の襲撃もあると思うんです」

「ま、まぁな。それは俺も危惧してる」「我は今のところ姉御にしか襲撃されてない」



「でも鬱陶しいのでしばらくは来たくならないようにしておきたいですよね」

「鬱陶しいはちょっと正直すぎるかも」



「だからファイアボールします」

「「ファイアボールします!?」」




あの日のタリアの声が聞こえる。『アネモネ、ファイアボールっていうのは、流れ星なんだよ』って言ってた。



ヤマトさんも言っていた。敵を光にするんだって。



もう間違いない。敵を切るとか砕くとか、私の戦いの認識が甘かったのよ。すごい人たちは皆そんな程度で終わらせない。


有用な時は殺さずに使い、殺す時は塵も残さない。やっぱりメリハリってなんでも大事。




「私投石の種類もいっぱい色々考えたの。でもどれが何式のファイアボールか分からなくなっちゃったので、これも適当に今決める」


「アネモネ、それは多分何一つファイアボールじゃないんだ」




穴の向こうで暴れまわっていた大竜巻とジャイアント大工勇者ロボが一瞬一点に圧縮され小さくなり、その圧力の熱と膨大な魔力の集中で激しく金色に輝き始める。



「今日のは、そう、ジャイアントゴーレム自爆式の!!」



まだ穴が塞がれきって無いし私の蓋も雑なのでちょっと光が漏れているけど、たぶん許容範囲よね。



「ファイアァ!ボーーーール!!!!」



右手を天に掲げて、空を握りつぶす。


それに連動して穴の向こうでは一度空間が握りつぶされ……ゴガァアアアンという重く激しい爆音と共に大爆発を起こす。




「うわああああああ!!」「ぎゃあああああ!!」




突然の強烈な光と爆音にヤマトさんとライラが耳をふさぎながら悲鳴を上げている。しまった、先に言っておけば良かったかも。



まだちょっと早かった。もう少し穴が塞がるまで待たないと駄目だったのね。一応塞いでいたけど蓋も粉々に吹き飛んだので、慌てて風で受け止めて小さな竜巻に変換していく。



ふつうにものすごい衝撃がこちら側にも来てしまったので、止めなかったら危うく私が地上も破壊するところだった。この一帯の大気が濃い魔力に溢れてて本当に良かった。通常の状態だったらとんでもない後悔をする所だったわ。



飛び出ちゃったのとか、蓋の破片とか、もう全部また穴の向こうにねじ込んでもう一回蓋しましょう。良い感じに閉じかけの穴があって良かったような、さっさと閉じていて欲しかったような。




「完全に穴が閉じてからだと力が伝わるのか疑問で慌てちゃいました。ちょっと早すぎたみたいですごめんなさい勇者様」


「あの!その…!そういうレベルの問題じゃ無さすぎてさぁ…っ!!」

「姉御、絶対地上で今のファイアボールしないで欲しい」

「あ、タリアにもきつく言われてるわ。地上でしちゃ駄目って」



苦い顔で頭を抱えている勇者様。見慣れた解釈違い拒否のポーズだ。



「今後は地上じゃなかったら良いって意味じゃなくなるかもな!使い捨てかよ巨大ロボ!!なんてことするんだアネモネぇ!!」


「あまりにも強い巨大兵器が戦いの後にも残ってたら危ないですし、私があそこまで硬く作り上げた超高魔力ゴーレムを爆発しないよう安全に分解して再利用するのってたぶん結構難しいですから」


「うぐっ……!このっ……ここで最強兵器のその後の話パターンかよ……!?どうしてどいつもこいつも変な所で賢さが偏ってるんだ……!?」




それをヤマトさんが言うんだって突っ込んだら怒られるかしら。


空を見ると、とうとう穴が最後まで塞がっていく。長い長いひび割れも、一度開いてから閉じればよかったのか、完全に空の傷が消えていく。




今回の最後の大穴は敵じゃなくてタリアが空けた穴だから、冷静に考えたらアレがこちらに利する穴なのは最初から間違いなかったのだけど、本人も分かってないみたいだったから結果的に問題無くて本当に良かった。



タリアの心ではなく賢者の力的には『向こうを破壊し尽くし、逃げる敵も殲滅して欲しい』って意図でいいのよね。たぶんそう。


空割りドラゴン達は私の攻撃じゃなくタリアに穴を空けられた時点で逃げていたのだから、なんとなく逃がすべきじゃない雰囲気はあったもの。




当のタリアは完全に爆睡している。私の腕の中で。赤子のように、小さくて軽いけど寝るとちょっと重さも感じる不思議なアレ。あまりにも愛おしい。あまりにも愛おしいわタリア。よく起きなかったわねあの轟音で。




「あれで起きないのだからそんなに気にしなくても大丈夫かも知れないですけど、とりあえず静かにゆっくり地上に降りましょうか」



複雑な表情で頷く勇者様と、クライマックスで突然巻き込まれてからずっと頭を抱えて突っ込むばかりだったサキュバス格闘家。


結局勇者様に色々頼ってしまったし、色々な人に迷惑もかけてしまったっぽいけれど、大事な結果はちゃんと出せたはず。海の敵には負けたので早いうちに再戦しないといけないけれど、少なくとも空と海同時に対応しなければならない事態は終わった。



というかあの海の敵って空からの何かで復活した感じよねきっと。閉じたらまた骨に戻ってたりしないかしら。




ひとまずは。空の穴との戦いに関しては。今回も私達の勝ちよ、タリア!


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