表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/60

理解の及ばない真の天才は自分でも何してるか理解出来ない


遥か高い空にある世界の割れ目。



そこに群がる大量の鳥型魔法生物。観測用改め上空からの狙撃防御用の人質。



私は今、その非人道的な作戦がくっきり肉眼で見えるくらい、空の割れ目の近くに居る。




「たたたた高い!!寒い!!!」

「ビキニアーマーと白衣だものね」

「いいいいいや!!温度調整魔法は付いてるんだけども!!」

「不思議よね、もっと高いところは一旦ちょっと暖かくなるのよ」

「しししし紫外線を吸収してる層だね!!」



どうやらアネモネも防寒とか不意打ち対策用に色々魔石も使って展開しているみたいなのだが、空気中の魔力とかを使うアネモネの魔法は見てもあまりよく分からない。


自分も調温装備や高級障壁などを駆使してようやく一息ついたものの、どう考えても事前に準備しておくべきだった。



高い場所に長居をするつもりなんて一切無く、ぱぱっと魔法無効化魔法を撃って帰るつもりだったからとは言え、手足が震えてまともに構えられない事に現地で気づくのは我ながらアホ過ぎる。




「どうかしら?結構暖かくしてみたわ」

「あれ?えっすごい、もう全然余裕かも」

「最近結構これ得意なの」




アネモネが「これ」と言いながら少し離れた場所を爆発させる。


何にどう慣れて何が爆発したのか一切分からないが、ちょっと前にファイアピストンを見たばかりなので、恐らく空気を良い感じに操作したら熱を自在に操れると分かったって話だろう。


分からないって怖くて楽しくて素敵だね。




「一応防壁は張ってるし、タリアも随分凄い障壁張ってるみたいだけど、魔法殺しってきっと全部消えちゃうわよね?」


「消える。お願いだからすぐ落ちないように良い感じにしてて欲しい」

「うん。でも撃ったらすぐ地上に戻る想定でいいわよね?」

「……すぐ戻りたいけど、あんまり早く落ちたくない」

「わかった」



絶対わかってない。絶対怖いことになる。



でも、アネモネが何か気圧を調整しながらも一気にこの高度まで飛び上がったのは狙撃を警戒してのことだ。アネモネやヤマトが自分で飛ぶ分には何が起きても余裕なんだろうけど、私が的になると急に面倒な事になってしまう。




覚悟しよう。きっと撃ったら空から落ちるんだ。



多分空気抵抗を先に切り裂いて信じられないくらい急激に落ちるんだ。


嫌だ。怖すぎる。既に下を怖くて見れない。雲が下にある時点で高いところが苦手とか言ってられるレベルの怖さではない。




「よ、よし、長引かせるほど怖いんだ。撃つぞ。どうしよう、人質の鳥達はどかして貰ったほうがいいのかな」


「絶対そのまま撃って。ここで変に射線が通ったら本当に危ないわ。あれは大半が教会の息が掛かってる道具だから私が聖女として南の国の王女に破壊を許可します」




おお、珍しく聖女モード。そういえば最初の契約的なあれこれの時に見たな。意外とそういう役をやろうと思えばきっちり出来るタイプなんだろう。というか昔見たアネモネはこれを柔らかい笑顔でこなせる想像通りの聖女って感じの人だった。




「じゃあ撃つ!ぱっと撃ってさっと地上に帰ろう!!」

「赤子を高い高いするみたいなポーズでいいのかしら?」



脇腹を後ろから抱えられて高く持ち上げられる私。くすぐったくて変な声が出た。



「え、えっと、障壁とか鳥とか全部まとめて撃ち抜くからね」

「うん」




よし、やるぞ、これで空の割れ目を打ち消せれば今後は対処がかなり楽になる。私の活躍で。さすが私。


ウラニアが弄った魔法拡張道具を構える。さすがウラニア。



これは私達非戦闘員が実は戦闘を左右するくらい役立てるんだという証の一撃。




「魔法無効化ビーム発射カウントダウンー!ごー、よん、さん……」

「あ、ちょっと待って、録音するわね」

「なぜ!?まあいいや、いくよ、カウントダウンー!ごー、よん、さん、にぃ、いち……」



的は大きい。そして狙いをミスってもアネモネが素早く動いて合わせてくれるだろう。撃て私!



「ぜろぉ!!」




全身に巻き付いた髪の毛魔法陣に全力の魔力が通り、脳が一瞬で疲れ切るほど重い処理が発生する。



ごはんを食べすぎた後に突然寝落ちしそうになるあの凶悪な眠気の強化版みたいな重い重い眠気に襲われて、ちゃんと撃てているのか一瞬分からなくなってしまう。


さすがに、さすがにここだけは。ここで上手く撃てませんでしたでは終われない。



ちゃんと、ちゃんと、みないと。




「タリア!?」




ウラニアの道具調整は完璧で、想像以上に魔法殺しのビームが世界をまっすぐ貫いた。



私を守るため目の前にあった障壁や何らかの風の魔法を打ち消し、射線上の大気中の魔力を掻き消し、ビームはきっちり空の割れ目まで撃ち抜いている。



まぁさすがに的が半端なくデカいので外すわけが無いんだが、私ってばあんまり運動得意じゃないので実戦は妙に不安だったわけよ。



「タリア!大丈夫!?気絶!?」

「おきてう。れんれんらりうう」

「寝てるわ!!全然大丈夫って言ったのかしら!?全然ダメよ!!」




撃った直後から力が抜けてぐでーっとなってしまった私をアネモネは慌てて必死に抱え直す。そういえば疲れるとは言ってたけどこうなると事前に説明していなかったような。



「タリア!お願い起きて!!何をしたの!?何をしているの!?」




大慌てのアネモネ。いやもう全然大丈夫な筈なんだけど。


魔法殺しは空の割れ目を間違いなく貫き、上空には大穴が空いている。




──前回の襲撃で空いた穴より、更に広大な大穴が空いている。




……あれ?なんで!?




穴って閉じるんじゃなかったっけ!?




「タリア、一度降りたい!!聞いていた話と全然違うわ!?それは邪魔しちゃダメなの!?」




それってどれだろう。ああ、ダメだ、ねむすぎる。賢者の思考速度に、心が追いつかない……わたし、いま、何をやって……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ