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しばらくただ観戦してただけの主人公



数分遅れの録画配信はいよいよクライマックスに入り、イケメン王子と勇者ゴブリンゾンビの対決は王子がプライドを捨てるほど優勢になっていく。



特に決め手となったのは知的天才美少女が開発に関わった捕縛道具だ。つまり私の手柄である。



『何ダ!?…クワガタ…!?』



馬車に足を生やす加護みたいなやつの捕縛機版だ。クワガタっていうか対象を挟む捕縛装備に虫みたいな足と羽が生える加護を付けたわけよ。それが死角からも複数襲いかかる。捕獲器が自分で追尾して突っ込めばいっちばん安全なんだから。天才の発想。私です。



ノームさんは一番目立つやつに即反応して回避し、死角からの追撃もいくつか殴って落としたけど、視認も攻撃もしづらい小さなサイズのクワガタっぽいやつに足を挟まれる。


恐らくはすぐ振りほどくつもりで仕方なく受けたんだろうが、あれは私が関わった防衛道具だ。当然ただ物理的に挟むだけじゃない。



魔力を筋肉に送り込んで強制的に動きを制限するスタン捕縛機なんだ。



『麻痺、か!?いや、電気!?解毒出来ナイ!』

『その高級道具は筋肉への信号を制御するんだ。毒耐性も力の強さも関係ないらしい。僕らの時代でも最先端のあまり出回っていない装備だよ』

『こ、コレが、未来の武器か!!甘く見タ!!』




殺傷兵器と比べてこの手の非殺傷道具は甘く見られがちだったが、自分で追尾して当たれば無力化出来る遠距離装備は誰がどんな相手に使っても活躍しやすい。



むしろ簡単にダメージが通りそうにない凶悪な格上相手にこそ、直接ダメージ目的ではないこういう搦め手の道具が輝くのだ。



ただ録画配信見て実況してる教会地下組という負い目はあるが、奴が道具に頼るほど私の心の中の活躍度が勝手に稼げて、なんか私ら一見サボってるだけでは?みたいな内心の焦りが解消されていく。素晴らしい構図に高笑いも飛び出てしまうね。



「ふはははは使ったね!私の天才さが形になったものを割と強い第一王子がさ!!私の勝ち!!!王座は私のものだ!!」

「なんで悪役側みたいなんすか」




あの道具は一人で使っても効果的だが、複数人で色々なサイズを同時に使うと本当に避けづらい。一人でも効果的だが複数人で強い相手に挑む時こそ真価を発揮するんだ。



つまり王子は完璧なタイミングで伏兵と最適道具を使った。死角からもクワガタが複数襲いかかったのは隠れてた伏兵が突然参戦したからだ。



前にヤマトが焼け焦げてたときにも見たけど、余計な手出しをしないんだよね王子の兵。それが王子の密かな合図を受けて割り込んだのだ。ここぞという時に使うから伏兵には価値がある。


実力主義なのか効率主義なのか、もしくは逆に王子との強い信頼関係だからこそなのか。面白いチームだ本当に。




『ッハハハハ!!セコいぞヒョロナガ坊っちゃん!!』



大絶賛する私と映像の中の勇者ゴブリンゾンビ。そして苦い顔で追撃しようとする王子にヤマトが何か投げて渡し、一瞬の衝突と攻防の後、足を挟まれ動きの鈍ったノームさんの腕にそれが巻き付く。


どうやら、とっさにガードしようとした腕にヤマトのベルトが装着されたようだ。




『グォオオオオ!!?!?』



今までずっと余裕そうだった激強ゴブリンがとうとう呻き声をあげて地面に倒れる。あれ効くんだ。よく気づいたなヤマト。



そして、体の動きを制限されたノームさんは恐らく反撃で土を操る魔法を発動させようとしたっぽいのだが、その動きは突如現れた魔石の槍みたいなものに体のあちこちを貫かれて阻害される。えぐい。



『グァアッ!?だ、誰ダ!?全く見えなかっ…動ケナイ!!痛ェえッ!!』

『こ、これは、影縫い!?』

『アネモネ!!違う!!これ骨まで縫っちゃってる!!影縫いじゃないんだよこれは!!』



全く見えなかったが、通信バトルの時に見たアネモネの地面拘束技も発動していたらしい。敵を影というか地面と縫い合わせる、ヤマトの世界由来の残虐な技だ。敵を生きたまま大地に縫いつけちゃおって発想がヤバい。異世界怖い。


ちなみにその技を映像内で使ったらしいアネモネは隣りに居る。やっぱりなんかおかしくない?




「骨じゃダメだったのかしら。……心臓?」

「拘束する意味が無くなると思うよそれ。ただの一撃必殺だよ」




本当はもう少し詳しくアネモネに追求したいが、映像に集中しなくてはならない。



邪悪な影縫いに意識をつい持っていかれたが、ヤマト用のベルトが効いている。つまり、死体兵器の動力は基本的にヤマトと同一構造なんだ。




……これはかなり大事な情報だぞ。ウラニアの方をちらっと見ると、同じく理解しているのかボーラ型やさっきのクワガタ型の即興ポンチ絵メモを私に見せる。


クワガタ型は優秀な分そこそこ作るの大変だし金もかかるが、ボーラは紐に重りが複数ついてるだけだから、ヤマトのベルトを試作として量産向きに弄るだけ。どっちもアリという念を込めてウラニアに頷く。



前回は本当に不意打ちで殆ど何の情報も得られなかったが、今回はアネモネ達のおかげでかなり情報が取れている。


次の戦い自体を回避するよう動くべきではあるが、歴史の調査をする度に死竜兵器を掘り当てる可能性は襲撃と関係なく残されているわけで、対抗策が出来るに越したことは無い。




『す、凄い、コノ道具…小型封印!一体あれから何百年経ったんダ!?』

『前の勇者が活躍したのは何千年も前の話らしいよ』

『何千…!?』



大小のクワガタ捕獲機に挟まれ、全身を影縫いされて身動きできない勇者ゴブリンゾンビは、とうとう抵抗をやめて封印ベルトを褒めた。確かに太古の人から見たらウラニアの小型道具は凄かろう。



「古代の勇者に褒められてるぞあのベルト」

「いやぁ、オフフフ。本来の使い方でグリッチ使われちゃったんで、ダメなんですけどぉ、オフフ」



違う時代のやつに近代技術でマウント取るの気持ち良いよねこれ。私も捕縛機効いて気分良かったし、ヤマトが妙に私達の世界を古く見たがる気持ちも今なら分かるわ。違う時代とか文明レベル違う世界に行って技術無双してみたい。




『……凄いっちゃ凄いけど何千年って感じはしないなヒョロナガの発明。さすまたにベルトだろ?逆に次はボーラにまで戻りそうダ』


「なっ!?」「うぐ!?」



上げてから落とされて予想外のダメージを受ける私とウラニア。古代ゴブリンに発想が見透かされた。


だ、だって、太古から有名な仕組みは優秀だから有名なんだ。真似しない理由が無いじゃないか。自分だってあえて原初の棍棒を便利に使ってたくせにこいつずるいぞ。映像じゃなくリアルタイムでその場に居たらめっちゃ言い返してた。




『ソウカ……何千年……』



完全に大人しくなったノームさんが空の割れ目の方を見てブツブツ呟いている。




『やっぱり異世界の勇者は本物ダ。格が、桁が違ウ。アイツに負けるのはこれで何度目か』

『……前の勇者の話か?何に負けたんだ?』



ヤマトがゴブリンの勇者にヨロヨロと近づいて話を聞いている。



『……まずは空と海をどうにかシロ。そのあとオレを正しく復活させろ』

『そうしたら色々教えてくれるって事でいいんだな?』

『そうだ。どうやらオレにも保険が要る。情報提供を復活の保険にスル』

『賢すぎるゴブリンに解釈違いはあるが、大精霊ノームだからな。なんとか賢者と天才発明家に頼み込んでみるよ』

『任せたぞ新勇者、坊っちゃんも権力と財力デ協力しろよ』

『協力するから、成功したら坊っちゃんと呼ばないでくれ』




会話しながら骨になっていく勇者ゴブリンゾンビ。どうやら魔力源を封印すると体の構成が失われていくようだ。


多分ヤマトと同じく体のどこかに魔力源入りの封印魔法が埋め込まれてて、封印を封印する魔法が効くし、恐らくそれが擬似生命活動のエネルギー源でもあると。


恐竜の化石もだけど、やっぱり魔石に置き換わる過程で何かが保存されるのだろうか。それをアネモネが好んで使う粘土みたいな魔法素材で再現してる?


構成が消滅するから鑑定しづらいが、多分そんな感じだろう。



『ソウか…賢者と天才発明家まで揃ッタ時代……』

『結構凄いからな、多分大丈夫だぜ』

『ソウかぁ……賢者……』



なんとなくこう悪くないやつを見送るみたいな空気になったので映像の中のヤマトとマリウス王子も視聴中の私達も静かに見守る。


恐竜の時とは違い、夢が終わるように静かに魔力が抜けて骨以外の組織が消えていく。なんだかちょっと物悲しい光景だ。




『…………賢者ァ!!?』

「おわぁ!?」



もう完全に化石だけになったと思った瞬間、骨の頭が飛び跳ねて叫び、地面に縫い付けられた腕の骨が割れながら飛び上がって棍棒を再構成した。


突然怒った声で呼ばれたから思わず可愛らしい乙女な悲鳴をあげてしまった。見た目もホラーだったし。



幸いというかなんというか、骨になりきる寸前の出来事だったのでそのまま頭も腕も止まって動かなくなり、静けさが戻って来る。


後に残ったのは、骨だけ。



……そして、教会地下の皆が無言で私を見てる。



「おいやめろ。私はなんもしてないって。あれでしょ?多分なんか大昔の賢者がなにかしたんだよ」


「そうだとは思いますけど、明らかにブチギレた声だったっすよ。何かした程度じゃなさそうな声というか」


「やめろって!あいつ私とお前で復活させなきゃダメな感じだったろ!?怖くなっちゃうだろ触るのが!!」



ウラニアが不吉な予感を言葉にする。本当にやめろ。


なんで最後の最後に不穏な感じを。普通に復活させる気だったのに、凄く嫌な気配してきちゃったじゃん。




……というかさ、


太古に聖女は居なかったらしい。

勇者とは親しげで、勇者化魔法には怒ってる。

賢者にはなんかメチャクチャ怒ってる。



って条件を羅列すると、これ「死体とか異世界人を兵器に転生させる魔法の開発者」が死ぬほど不安になってくるんだけど。



いや。まだ分からないよ。なんも確証無いし。でも邪悪な勇者化魔法も、魔法生物の敵対説も、割と元凶の一つに邪悪な魔法の開発者が必要なわけじゃん。


大丈夫そうかなこれ。今まで判明してる話だと太古の登場人物が足りないから、賢者以外犯人候補が居ないよ今。連帯責任とかになったら嫌過ぎる。



『去レ!』『触るナ!!』『帰れ!巣に帰レ!!』




そして更に厄介な事に、映像では勇気あるゴブリン達が自分達の英雄の骨を庇うように飛び込んできて、ヤマト達を威嚇している。



『お、おい、俺達そいつに後で復活させるよう頼まれたんだが』

『じゃあ今ヤレ!』

『今は無理だ』

『じゃあ去レ!!出来るなら改めて祭壇に参れ!』『大事な英雄様を卑怯なカスどもに持っていかせるわけ無いダロ!!』




卑怯なカスども呼ばわりに誰も反論できなくて空気が凍っちゃったよね。一対一っぽい戦いだったのに伏兵付きの不意打ちでチート道具使って倒したからね。




『あの、申し訳有りません。準備が出来たら僕がお知らせしますので、その後祭壇にご案内頂くという形で宜しいでしょうか……』



ああっ、うちの第一王子がカスタマーセンターみたいになってる。言っちゃ悪いがそういう地味で大変な仕事をこなせそうなやつナンバーワン過ぎる。任せて下がる王子の兵はこの場面だとおかしいね?



『先に海と空なんとかシロ!お前ラの揉め事ダロ!!巻き込まれてんだよこっちは!!』

『はい、あの、あれやっぱり人類のせいって認識なんでしょうか?』

『意味分からん道具や兵器は大体お前らダロ!!違うってんなら違う証拠を見セロ!!』

『海と空ですね。なんとかしてから伺いますので……海?』

『バカ!まさかまだ調べてすらいないノカ!?』



よく見ると、ノームさんの骨を庇うように出てきたゴブリン達には足が震えているのもいる。


やはり私の予想通り何者かが周辺の魔物に過剰な恐怖を感じさせているんだ。




『範囲見ればすぐ分かるダロ!!バカ共が!!バカすぎて怖い!!足止めに協力してたから分かってると思ってたゾ!?誰も解決に動いてナイのか!?狙われてるのはお前らダロ!時間稼いで何もしないバカがどこに居る!?』


『はい、あの、仰るとおりで』


はい、その、すみません、のんびり見てる場合じゃなかったです。はい。普通にゴブリンに叱られる第一王子と第十七王女の姿がここにある。



『今すぐ探セ!!』『絶対海辺ノどこかニ居る!!ヒョロナガ族を皆殺しにしたいほど憎んで恐れてるヤツが!!』



道具に頼ってばかりだから、見たらすぐ分かるものまで分からないんだと理不尽なクレームをカスタマーセンター王子にぎゃあぎゃあ説教し続けるゴブリン達。


なんでお前らのせいで俺達が変な魔法食らわなきゃならないんだというクレームに関しましては、もしかしたら本当に仰るとおりの可能性があるので一旦持ち帰らせて頂こうと思います。



恐らく自分達の英雄のために勇気を振り絞って飛び出てきたクレーマーさんの意見、大変参考になりました。なるほど。




海辺で、人類を皆殺しにしたがってるやつが術者。なるほどね。




すごく心当たりがある。


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