本人的にはあまり格好良くない力だけども
「あ。タリアのせいになっちゃうのね人質作戦」
そこだけは予想外だったという顔をするアネモネ。他にもっと気にした方が良いところが沢山あるよ。例えば人道とか。
「いや、あのー、アネモネ達のおかげで空からの奇襲を防げてるのが事実ならむしろ感謝しか無いんだけどね?でもこう、ラインっていうか、国際法とか倫理がね…?」
「タリアは人質なんて否定するタリアのままでいいのよ。受け入れなくていい。私は私と違うタリアを指の先まで愛するわ」
「あれ!?そんな話してたかな!?」
モジモジと恥ずかしそうなアネモネ。さっきからその可愛い態度と武将の言動が全く一致しないんだけども。
「まさかタリアが私の指先まで愛してくれているなんて知らなかった」
「うーん!なんらかの飛躍があったかも!?あの、人質作戦についてちょっと」
「肩書でも顔でも力でも無い。私の全部がタリアに愛されているんだ」
「あ、あ、そのー!?言ってないけど、その、全否定したいってわけでもなく、なんていうか、そのー、どちらかといえば憧れみたいな炎が芽生えて」
ドン!っと重く鈍い音が目の前のアネモネから響き謎のオーラが吹き出す。まさか魔力の奔流の音?
「そうか…!そうよね……!」
「そうかな!?まだ聞いてないからわからないけど違う気がする!」
「これは恋の炎!!」
「それは濃い魔力だよアネモネ!!」
今にもどこかに飛び出しそうなアネモネ。
なんとか一旦引き止めて、せめて聖女と勇者を連れてきた責任者として非道行為の詳細を聞き出して事後対策考えないと。国際問題とか怖いから。
もう全然成果はありがたいだけなんだけど、あんまり聖女って清らかそうな称号の超有名人にやらせてよい作戦では無いからね。ちゃんと私が自分で責任をコントロール出来るくらい把握しておかないと大変なことになるからね。
『聖…女?知ラン!!』
「ん?」「え?」
そして唐突に流れっぱなしの映像から響いてきた音声に振り向かされる私とアネモネ。勇者ゴブリンの声。
どうやらいつのまにかヤマトが合流していたらしく、激しい戦闘をしながら情報を引き出そうとしているようだ。
『どういうことだ?さっきヤマトくんを見ただけで勇者だと認めたじゃないか?』
『その魔力!ぺしゃんこの顔!!アイツの仲間だ!!異世界転生勇者なんダロ!?』
『いや転生はしてないしぺしゃんこでも無い。生身で聖女に呼ばれて来たんだが?』
『だから知ラン!!転生してない……じゃあ生きたまま兵器にしたノカ!?』
『……』『……』
『カスが!!やっぱりこの世界のヒョロナガはカスだぞ勇者!!見捨てろ!!』
『いやー、そのー、』『僕にはごめんなさい以外の言葉が無い』
『ごめんデ済むか!?被害者に甘えるな!!』
『うぐっ!!』
どうしよう、うちの国の第一王子がゴブリンに正論で叱られてる。
というか人類がゴブリンに説教されてて何一つ返す言葉がないと言ったほうが正しいかも。一緒に見てる歴史調査員達もそれぞれなんともいえない顔をしている。
『今の話のドコに聖なる女ナンテ出てくる!?カスには邪悪な犯罪者こそ清く正しいのか!?イかれてるぞヒョロナガ!!!』
「ぐうっ!?」
「アネモネ!大丈夫、悪気は無かったよね!?助かってる人もいるからね!」
大変だ。アネモネがモンスターに大ダメージを食らってるの初めて見たけど、まさかそれがゴブリン正論パンチとは。
ただの流れ弾でさっきまでハイテンションで元気だったアネモネを一瞬で追い詰めるあたり只者ではない。
『ちょっと待ってくれ、古代の勇者は聖女が召喚したんじゃないのか?』
『だから知ラン!勇者になりたい臆病者はまだ分かる!!だが聖なる女になりたい犯罪者は悪事を聖なる行為と正当化したいカスだろ!!居たら殴ってた!!』
「ミ゛!!」
「アネモネ!大丈夫、ダークナイトだもんねアネモネは!大丈夫だよ!!」
聞いたことのないダメージボイスを上げてアネモネが倒れた。
映像の勇者ゴブリンは口も強いが戦闘力もやばくて、明らかに魔力を解放してるヤマトと明らかに媚薬を飲みすぎてるマリウス王子による息のあった超絶コンビネーション攻撃を容易くいなしながら会話を続けている。
アネモネは戦闘力以外の問題でこのゴブリンに絶対勝てなくなっただろうし、気軽に鑑賞してたけどもしかしてこいつ本当にヤバいのでは。
勇者に好意的で助かったけど、それゆえにこの世界の人類特効だぞ。私もアネモネを励ましつつ胸が痛い。ヤマトに頼ってるから同罪なわけで。
『…ゴブリンの勇者さん、まず名前を教えてくれ』
不意にヤマトがよくわからない難しい動きをして、ゴブリンの棍棒を、こう、なんていうか持ってられない関節の感じにして落とさせる。二人の手が一瞬知恵の輪みたいになってた。
『名前…?オレの?……名前!?ハハハハ!!』
ヤマトの技と言葉両方に目を見開くゴブリン。そして何かを認めたのか、嬉しそうに盾を放り投げ素手での格闘へと移行する。
ヤマトは目に見えるほど濃いオーラを帯びていて凄まじい格闘術でそれに応じているが、ゴブリンの方も小さな体にあるまじき強さだ。まさかどっちも今まであれで手を抜いていたのかな。毎秒インフレが酷くて怖すぎる。
というかゴブリンの方は急に目覚めさせられて出せてなかった力が蘇ってきてる感じがするかも知れない。
マリウス王子も参戦しようとしているが、どうやらかなり長時間薬によるバフで無理をしていたようで、膝から崩れて声も出せなくなっている。
多分王子の異変に気づいて主導権を取ったのかなヤマトが。
『ソウダッタ!!名前!ヒョロナガは皆ゴブリンと呼ぶのになぁ!!ハハハハ!!』
『もしかして、前の勇者も同じことを?』
『ハハハハハ!!そうだ!!土掘り次郎!!ただの土掘りの次郎なのになぁ!!』
『次郎、兄弟が居るのか?』
『もう皆居ない!!だから次郎でも無くなった!!あの時もそう言った……ハハハ……そうだったなぁ……!だから、もう一つ名前を、貰った。アイツに』
『その名が気に入ったのか?』
『気に入った!強く生まれ変わりたかったオレに、もう強いから名前だけ盛れば充分だって!!ハハハハハ!!バカなんだ、最高に賢くてバカなんだ、勇者は……』
ヤマトが名前を聞いたのはきっと私に聞かせるためだ。遅延録画配信に気づいているんだろう。
賢者の力なら名前一つで深く情報を得られる。あいつは本当に機転が利く。性癖以外本当に素晴らしい。
ただ土掘り次郎の情報はそんなに多く無い。本人が語った内容から察せられる通りっぽい。
本当に洞窟で兄弟たちと土を掘って暮らしてきた普通のゴブリンだ。長男に逃され、守りたかった下の弟達に守られて、一人だけ生き延びてしまった次男だ。
それからずっと守れる誰かを守ってきただけの優しいゴブリン。同種の仲間の為に命を賭け続けるのは当たり前、時には種族すら無関係に兄弟を守ってしまう。憎い人間種族でも。
途中から情報が無いのは呼び名が変わったからなのかな。あるいは、いくら記憶を保ったまま動いていても、兵器化後の彼はもう生前の次郎という生物では無いのか。
『そうだった。アイツが付けたオレの渾名は…いや、新しいオレの名前……!』
突然両手を地面に叩きつける勇者ゴブリンゾンビの土掘り次郎。何らかの攻撃魔法を撃つのかと思ったけど、周囲のゴブリン達が大きな土の手に次々捕まっては強制的に遠くまで避難させられていく。
『オレの名は、ノーム!!』
続いて地下の魔石が幾つも掘り出されて飛び出てくる。とんでもない魔法だ。ただの土掘り魔法もここまで来ると土の大魔法と呼んで良いかも知れない。便利過ぎる。
『……まさか、四大精霊の!?』
『ハハハハハ!そうだった!あいつ、そんなこと言っテタ!!やっぱり異世界ネタじゃないか!!ハハハ!!!この魔法だろ!?ただの土弄りダッテ言ってるのに!!』
『四大元素のうち土を司る大精霊ノーム!!絶対そうだ!!嘘だろ!?属性魔法が無いどころか、四大精霊が勇者の仲間に居たのかよ!!!そうか、そうだよ、ゴブリンは精霊枠じゃないか!!天才かよ前の勇者!!あれ?でも時代がおかしいな…?数千年…?』
『ハハハハ!!急にクソ早口で聞キ取リ辛い!!!ハハハハハ!!!思い出した!!!バカな奴らだヒョロナガ!!本当にバカ!!思い出したぞ!!!』
ヤマトとゴブリンが何に興奮しているのかはよく分からないが、映像を見ている私達は単純にその戦闘の凄まじさに息を呑んでいる。
土の中から多数の魔石を掘り出して幾つもの武器とゴーレムを作り出し、他のゴブリンを逃がした方には土の壁が生えて追撃を阻む。
同じくゴーレムを作れる私とウラニアは、このノームさんが使った魔法のレベルの高さに言葉を失っている。思わず呼び捨て出来なくなるくらいにえぐい。
普通に戦っても強いやつが現地でハイレベルのゴーレムとか武器を生成できちゃったら、私達裏方組の存在意義が良くない感じになるだろ。今すぐ手加減してくれノームさん。
元々はゴブリンもサキュバス同様この世界の住民ではないので、太古に喚ばれて定着した精霊みたいなものと言えなくも無いかも知れないが、四大精霊とか勝手に別世界理論で分別した挙げ句実際に強いと困っちゃうだろこっちも。
『新たなヒョロナガ勇者!!名前は!!』
凄まじい攻撃が始まる。生成された魔石武器と、ゴーレムと、ノームさんによる魔法と近接の波状攻撃。
『…俺はヤマト。不二、山斗だ!!』
『ヤマトぉ!!最低でも今のオレくらい簡単に倒せ!!後から正しく復活させろ!!』
『はは、はははは!!無茶いいやがる!!そういうイベントかよぉ!!!』
いかん戦闘好きな奴らのハイテンションな空気になってきた。ヤマトの方も完全にスイッチが入ったのか、凶悪なデカさの魔法弾を撃ち出したり、部分的にちょっと光の巨人化してデカい拳で薙ぎ払ったりしている。
強い。ちょっと、いくらなんでもこいつら強すぎる。
「……あれ?ウラニアこれ、あいつのベルト……」
「本当に心の底から申し訳ないです」
そうだよね、魔力これ殆ど解放されちゃってるぞ。完全に全力ではないけど大半抜き出せるグリッチ使われてるじゃん。
「……え?ウラニアさん?」
一瞬遅れて意味がわかったらしいアネモネが正論パンチのダメージから立ち直ってくる。今度は慌てた冷や汗顔だ。
「本当にごめんなさい、あのベルトもう殆ど機能してないっす」
「空飛んでる時点で気づいてツッコむべきだった。一般人は飛べないんだよアネモネ」
「えっえっどうしよう!」
珍しく慌てふためくアネモネ。どうやら自分がめちゃくちゃ強いせいで多少魔力使ってても全く違和感が無く、本当に何一つ疑っていなかったようだ。
ヤマトは巧妙に抜け駆けするやつだと知ってたのにうっかりしてた。良い事の為に悪い事するのややこしいからやめろ本当に。
「まぁ待ってアネモネ、あっちはさすがに任せて大丈夫だって」
「えっ、で、でも!私、もう焼けたヤマトさん本当に見たくない!」
飛び出すべきか迷いオロオロするアネモネを必死になだめる。
……ちょうどその時、映像の中に巨大な光の矢が降ってくる。
『ハハハ!!無粋な支援かヒョロナガ!?そういう所は悪く無イ!!何でもやってオレを倒せ新勇者!』
『ケンタウロスの形といえば弓矢だよな!!分かってるじゃん第一王女!!』
意にも介さずそのまま戦闘を継続する二人。だが別にあの矢は攻撃ではない。支援ではあるけど、南の国の第一王女アオエデの放つ矢がただの攻撃のわけがない。学問の国だぞウチは。
あれには知恵が詰まっている。その場の問題を解決すべき知恵の矢だ。さすがお姉様、よく分かっている。流れ的に絶対やってくれると思った。賢者としてそういう答えを感じてた。
「南の国をもう少し信じてくれていいよアネモネ」
「え…?」
ズズンという急に重い音が鳴り響き、超人二人の攻撃が同時に止められる。
『『!?』』
『……何でもやっていいんだね?勇者ノーム、勇者ヤマト』
二人の間に割って入っていたのは南の国第一王子マリウス。
衝撃による砂埃から映像が戻ってくると、私がお姉様にあげた超々高級障壁の魔法石を持った王子が二人を阻んでいた。
『マリウス!?大丈夫なのか?』
『また逃げて後悔する所だった。本当にごめん。僕がやる』
その瞬間、強烈な爆弾が勇者ゴブリンのノームに、過剰な回復薬がヤマトに使われ、障壁が二人を遠く弾き飛ばす。ヤマトの方にはそのまま防護障壁が展開されて守られ、ゴブリンの方には追撃の爆弾が速射投擲魔法道具から連続で撃ち込まれていく。
そして豪華なアイテムは王子自身にも惜しみなく注ぎ込まれていく。
『高級エリクサー。高級エーテル。高級マインドブースト。高級フィジカルブースト。媚薬』
パリンパリン使われる超高級アイテム達に思わず観戦組から悲鳴が漏れる。
「う、うわ」「ひいい…!」「あ、アイテムだけじゃないですよ!」「まさか装備も」
さすがに調査員だけあって目が肥えている。気づいたようだ、マリウス王子が大量に抱えているアイテムや装備の価格に。分かるよ、あれは根っからの大金持ち貴族でなければ思い切って使えない。私は全然使えるけどね。だってもっと凄くお金持ってるから。
「見てアネモネ」
「これ本当に見て大丈夫かしら!?」
「媚薬による肉体強化が恐らく感度限界で打ち止めになっていたんだろうけど……まだまだ媚薬以外の薬なら使えるよね」
「本当に大丈夫かしら!!?というか媚薬も使ってるわ!?ドーピングで許容量増やして更にドーピングしてるわよ!!?」
爆発に弾き飛ばされた勇者ゴブリンが自分に治癒魔法をかけながら綺麗に着地し、地面から再び魔石武器やゴーレムを作り出す。
『ハハハハハ!バカ!本当にバカ!!そうだよなヒョロナガ!!使え使え!!隠し持ってる兵器も全部使え!!格好つけてる場合じゃないよな!?』
『返す言葉もないよ、僕が強いのはプライドと見栄だけなんだ。媚薬でも結構思い切ったつもりだったんだよ』
『いや媚薬ハなんなんだ!?』
『そうだ、楽で、逃げていた。分かっているフリをしつつ、格好悪い選択肢は避けていた。どうして僕はいつまでもダサいんだ』
『おい!媚薬ハなんなんだよって!?反省する自分に自己陶酔するナ!!』
不意打ち気味の攻撃が逆に気に入ったのか、勇者ゴブリンゾンビと金持ちイケメン王子の新たな戦いが繰り広げられていく。
第一王女から第一王子に届けられた最高級戦闘フルセットの実戦投入だ。歪んだ鎧を部分的にパージして、軽装に様々な魔法道具入りのスリングバッグやベルトが付けられている。
多分お姉様は急いで色々かき集めた後、自分の分の予備まで含めて丸ごと魔法誘導矢で届けたんだ。この私でも滅多に見たこと無いレベルの価格帯だぞこれは。
恐らく自分でも持っていて使っていなかったのであろう高級兵装も惜しみなく使っているのだろう。魔物制圧に用いられる閃光弾あたりは多分ずっと兵やってる王子のものだ。現代の現場で実戦投入されているものがやっぱり信頼性高いよ。それも王子が持つレベルの高級品な。
『目眩まし!轟音!!異臭!!ハハハハハ!!ダサい!!セコい!!いいぞ!!』
『弱いくせにダサいのは嫌。人の目ばかり気にしているから格好良い肩書に執着する。気づいていたんだな勇者ノーム』
『お前が怖イのは戦いじゃない!!そうだろ!?』
広範囲に強烈な電気ショックを与える制圧兵器や、そこらへんの石ころをとんでもない威力の弾にする兵器…はアネモネのファイアボールの劣化品だけど、まぁとにかく複数の装備で遠距離戦を抑える第一王子。
周囲に浮かぶ超高級自律兵器に援護射撃させながら、ドーピングパワーでの近接戦闘を高級剣や高級障壁がバックアップする。
ダサいとか言われてるが全然格好良いぞ。だって私の開発に協力した防衛道具も混ざってるから。つまり私も格好良い。むしろ道具を使うとダサいとか作ってる人の前で思ってたら許せないだろ。
『そうだ。僕が怖いのはガッカリされること。誰にも嫌われたくない。格好良く見られて、頼られて、認められたい』
障壁で身を守りつつ爆発兵器をかなり近い距離で連発したり、距離に応じて的確な射撃魔法兵器を混ぜたりと、恐らく武術系の強さとは少し違う現代戦闘的な戦い方。
超人のやばい戦闘と同格とは言わないが、現代までアップデートされ続けてきた効率的な強さにイケメン王子の財力と努力と媚薬が混ざれば一つ大きな壁を超えた強さな感じするよ。
まぁイケメン王族らしくなんかナイーブで意識高い会話はしているだが、やってることは民を守る兵士達のシビアな戦い方だ。
様々な近代兵器を状況に応じて使いこなす、現代兵の力。その超絶予算版。アネモネともヤマトとも違う地味で生っぽい道具頼りの強さだけど、これこそ国民の命を背負う者達がいつもやってる無難で強い現代の戦い方だ。
ずっと国を守る兵として現場に出続け、地道に他国の講習とかも回ってきてるみたいだからなウチの第一王子は。今すぐ超人武術家にはなれずとも、地道に真面目に積み上げてきたものが別の場所にちゃんとある。
本人としてはヤマトやアネモネみたいに身体能力だけで大活躍したいんだろうけどね。いつだって万全な装備が揃うわけじゃないし、それを現場で知ってるからこそ余計に憧れるだろう。分かる。だが道具を使え。そして私達道具を作る側の存在にもっと感謝しろ。
『おいおい、俺が一番頼りにしてるのはマリウスだってば』
『他人の評価が気になる僕みたいなやつって、面倒なことに他人からの良い評価を信じないんだよね。自分で納得出来る成果を出さないと満足出来ない』
『もう逆に一番他人の評価関係無いやつな!俺にもあるわその感覚』
『あるんだ!』
『ある。じゃあもう仕方ない、勝手に信じて成果を待つぜ』
『ありがとう』
隣でウラニアが何か必死にメモしている。やめろ。
もう一度参戦すべきか近寄って確認したヤマトがマリウス王子に完全に任せて下がる。
離れた場所で高級障壁に守られ座り込むヤマトをよく見ると、なぜか長時間ずっと回復薬が効果を発揮し続けている。こいつやっぱりバレない所で結構ダメージを抱えてたんだ。見えない場所にまた魔石が露出してるかも知れない。
『ソウか!生身なのか新勇者!!…生身で自分を燃やしてタノカ!?』
『そうだ。悪いけど僕で我慢してくれ』
理解の早い勇者ゴブリンのノーム。イタズラと馬鹿騒ぎが好きな魔物ってイメージで一切賢い印象無かったけど、まぁ主語がでかいって話か。人それぞれ。ゴブリンもそれぞれ。そこらへんの奴らも仲間殴りながら助けてたし、良いやつも賢いやつも居るわけだ。
しかし本当に死体を使う魔法だったんだな勇者作成魔法。ヤマトの無駄な長話と違って私の推測は大体合ってるというか意味があるもんだが、悪い予想が当たるのってちょっと怖いよね。
『こうなったら別にお前デモいい!!力を見せろ!!』
再び激しい激突が繰り返されていく。恐ろしいことに勇者ゴブリンのノームさんはその凶悪な戦闘力を発揮しながら遠くのゴブリン達に回復魔法も飛ばしている。大地の力が万能すぎる。
『見せるさ……王族にして有力貴族が持つ……絶大な金の力を……!!』
『ハハハハハ!!ダセェーー!!!お坊ちゃんの力か!!ハハハハハ!!』
『それだよ!きっとそれを言われたく無かった!!』
『ハハハハハ!!いいぞもっとやれ!!もっと!!もっと勇気を出せ!!!』
『っか、感度!1000倍だあああ!!!』
『アハーッハハハハ!!!怖ぁああああ!!!!』
うーん、イタズラで大はしゃぎしている時のゴブリンの顔も出てきた。やっぱりあくまでゴブリンはゴブリンでもあるようだ。ヤマトのことはシンプルに気に入ったようだが、必死に食いついてきた王子も大変お気に召したらしい。
足枷になった見栄や執着を捨てるのだって勇気だから、勇者達には好かれそうな気がするもんな。
見栄張って良い事もあるから捨てれば良いってもんじゃないが、抱えてて結果が出ない時に一度手放してみるのは良い勇気だ。欲しくなったらまた拾えばいいだけだし。
でもダサく無いって言ってんだろ高級道具使うのは。肉体派どもはこれだから。




