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【頑張るおばちゃん第一王女アオエデ視点と、大事件なのにオマケみたいな不憫王子マリウス視点】

【タリア溺愛おばちゃん第一王女アオエデの視点】



「毎回こうなるのよ!!!!!!!!!!!!!!!」


「声デッカ!!!」「うるっさ!!!!」「耳ガアアア!!」「音響兵器!?」



わたくしの嘆きに同調するかのように魔物の悲鳴と人間の悲鳴が上がる。むかつくから拡声器もフルパワーにしてあげたわ。


またいい感じの場所にギリギリのタイミングで配置されてしまったから、タリアちゃんに手が伸ばせない。



マリウス坊やが通信で活躍し始めてから私が動き出せる最速がここだったのだから賢者がわたくしの動きを計算に入れても不自然では無いのだけど、毎度ながら事件が起きてから「あっこれ賢者やってるわ」って分かるから事前に準備しきれないのよね。




面積が生まれるのは三点から。わたくし達三姉妹は互いの実力を過不足なく分かりきってて鬱陶しいくらいなので、こうやって「広い面を誰がどれぐらい守り合うのか」みたいな場面では最適だったのでしょうね。


というか声が甲高くてうるさいから耳の良い魔物は逃げるってよく言われるのよね。魔物避け扱いされてて普通に失礼だけど本当に全然攻めて来ないわ。




教会に案内されるという話の途中で突然街に向かって暴れ出した魔物達。それまでの流れを無視して強制的に街を守る配置につかざるを得なくなったマリウス坊やとわたくし達。流れとかその場の空気とか大体無視してくるのよねタリアちゃんの力って。


先に言ってくれればもっと心構えが出来るのに、どうしてあの優しい子の力がこんな無遠慮なのかしら。




「ギャアアア!」「骨ガァアアア!!!」「バカ!はやく!はやく帰ロウ!!」



ゴブリン達の悲鳴がそこかしこから響いていて向こうもとてもうるさい。負傷した味方を殴りながら撤退していくのを広範囲に観測している。



仲間同士で揉めながら襲撃してきた魔物達とかいう意味不明な状況で防衛を頼まれたのはさすがに驚いたけれど、ようやく追いついてきた兵とも合流できたのでこの一帯の被害はほぼ抑えられている筈。



いざ戦闘になるとマリウス坊やがビックリするほど成長していて、目の前を守るとか敵を倒すみたいな浅い戦いではなく、わたくしの兵とも連携して良い感じに敵を負傷させて戦線をコントロールしている。


まぁ麗しい王女達が体張って重要なポジションを抑えているんだから王子も兵もそれくらいは活躍しときなさいよって話だけど、割と出来てるわ。



異世界の勇者と出会って変わったみたいな噂は聞いていたし、本当に凄くなってて感心した。




ただ、それはそれとしてなんで第一王子の戦い方が媚薬飲んでの肉弾戦なのかしら。



エロ同人誌のことフィクションだと思ってたけどちょっと見方変わっちゃいそう。現実でも意味不明なタイミングで気軽に飲むのね、媚薬って。戦闘用の興奮剤扱いとか?きっと勝ったら勇者とエッチなことするんだわ。負けたら完全に薄い本ね。



わたくし達にビビった住民達が既に家に籠もってたのも楽で良かった。不遜過ぎる。南の国は不敬がゆるゆるだと中央の偉そうなのがよく言ってたわ。わかる。




……でも、違うのよね。わたくしが活躍するのはいいし、国民を守るくらいの責任感もまぁあるわ。そして賢者に頼られるのも悪い気はしない。だけど、違うのよ。


こういう賢者側の頼られ方じゃなくて、あの子に頼られたいのよ私は。いっそもう頼られなくていいから守りたい。こういう事が出来てしまう役目から守ってあげたい。




どうせ賢者でも事故死や不可避の死を完全に防ぐことは出来ない。あの子自身が動かないと出来ることが減るのは分かっているけど、遠くに居たら何も出来ないような甘い力でも無いし、むしろ広い視野で見たら誤差に過ぎないわ。



賢者の力が出す最適解に人命の尊重なんて非効率的な要素が無いのはよく知っている。わたくしは世代的にどちらかと言えばあの子よりもあの子の母になった優しい人をよく知っているもの。


だからこそ非効率的で仕方のない誤差にも立ち向かっているのは痛いほどよく分かっているし、そういう子だから守りたいのだけど……。




「マリウス坊や!任せるからわたくしタリアちゃんのこと見に行っていいかしら!」



街の遠くで戦ってる集団に向けて爆音で聞いてみる。爆音にしたままだったのでまた魔物と兵の悲鳴があがる。多分ダメだけど聞いて損は無いでしょ。



「いや、マリウスは今かなりの強敵と接敵した。街の防衛に手が回せなくなったかも知れないんで、こっちを絶対に死守して下さい」


「勇者!あなたもっと中央寄りの場所見に行ってたんじゃなかった!?」




突然空から例の勇者が降ってきて、返事の代わりに状況を説明しに来る。こいつも良くない感じだから危険から遠ざけたいけど、なんて便利なの。いざこういう場面に立たされると、このわたくしでも頼りたい感情が湧く。本当に良くないわ。




「激戦区はこの南端付近がメインで、他は兵も間に合ったしなんとかなる感じですね。空の長すぎるヒビ割れには肝が冷えたけど、アネモネの策略で今回は上空から気軽に襲撃出来ないみたいだ」


「なんで聖女が策略で活躍してるのかしら!?」


「精神病みデバフから回復してきたアネモネを甘く見てましたね俺も。最初に会ったときから凹みきってたんで本来の姿を全く知らなかったんですが、まさか勇者信仰の聖女があんなに勇ましい感じだったとは。いや文字通りなのか?」




軽口を叩きながらどこかに飛んでいこうとする勇者。




「ちょちょちょ!待ちなさい!」

「もう少し耐えたらタリアが何かするみたいなんで、一旦そこまで現状維持で!」

「タリアちゃんに無茶させないで!止めて!いや貴方もダメよ止まりなさい!」

「今回の俺は孤立してる人とか偶然はぐれてた人の小さな被害をなるべくなんとかするんで。それがタリアへの一番の協力でしょ」




言い返そうとしたがすぐに言い返せぬまま勇者を見逃してしまう。絶対にそれだけじゃない。勇者も何か戦略か切り札を隠していてそれの為に動いている。


光り輝く巨人になれるという噂だし、それの準備なのかしら。




遠慮を捨てればわたくしと口で対等に戦えるあたり、さすが伝説の勇者ね。只者ではない。味方に頼りながら、勝利を信じて思考停止するわけでも無く、次の手を用意している。



味方を信じるというのは良い言葉だけど、味方を信じて任せるというのはそいつがダメだったら負けてもいいなんて話ではないのよ。その役目を任す代わりに自分が何をするのかという思考が抜けていたら意味が無い。任せた時こそフォローとカバーってやつね。



あの勇者は間違いなく自分ひとりでなんとか出来る準備をしている。仲間に今を任せる代わりに、駄目だった未来が訪れた時に出来る手段を増やそうとしている動きに見える。



でもその手段は多分使わせちゃいけないものだわ。既に顔色がおかしい。痛みを隠している?




「可能ならむしろマリウスを支援してやって下さい!バフでもなんでも!」




頼み事が遠くから聞こえる。返事を聞く気も無いようで勇者はどこかに行ってしまった。返答拒否はわたくしの得意技だけどやられると腹立つわねこれ。



「仕方ないわねぇ本当に!」



位置的に妹達とはだいぶ離れているし、どうも本当におかしな強敵が現れたのも分かってしまう。ついさっきまでゴブリンと戦っていた筈なのに、謎の攻撃魔法が何度も炸裂している。


わたくしが一番守りたいのはタリアちゃんだけど、別に他を見捨てたいわけでも無いのよね、困ったことに。





################################





【大体主人公が見てない所で頑張ってるイケメン王子の視点1】




ヤマトくんはこいつが今回の襲撃で今のところ一番マズイ敵だと言った。その上で僕に任せると。


当然だ。こいつだけじゃない。本当はヤマトくんが手を出している相手全てを僕が引き受けていなければならなかった。だって魔力が使えない筈じゃないか。なんで変身とやらもせず普通に戦っているんだ。




「グァアア!!怖イ!嫌だ!ウアアアア!!」

「怖いなら!巣に帰ってくれ!!」



ガガガガガという激しい連続音が自分の剣から鳴り響く。



信じられない速さの連撃だ。それもアネモネ様みたいに魔法石を変形させた棍棒と魔力弾を組み合わせた魔法戦士タイプによる全距離対応の高速連撃。本当に信じられない。



なんだこのゴブリンは!?




こんな強い個体は見たことが無い。それも恐らく例の恐竜と同じく、死体を兵器化されたゴブリンゾンビだ。体のあちこちが魔石で出来ている。




「ヒョロナガ!近ヅクナ!近ヅクナ!」

「もしかして人類の事をひょろながって呼んでるのか?近づいてきてるのはそっちなんだよ!何度でも言うが、洞窟に帰ってくれ!!そうしたら追わない!!」


「ウワアアア怖い!怖スギテ放置出来ナイ!マジック・ミサイル!!アイスランス!!」

「こいつ!?」



見たこともない魔法を連射しながら、棍棒で片手剣の高等剣術のようにフェイントを交えつつ絶え間ない連続攻撃をしかけてくる。


恐ろしいことにこの感じはヤマトくんとの手合わせに近い。呪文の妙な語感まで似ている。追尾してくる魔法弾を必死に避けると氷の槍がそこに待ち構えていた。魔法だけでも達人レベルだぞ!?なのに近接格闘が強すぎる!




割と弱いイタズラ好きの妖精みたいなゴブリン種族でさえも兵器化するとこんなに強いのか、こいつがゴブリンの中でも特殊なのか。恐らく後者だ。


ここまで体格を活かした低い姿勢からの全距離攻撃はどう考えてもゴブリンとして大きな相手に打ち勝ってきた経験が必要な筈。




「英雄!英雄!」「ドウシテ!」「守っテル!ヒョロナガから守ッテ!」「英雄!」



遠巻きに騒ぐ他のゴブリンの反応からも特別なゴブリンで間違いないようだ。もしかして洞窟の奥とかに祀っていた英雄の遺骨が復活したとかそういう感じなんだろうか。よくみればあまり普通のゴブリンには見かけない色々なアクセサリーが首や手に色々付けられている。



死体を兵器にしていたって話はなんとなく分かっているつもりだし、実際に邪竜の正体と思われる死竜兵器とやらも見たけれど、あの恐竜の骨とか祭壇に飾った骨からどうやって筋肉や皮膚が復活するんだろう。



なにより脳というか記憶や経験は設計図でなんとかなるものなんだろうか。やっぱり知力の加護の無い僕には何一つわからないのか。情けない。



「君達の英雄なら連れ帰ってくれないか!!絶対に追わない!変に傷つけたく無いんだ!」


「帰リタイ!」「怖イ!」「生き返ッタ!?ナゼ!?」「英雄!帰ロウ!」




どうやら遠巻きに見ているゴブリンも僕と同じ気持ちだったらしい。そもそも彼らは日光が苦手だ。肌も目も紫外線に普通に弱いし。どんな洗脳や操作をすればこんなことになるのか。邪竜騒ぎに備えていたはずが、なんでこんな意味不明の戦いを?




「怖い、怖イ!」



目の前で戦っている異様に強いゴブリンの英雄も怖がっている。押されているのに凄く悪いことをしている気分だ。怖いのはこっちだよ。薬やバフがあってようやく戦える相手だ。以前の僕だったら瞬殺されていた。



「お願いだ、見ての通り誰も殺してないだろう?引いてくれ!」

「ウググ……!マジック・ミサイル!」

「この!!」




駄目だ、距離を離して説得しようとすると魔法攻撃がきつい。接近して戦うしか無いが、小柄な相手に懐に潜り込まれると普通に近接でも辛い。



別に手加減はしていない。この英雄ゴブリンのゾンビが手を抜けるような相手じゃないというのもあるし、僕には今やるべきことが山積みだ。倒せるなら倒してしまいたい。


でも倒せない。説得も上手くいかない。むしろ殺されないので精一杯だ。



棍棒の連続攻撃で手が痺れる。打撃の一つ一つが重い。ヤマトくんに掛けてもらったバフが切れるまでになんとかしないと、本当にマズイかも知れない。




「……その光!ソウカ!?ソウダッタ!?」

「何がだ!?帰ってくれるのか!」



不意に飛び退く英雄ゴブリンゾンビ。正直一瞬ホッとしてしまった。




「怖イ!オレが、皆が、怖イ時こそ!オレは前に!」




小さな英雄が拳を空に突き上げる。




「ソレガ、勇気!!」

「なっ……!?」



彼の手の甲が光り輝く。




『勇者ハ、一人ノ称号デハ無イ!!』




多重円を矢印にするみたいに楔で区切る独特な紋章。


──あれは、ヤマトくんと同じ。全く同じもの。




「バカな!?ゴブリンの勇者!?」


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