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相変わらずチートがあっても活躍出来るとは限らない



意味が分からん!


もう何が起きてるのか全然わからない!



「タリアさま!やっぱり遥か上空で戦闘が始まってるっす!」

「誰と!?邪竜!?」

「見えないっす!アネモネさまが一人で何かと戦ってます!」

「どういうこと??まさか透明な敵ってこと!?」




ついさっきとんでもない発見があったばかりで、本当はそっちの話をじっくりしたいわけ。新たな概念の生命って、多分そんな放置してよい話題じゃない筈なんだよ。


でも飛び出していったアネモネが空で何かと戦っているって事は恐らく邪竜案件……



「空に亀裂が!!」

「急すぎるって!!」



バギィィインという轟音と共に、長い長い亀裂が遠くの方まで発生する。空の穴だ。きっと空割りドラゴンが来ている。


あまりにも急に忙しくて何をすべきかすぐ思いつかない。緊急事態が続いてるのはちゃんと理解してるし、襲撃も予想はしてたよ。してても急なもんは急だよねって話だわ。




「タリア王女!」

「はい!!!?」



教会から外に出ようとした瞬間、聖女候補の人達に呼び止められる。



「第一から第三の王女三姉妹が魔物の群れと戦闘開始!続いてその近衛兵も集結中!」

「なぜ!?」


「別の群れが教会にも接近中!」

「別!?」


「どうしますか?」

「どうしますか!?私がってこと!?」



急にスンって静かになって私の返事を待つ二人のくノ一。じゃない聖女候補。



「いや、いや!?待って、話についていけない。お姉様達はどっから出てきた!?」

「お姉様!?」

「あれ!?ヤマト!どこ行ってたんだよ!!」



いつの間にかヤマトも居る。お姉様呼びに大いに驚いている。そんな場合か?



「ちょ、ちょっと説明を、誰か状況を教えて」

「なんだよ!肝心のタリアがまだ全然分かってないのか!?」



この忙しい時にという顔をされる。勝手にどっか行ってた癖にこいつ!




「アネモネが空で戦闘開始、空が広範囲に割れた、マリウスと王女三姉妹がすぐ近くで魔物の群れと交戦中、この教会に別の魔物の群れが接近中、多分海底に沈んでいた恐竜兵器が起動してこっちに来てる、ええと、あとなんだ?まぁいい、優先度どうする賢者?」


「多いよ!!多すぎる!!!急にそんないっぺんに言われても無理だって、それ全部本気で言ってる!?」




なんか急なだけじゃなくって想定と色々違うっていうか、色々増えてないか!?


聖女候補の人達も頷いている。嘘でしょ。話盛ってない?空が広範囲に割れただけでも国を揺るがす大事件だと思うんだけど、なんで魔物に襲撃されてる?



「俺が抱えて飛んで、実際に見たほうが早いか?」

「勇者様、10秒だけスイッチして下さい」

「いや、じゃあ一旦空は俺がやるわ。前とは違う、俺はあくまでバフと遊撃と最後の保険。全部任せるからなアネモネ」




いつの間にか上空で戦っていたはずのアネモネがすぐ隣に居て、超人二人で勝手に作戦を決めている。そして私への説明も適当なままどこかに飛んでいくヤマト。嘘でしょ。



「任せる……私……」



あ、嬉しそう。アネモネは最近本当に強くなったからね。それが認められた感動シーンなのかもしれない。私の中では最初から強すぎるのでいまいち流れがよく分からない。


そんなことを考えながら小脇に抱えられていく私。扱いが雑じゃない?




「少し高めに飛んでいいのかしら」

「えっ、ちょ」「ボクもっすか!?」



アネモネの両脇に抱えられて空に浮かびあがる私とウラニア。



もっと遥か上空から、ドドドドドという爆発音が連続で鳴り響く。どうやらヤマトが何かと戦闘開始したらしく、無数の魔法弾をぐねぐね曲げながら乱射している。見えないから手当たり次第に当てて特定してから集中攻撃って感じか?


そしていつの間にやらアネモネの方も、ベルトで無茶を封じた範囲内ではヤマトを頼って良い判定になっているようだ。……ということは空を飛んで魔法弾乱射って常人に出来る程度の攻撃って認識なのかな?えっ無理だよ。まず人は空を飛ぶべきじゃない。怖いから。




「タリアさま!あっち!なんか魔物同士が乱闘してるっすよ!?」

「もーーーーなんなんだよ!!」




情報の洪水に溺れそうだ。私やっぱりマルチタスク苦手かも!一個でいいよ大事件は!



確かに教会からそう遠くない場所で魔物同士の乱闘が起きている。教会に迫っている別の群れも居るし、魔物から逃げてる魔物も居て意味が分からない。何がどうなってるんだこれ。



そして遠くではバカでかいケンタウロス達が暴れている。本当にお姉様達が来ているし、三人遠くバラバラに分かれ、要所を抑えて広く結界を張り、住居が広範囲に点在する田舎町をなんとか分担して守ろうとしているようだ。


何がどうしてそうなったのかさっぱり分からないが、さすがは最も王に近い三姉妹。こんなピンポイントで自ら最新兵器で戦うなんて。なんで王女が体張って戦ってるんだ?




「タリア、もしかして地面より海のほうが竜の死体っていっぱいあるんじゃない?」

「あっ!?た、確かに…!」



この近くには大きな川がいくつかあるし、元々海の竜も居るはずだ。波に削られた崖からも続々と恐竜が見つかったわけで、海に流れ着いた恐竜の死体とか川に廃棄された兵器とかあるなら海底の地下って想像以上にヤバい状態なのでは……



ちょうどその時、浜にすさまじく首の長いドラゴンが打ち上げられているのが目に映る。一瞬巨大なヘビかと思った。




「あ、アネモネさま、ちょっと待って!死竜兵器みたいなのも敵に起動されてるんすか!?空も亀裂が入ってるけど、大穴になる前からもうこんな……!」


「あの鳥もだけど、きっとこっち側で既に動いている邪竜も色々居るのよ。タリアは全部分かってるわ」


「鳥って何!?というか私にこれを全部分かれと!?」




無茶ぶりがすごい。全部今知ったけど!?



「どうするタリア?どれから殺せばいい?」

「迫られる判断が重いよぉ!魔物だからって皆殺しとか絶対ダメだからね!?」


「魔物の方は足を止めるって事でいいのかしら」

「そうだね、もう皆止まって欲しいんだよね。一旦待って欲しい。考える時間が欲しい」




突然過ぎて本当に話についていけないが、突然こんな事になったならそれ相応の理由もあるはず。


そして迂闊に今のアネモネに魔物を倒してって頼めば今度こそ本物の血の雨が降りかねなくて怖い。あの日の大竜巻を思い出す。今度こそ『惨劇の赤い竜巻』みたいな物騒な事件が歴史の教科書に残ってしまう。決して現実を見ていない博愛主義とかじゃないはず。




「ヤマトさん、マリウス王子、タリアは魔物の足を破壊したいみたい。どう思いますか」

「あれなんかちょっと表現が違うな!?良くない翻訳だよアネモネ!」



なぜか短剣を構えたアネモネが虚空に向かって尋ねる。勇者様だったりヤマトさんだったりまだ呼び名が安定しないようだ。いやそっちじゃない、なんだ?通信機能でも付いた?


そして唐突に人形の声が聞こえる。



「勇者も王子も、即死させるより見捨てられない程度の怪我人作った方が効率的に戦力を削げるやつかって聞いてる」

「多分そうって言って」

「いいえ!?」




いつのまにかアネモネの肩に私の人形の子供(?)が現れて通信係みたいな事をしはじめていた。ちなみに肝心の私とアネモネの意思疎通部分に重大な問題があるよ。私そんな残虐な事言ったか?



……内容はともかく、これもしかして遠隔で動かせる人形を複数使って視覚や聴覚共有したり連絡手段に使ってるのかな?


いやそんなこと出来たんなら早く言ってほしいが!?




「なるほど、さすがタリア。確かに戦闘指南で聞いたことあるわ。仲間を庇うような行動をする敵なら、殺すより怪我させる方が有効な場面も多い。でもむしろ既に仲間割れしてるように見えるけど、きっと意味があるのね」


「ちがうよ、全然そんなこと言ってないよ」

「イケ粗野カップル、分かったって言ってる」

「イケ粗野カップルって呼んでるんすかアネモネさま!?」

「よし、作戦は決まったから私一旦降下して教会で二人を守るわね」

「よしじゃないが。決めてない、待って本当にまだ何も分かってないんだよね私」




話が勝手に進んでく。ウラニアも必死に何かメモしているがまじめな方のメモであってほしい。ジャンルアイディアとかだったら後で叱ろう。



「向こうも分かったって言ってる」

「分かっちゃったの!?」



宣言通り空から戻り始めると、突然教会の鐘が鳴り響く。ガラーンガラーンとかじゃない。ゴガガガガガって爆音で鳴ってる。うるさすぎる。何?


ものすごい量の鳥が戦場から散り散りに逃げていく。しれっと鳥型の魔法生物も沢山混ざって飛んでいる。敵対魔法生物が潜んでたのかと思って一瞬ゾワッとしたが普通に人間が操作している観測用だ。戦闘準備が進んでいたのか偵察班が凄い多いのかな。多すぎでは。




「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」

「誰!?何が!?!?」



そしてよく分からないけど誰かがどこかで了解して鐘が止まり、今度はかなり遠くで薄っすら似た音が聞こえる。あれ、もしかして教会の鐘って爆音暗号通信か何かに使うものなの?爆音暗号通信ってなんだよ。



多分聖女候補の人達が今の作戦を伝え合ってるんだとは思う。これが賢者の作戦扱いされてたら本当にどうしよう。私全然そんなこと言ってないよ。


言葉って難しいな。思い通り伝わるなんて甘えが許されないのは重々承知してるつもりなんだけど、それにしてもじゃない?



なんだか凄く不安だ。もう状況についていけてないとか言ってる場合じゃない。一応何か起きてることはよーく分かったので、とにかく私も出来ることをするぞ。




……でも私って別に戦闘で出来る事あんまり無いんだが。特にあちこちで戦ってる状態だと全部庇える訳も無いから、本当にただ応援するしか無いぞ。



教会の高い鐘の所からは広範囲が見渡せるので、爆音が静まったらとりあえずあそこから色々庇ってみようかなと思うんだけど、遠くの街までは届かないし向こうはお姉様達が居る。


あっちは全然任せたっていい。すごいんだからお姉様達は。何より勢いがすごい。優しいし。



うーん。とりあえず教会を守りながら考えるべきか?




「じゃあボクも結界作るっす」



隣のウラニアが唐突に何かの道具を起動し、先日見た大きなゴーレムが複数体教会を囲んで防御結界を作る。なんと前回の空割りドラゴンの生体魔法陣の応用だ。アネモネが使ってた例の光る魔力を使っているのか、色々キラキラしてる。



うーん。万全な守りだ。素晴らしい。そして本当に出来ることが無くなったかも。



「ねえウラニア」

「はい」


「すごいし褒めたいけど、これ私の大事な役目の庇うスキルどうすんの」

「突発的な緊急時にしか使っちゃダメに決まってるじゃないすか」

「今ってどう考えても緊急時じゃない?」

「使わなくていいのに使うのは緊急じゃないっすね」



ふつうに口で負けた。


すごい、いつの間に皆こんなに準備してたんだ。装備とかっていうか、心の準備の方が出来すぎでは。




私の困惑が伝わったのか、ウラニアがさらに追い打ちをかけてくる。




「あれだけ危ない目にあったらさすがに皆覚悟のスイッチ入ってるすよ。皆には皆の守りたいものがあって、それぞれ自分が主人公の戦いやってるんですから。ボクの物語はちょっと地味だけど」


「絶対地味では無い」




どうしよう。この話の流れだと私いわゆる何も知らない脇役なんだけど。知的天才美少女賢者のこの私が脇役なんだけど。そんなことある?



いや。私も全然覚悟してたけどね。全然頑張れるし。


急に余分な情報まで増えるから調子狂っただけだし。意味が分からないでしょ、今までそんなに魔物関係無かったじゃん。あったわ。最初から普段ありえないくらい街まで来てた。




……どうしようか。そもそも庇う範囲で届きそうなのが教会と、ギリギリ街一個くらい離れた場所で同士討ちの乱闘みたいなこと始めてる狂った魔物たちくらいなんだけど。


アネモネにとりあえず見晴らしの良い教会の鐘のとこに降ろして貰い、今すぐ出来ることを考える。



「タリア、あそこの魔物達はちょっと近すぎるし一旦消しとく?足だけ消す?」

「だめだめ!実は足止めって足破壊の事じゃないんだよね!!」



周囲を伺いながら不意に不穏なことを口走るアネモネ。思わず魔物達に庇うスキル使っちゃったよね。特定範囲だけ届く感じで全部は無理だね。



「本当は狙撃が怖いから二人には地下に行って欲しい気もするのよね」

「一応私もウラニアも狙撃には絶対無敵だよ」

「ウラニアさんにはもう遠距離から遠距離無効を崩す攻撃沢山見せたわよ」

「そうなの!?」「はい……沢山協力してもらって、でも改良しきれなかったっす……」



まだ新事実が増えるんだ!?


そういえば開発に協力がどうこう言ってた気はする。私って夜は寝てるから夜遅くやってる内容の全てを知らないんだよね。皆もっと睡眠時間取ったほうが絶対いいよ。私は寝すぎ。



「タリア、多分戦いに関してだけは私の方が慣れてるみたいだから忠告しておくけど、基本的に分かってさえいればなんでも対処出来るのよ。例えば……」



突然アネモネの腕から黒い魔石のトゲが飛び出す。



「……こんなふうにね!」




一瞬体が浮いたような感覚のあと、階段から階下へと見えない何かに包まれたまま転げ落とされ、勝手に開いた地下への扉を通り抜けて最初に居た化石パズル中の場所に強制移動される。


今日はあまりにも全てが突然で本当に理解出来ない。




もしかして、今のは、アネモネが私を庇って……怪我した!?それから避難させた?


魔石が突然生えたように見えたけど、そうじゃなくて後ろから弾に貫かれたんだ。




咄嗟に観測用の鳥の魔法生物を飛ばす。教会のすぐ上空では、アネモネが腕に刺さった魔石を引き抜いて、弾に向かって「死ね」という呪文をかけながら握りつぶしていた。



「『生きた弾』っす!くそっ、ボクにはまだ対応出来ない!」



同じく咄嗟に魔法生物を飛ばしたのか、ゴーレムに視覚共有でも付けたのか、地下にいながら外を確認しつつウラニアが叫ぶ。



『生きた弾』。つまり、狙撃攻撃の弾を生きてる生命体で作れば、遠距離攻撃でありながら生き物による体当たりっていう近接攻撃に出来る……って事か?そんなのありか!?



「それはズルいだろ!?アネモネ……!」



そんなピンポイントで対策されることあるか!?しかも私が予測しきれてなかったせいでアネモネに怪我をさせた。私のミスだ。




「ボクとタリアさまがお互いを庇い合えば、これだけなら防げるんすよ。でも多分向こうは反転魔法が実用化されてるんです」


「えっ私も出来るけど……どういうこと?」


「反転が出来るなら、魔法で出来た結界やスキルの無効化くらい出来て当然だとアネモネさまもヤマトさんも言ってました。マイナスにする途中でゼロを超えてる。むしろ相殺や無効化の先に辿り着いてるんです。でもまさかボクの結界をすり抜けて狙撃してくるなんて……」




反転魔法の道具開発が間に合わなかったせいだと嘆くウラニア。試作がうまく進まなかったらしい。


マリウス王子もだが、表でも忙しくて裏方もこなしてる激務の人にまだ努力が足りてないなんて錯覚させてはマズい。



雇い主の責任を働き者が勝手に感じるな。気合を入れ直す。




──なんとかする。私が活躍さえすればもうなんもかんも大丈夫なんだよ。そういうものなんだ天才っていうのは。エースでキングで美少女なんだよ私は。




観測用の魔法生物を更に高く飛ばす。


一旦。冷静に。アネモネは大丈夫。想像以上に凄い自己回復が出来るのか、血も出ていない。ごめん。ごめんね!


アネモネの周囲はむしろ張り詰めた緊張感と達人の集中する空気で音が遠くなったような静けさがある。



あえて一番目立つ空中で堂々と静止し、狙撃を待っているんだ。多分囮の自分だけじゃなく、誰を狙っても弾き、狙撃手を特定しようとしている。



敵も学習している。乱射も怖かったが、いつどこから誰が狙撃されるか分からないほうが厄介だ。前回こちらがファイアボールでやったことだ。透明化したアネモネに攻撃される方が防ぎづらいと想像したのを薄っすら覚えている。まさにそのタイプの攻撃だ。



とにかく出来そうな事を試しながら得られる情報を探す。何か、何か役に立ちたい。




──正直躊躇している。この『庇う』というスキルも反転させれば誰かにダメージを肩代わりさせる攻撃兼防御スキルに変換出来る。


出来ればそういう事はしたくないが、それが今の私にとっての秘密の切り札にはなると思う。実は敵の攻撃で敵を倒せるんだ。



だが今知った。実戦経験の少ない私の考える戦闘のアイディアは頭でっかちで甘すぎる。敵が反転や無効を使ってくるなら、私が密かに考えつく程度の戦闘手段はたった一回の不意打ち程度にしかならない。



内緒で隠し持っていた切り札すら弱い。このままでは本当にまずい。



観測用の魔法生物をもっと高く飛ばす。


上空では怒涛の見えない戦闘。周囲は魔物の乱闘。そして海岸の砂浜には相変わらず首の長い竜が打ち上げられている。



集中。集中する。普通は聞き取れないような音を捉える。首長竜の声だ。そうだ。相手は魔法を使う。呪文を使える。私なら翻訳出来るんじゃないのか。



今まで意識できてなかっただけで、未知の敵も、ヤマトの言う鳥の言葉も、私なら。私だけはちゃんと分かって対話出来るんじゃないのか。



それこそが賢者じゃないのか。




情報だ。情報が欲しい。……若干負荷があるのか、頭が熱い。




必死に首長竜の言葉を聞き取ろうと近づく。


それが言葉かどうかは分からないけど、例えば飼っているペットの声はそれが何を求めてるか感覚で分かるように、鳴き声には意図が宿っている。



文字や言語という人間基準の概念で考えるな。


分かるはずだ。私なら。



「ーーーー!ーーー!!!」




聞き取る。真剣に。



「く……?」

「なんすか!?急にどうしたんすか!?」「大丈夫ですか!?」

「ちょい待ってろ!今ドラゴンの言葉を聞こうとしてるんだ!」



突然ぶつぶつ言い始めた私をめちゃくちゃ怪訝な顔で見るウラニアと、同じく地下に避難させられたっぽい歴史調査員の人達。今真剣に頑張ってるとこだから!



「す、すごい」「もしかして海岸の竜ですか!?」「竜言語を人が!?」

「静かにしなきゃダメっすか!?」

「当たり前だろ!普通静かにするよね!?」




今真剣だから!見て分からんか!?無理か、壁に向かってブツブツ言ってるだけだから見た目はダメか。そりゃ外で頑張ってくれてる人達の方が絶対真剣だし一番活躍してくれてるけども。私も頑張んないとダメなんだって。




「む…り…?なにが無理なんだ!?首長竜!」



ごくりと息を呑む周囲。やっと真剣さと重大さが伝わったようだ。というか歴史調査員はどう考えても大事件だろ、遥か太古の生物との対話だぞ。いや真の魔法生物なのか?どっちなんだこれ。


多分こいつら卵じゃなくて胎生な気がするが、それでも魔法生物として産めるなら結構重大なアレだぞ。出来るかも謎だが出来ない理由も思いつかない。




頭に変換が飛び交う。翻訳が難しいのか、翻訳するほど大した事を言っていないのか。


『むり』『だめ』……何かに苦しんでいる……『ずっと』……?やっぱり人類が何かしてしまったから、ずっと苦しんでいるのか?罪の意識が湧いてくる。



飛ばした観測用の魔法生物をもう首の長い竜の間近に近づけて声を聞く。砂浜には似たように動けなくなった竜や変な魚が他にも居る。攻めてきたのかと思ったけど、むしろ今の事件で何かの被害にあって打ち上げられてしまったとかなのか?元から被害者なのに……




『……もう……むり……!』




何が無理なんだ!教えてくれ!!




『水の外……動けない……!』


「見りゃ分かんだよ!!!」

「うわ!?なんすか!?」「どうしました!?」「竜はなんと!?」




『く……首……!首が重い……!!』


「そうだろうね!」

「何がっすか!?」「気になります!」「もうネタバレしてください!」




皆を手で制し、自分の心も制する。落ち着け。それはそう。それはそうなんだよね。


動けない動物がキューキュー鳴いてて他の意味の可能性低いからね。大丈夫。全然冷静にいける。クールビューティ。



しかも首が重いって言ってるけど……そもそもよく見たらあまり上方向に持ち上がらない形っぽいぞその首。それ引きずってヒレで陸地の移動は不可能だろ。なんで陸に上がってきたんだよ。まさかその体で陸上の人類を攻撃しに来たのか?




『に…人間……!』




そうらしい。私の魔法生物と目が合って人間に見られていると気付いて、怒気が混ざった感じの声になる。嘘でしょ。その体で陸上の動物と戦うのは絶対に無理だよ。本来私達が海の底に行くようなイベントがあった場合に立ちふさがるべき相手だよお前は。行かないけど。




『助けて人間……!人間を殺したい……!』


「バカがよー!」

「悪口が!?」「そんなどストレートに!?」「何を言われたんです!?」




こいつは見捨てて他のを見に行く。皆似たような感じならもう放置しよう。バカと交渉しても時間の無駄だ。一応私なら言葉は分かるし、分かっても大した意味が無いという事実だけを収穫にしよう。



置き去りにされる首長竜の声が微かに脳内に響く。



『し、死にたくない、死なないけど………』



海に帰れ。



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