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魔法生物


「あれ?勇者様はどこです?」



細々とした破片を持った歴史調査員の女性が、何か質問があったのか慌ててヤマトを探し回っていた。


突然未知の襲撃が近いと判明したので皆慌てて作業を一区切りつけようと頑張っているのだ。賢者が分かってること全部すぐに皆に色々共有していればもっと時間と心に余裕があっただろうに。私です。いや私のせいだが私のせいじゃない。分かるようで分からないものだろ自分の事ってさ。ゆるして。



「さっき王子と密かにどっか行ったぞ。外でいちゃついてるのかも知れない」

「ああー。やっぱりエロイラストのとおりなんだ」

「まぁイケメンと粗野な細マッチョだからな。エロいことしてないわけが無い」

「じゃあタリア王女様で」



しょうがないから賢者でもいいかみたいなノリで私に何か見せてくる。いやそれはおかしくないか。私より知的で天才な美少女賢者ってあんまり居ないよ?



「勇者様の場合は最悪ネタバレを踏んでも異世界ネタの可能性が残るんで」



ネタバレが嫌だったらしい。分かる。私もいつも脳内にネタバレされてる。



「で、これがどうかしたのか?」

「多分これ化石じゃないから見せたくて。個人的な感想なんですが、話に聞いた現象と合っていない気がして……」




ふむ?他にもウラニアを含む数人がなんだなんだと集まってきて、皆で丁寧に掃除しつつ細かい破片を確かめていく。


大部分が魔石と混ざっていてうまく分離出来ないので分かりづらいが、確かに何か変だ。


というか賢者の私が化石だと感じていない。



「これは……殻?」

「あー!ほら出たすぐネタバレするじゃないですか!」

「いやちょっと待て、そんなこと言ってる場合じゃないかもしれん!」




気付いた瞬間ゾッとした。


長い年月をかけて魔力の影響を受け魔石化した殻の化石…、では無い。魔石で出来た殻なのだ。



「ちょ…っ他にも探してきます!」

「手伝うっす!」



私のすごく真面目でシリアスな空気を感じた皆が動き出す。


まずい。勇者も今すぐ帰ってこい。情報が欲しい。異世界にも何らかの似たような現象はあるのか?……それともこの世界特有のとんでもないやらかしなのか?


絶対後者の予感がある。あいつの世界には魔石化も魔石の殻も絶対無いはずだ。だって魔力が無いんだから。



私もすぐさま手伝いに行き、皆で似たような破片を探す。異様に目の良いアネモネが少し遅れて状況に気付き手伝ってくれると、すぐさま数個の破片が増える。



パズルにしてはあまりにもピースが足りなすぎるが、これこそ漠然と探し続けていた何かだという確信を得る。



「……何度鑑定しても変わらない。間違いないぞ、これは卵の殻だ!」

「あれっすか?現代に蘇っちゃったみたいな話っすか?」



私が突然シリアスになったものだからまだノリに付いてこれていないウラニアが恐る恐る確認してくる。



「まだ断定しづらい。出来るものは分析や鑑定してみてくれ!情報の補完が欲しい!これが本当に魔石で出来た卵の殻ならだいぶ話が変わってくるぞ!」


「さすがに鑑定はタリアさまのでいいっすよ。でも言っちゃなんですけど今更古代のふつうの竜が復活しててもそれほど脅威じゃ無くないっすか?死竜兵器もカス倫理観には驚いたけど全く対処出来ないほどじゃ無かったし……」


「復活じゃない。よく考えてくれ、卵の化石じゃない。魔石で出来た卵だぞ」




少し首をひねって考えていたウラニアと数人の調査員が同時に飛び上がる。シリアスさが通じたようだ。アネモネはそれを見て敵襲だと思ったのか外に飛び出していった。多分全然流れが分かってない。かわいい。




「生物を素材にした魔法生物が最初から魔石で出来た卵を産んだって話っすか!?」



頷く。そして他の皆もそう連想出来るならもう間違いない筈だ。私が余分な情報を抱えすぎて突飛な勘違いをしている可能性もまだあるが、他者の視点からも自然にそうなるなら……。



「問題は、『どっち』の卵なのかなんだ。くそ、異世界視点も欲しいのにどこ行ったんだ勇者は」



結局ダブルチェックというのは仲間内でやっても意味が無いんだ。視点が違うから見え方に角度が生まれて見落としが分かりやすくなるわけで、賢者の力がどれほど正解を出してこようと、私が正しく理解出来てるか出来る限りのチェックはしたい。




「『どっち』というのは、もしかして『元生物の卵の再現』では無い可能性を疑っているのですか?」



神妙な顔で一人の調査員が質問してくる。



「そうだ。おかしいじゃないか。元の生物を正しく再現したのなら、その卵は魔石製では無く元の生物と同じ成分で生まれてくる筈だ。そんなことが出来るのかは一旦置いておくが」


「……ではもうそれは二択じゃなく賢者の正解ですね。この卵はおかしい。殻もそうですけど、つまりは中身も……」




どうやら同じ答えに辿り着いたらしい数人と顔を見合わせる。




「多分、これは本当に『魔法生物の卵』なんだ」




静まり返る地下室。




「……魔法生物って卵からも生まれるの?」


いつの間にか戻ってきていたアネモネが、純粋な疑問をぶつけてくる。



「魔法生物っていうのは実際には生き物じゃなくて、魔力を利用した擬似的な生命だ。生きているみたいなものであって命じゃない」

「そう…なのかしら」



そこから疑問形なんだ。妙に不安になるぞ。



「だからそもそも『生まれない』。不可能だからわざわざ卵を生む機能を付けようなんて考えないし、死んだ生物を素材にして卵が産めたとしてもそれは元の生物に依存する機能だから卵も中身も素材にした生物の卵そのままの筈だ」



そして既に話の途中からずっと首を傾げていた。そうだよね。難しいよね。




「魔法生物の卵って言って無かった?」

「そうなんだ。これは多分魔法生物の卵だ」


「魔法生物は卵から産まれないのよね?」

「本来はそうなんだ」


「……なぞなぞ?」

「違う。ありえない卵から産まれちゃいけないものが産まれてるかもって話」




アネモネの目が助けを乞うようにウラニアや調査員を見る。どうやら分からなかったようだ。




「ボクらの使う魔力はエネルギーで、魔石は魔力の結晶みたいなもんっすよね?」

「そうね?」

「魔石をうまく加工して完璧な卵の形を作っても、何も産まれないっすよね?」

「うん」



ウラニアが図解しながら説明している。こいつが一番賢者の力の話に慣れてて、現実への落とし込みがうまい。いや私が力を使いこなせてなくて説明も下手みたいじゃん。



「でもこの卵は魔石だけで作られて、何かが産まれてるんすよ」

「何かって?」

「云わば本物の魔法生物じゃないすかね。魔力が未知の生き物になったというか」

「…………」




そしてアネモネは首を傾げてフリーズした。長考だ。




「……それってダメなの?」

「だめっす!絶対だめっすよ!?」




ゾッとした。今日二回目ながら本当にゾッとした。今危うく本当に私の人形が子供を生むところだった気がする。


というか既に私の人形の子供の人形は居るんだった。孫が生まれる所だったかも知れない。




「いや絶対やばいっすからね!?間違いなく普通では考えられない異質な生命体になるっす!意思と体を手に入れた魔力なんてそれこそファンタジーの神様みたいなもんすよ!」


「……じゃあもしかしてヤバいのかしら。その卵。だってもう産まれてるんでしょ」

「そういう話っすね!ヤバいんすよ!重大発見っす!」

「えっヤバい!」




ギャルか?


既に調査員達は他にも重大な破片が無いか必死に探しているし、私は私で真面目にそこらじゅうを鑑定しまくっているのでもうアネモネへの解説はウラニアに任せていた。大体皆には大事な話とシリアス感の共有終わってるし。


なんやかんやで最終的にアネモネの力を頼る場面がある筈だから絶対に詳しい説明は大事だ。




「でもそんなヤバいやつなんて私見たこと無いし、もう死んでるんじゃないかしら?それって大昔の卵でしょ?……あ、でも寿命とか無いわよね魔法生物って」


「……これは勝手に連想してるだけなんすけど、この前アネモネさまって、ありえないほど巨大で大量の魔法生物を流れ星にしなかったっすか?あれガーディアンか何かだと自分は予想したんすけど、結局何の目的にせよシンプルに材料の用意が大変過ぎるとも思ったんすよね」




──えっ嘘、そうつながるの!?繁殖!?えっヤバい、未知の新生命体が繁殖してたら普通にホラーなのでは。


自分的にはなんか事件の裏に居る黒幕的なノリだった。謎のボスとかじゃなくてもうめっちゃ化け物が居る説じゃん。怖。




「なぜか最初にシリアスに突入した人が繁殖を想定してなかった顔してるっすけど、賢者の力の傾向的に常に良くも悪くも現実的な解が用意されてる筈なんすよ。結局対処の分からない謎の黒幕とかじゃなく」


「おいやめろ私より賢者の力を使いこなすな」


「なるほどやっと分かったわ!敵が邪竜で本当の魔法生物と鳥と恐竜なのね!!」


「まだ決めつけちゃダメっすよ!いや待って、なんか理解がちょっとおかしいっすね!?」




まずい。かなり詳しく説明してくれた筈なんだが、微妙におかしな認識をされてるぞ。鳥がまだ敵認定されたままなのもまずい。




「そうか!そういう事だったのね!全部分かったわ!!!」

「あ、あ、だめだよアネモネ!全部分かったは大体ダメ!」




バーンと扉が勝手に先に開いて、再びアネモネがどこかへ飛び出していく。



なんで?




「……」「……」「……」 




取り残された私達。誰も何も反応できず、コメントも出てこない。



おかしい。私ってばとんでもなく重要な大発見をして、ものすごくシリアスに重要な話し合いをしていた筈なんだが。


ヤバいでしょ。言ってみれば新たな命の概念となるエネルギー生命が物理的な体を得て誕生していたかも知れない、超重要案件だ。尚且つ母体にされたと思われるのは古代の死竜兵器と来た。



しかもそれが今私達を悩ませている敵かも知れないという若干まだ妄想レベルの予測付きで。




突然近くの空で「バギィイイイン!!」という馬鹿でかい破裂音が鳴り響く。

皆で直感する。アネモネだと。




ヤバいでしょ。どういう……何がどういう流れなの?今アネモネの中の話の流れはどうなってるの?


恐らく今全てにおいてあらゆる意味で一番やばいのは多分アネモネなんだよね、最近は常に。



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