【長文早口勇者ヤマトの視点・後編】
【長文早口勇者ヤマトの視点・後編】
タリア達が化石の掃除を続けている、南端の海沿いにある教会からしばらく内陸に戻った所にある静かな町。
民家も店もポツポツとある程度で田舎と呼ぶに相応しいのどかな場所に、かしましい王女達と不可視の人形が接近していた。
「ダメだ!人形に空中を高速移動されると俺じゃ捕まえられないぞ」
「一旦様子を見ようよ!穏便に眠らせられるなら本当に任せたいんだ」
「穏便って言葉の意味が俺の世界と合わないんだよ!」
マリウスがここまで嫌がるという事は本当に面倒くさいんだろうなという予感はしている。
というか既に若干俺にも片鱗が見えつつある。土煙を上げながら突進する巨大な影と町の人々の悲鳴で、もう片鱗というか物理的に厄介事が見えてきている。
「うわあああ!」「三姉妹だ!三姉妹王女が来てる!」「様をつけろバカ!」「早く家に入れ!窓を開けるな!!」「ママーーー!!」
山賊の襲撃か?思わず遠くからバフをばらまいてしまった。とてもじゃないが王族への反応ではない。もしかして王女って概念から俺の世界と結構違うのかも。
「タリアちゃんはどこ!?隠してないで出しなさい!!」
巨大な人影が一度大きく飛び上がってから広場に着地し、爆音で命令が響き渡る。
まだかなり離れているが、ようやく目視した噂の王女の姿は……巨大な馬だった。白い巨大な馬のメカに人の上半身っぽいメカがくっついている、分かりやすく言えば大きなケンタウロスロボだった。なにこれ。
「アオエデ様の馬車だあああ!」「皆目を合わせるな!!」「耳をふさげ!話が通じると思うな!!」
これ馬車なの!?
そして本当に町の人の反応が酷い。確か最も次の王に近いとか言ってなかったっけ?大丈夫かよこの国。
「アオエデ王女!なぜタリアの邪魔を!」
突如空中に人形が現れて、キィンという金属音が聞こえる。まずい、既に催眠術用のコインを投げている。
「タリアちゃんを呼び捨て!?誰!?名乗りなさい!!」
「南の中枢に送り返してからじっくり名乗らせてもらうわ!!」
「待ってくれ、アネモネぇ!!」
「マジカル催眠術!」
必死の追いかけっこも虚しく、中央所属の聖女が南の国の第一王女に催眠攻撃を仕掛けてしまう。
もし俺の世界なら国際犯罪の中でもかなり重い大事件だと思う。ただでさえ重罪なのに宗教と政治まで絡む最悪の大事件だと思う。本当にやばい。
まぁ俺も聖女もとある南の王女に不敬罪を積み重ねまくってるので今更ではあるんだが。もし厳しい異世界だったら多分俺の首切られすぎて薄切りハムみたいになってたと思う。
「超高級マジカル障壁ぃ!」
「!?」
「甘いわ人形!第一王女の財力の前にひれ伏しなさい!!」
防いだぞ!?財力で!?
……いやあれは一度見たことがある。でかい家より高いとかいう高級結界じゃないか。ケンタウロスロボが散財貴族バリアを貼ってるんだ。これだから王族は。金は力ということか。
すぐさま反撃に出たロボの武装の一つから巨大な捕縛網が打ち出されて人形を捕まえようとする。
まさか防がれて反撃されると思っていなかったのか網に絡め取られて落下するアネモネの人形。
しかし素材があの粘土みたいなやつだからか、黒い液体みたいになって抜け出したあと、少し時間をかけて体を再構成していく。
いやいかん止めないと。事件を有耶無耶に出来るチャンスだぞ俺。
「ま、待って下さい王女!この人形は勇者とマリウス第一王子が責任を持って回収します!」
「僕の責任!?」
「むっ…!?」
再構成中の人形を慌てて捕獲し、腰につけていた袋の中身を捨てて中にまだウニョウニョしている素体を押し込む。もう変身するスライム生物だろこれ。
「これはこれは!勇者様とマリウス坊や!手間が省けたわ。タリアちゃんはどこ!?」
「僕が国外に逃がしました」
「マリウス!?」
かなり年上っぽい第一王女に対し、平然と適当な大嘘をつく第一王子。
「国境を監視していないとでも思っているの坊や!さあ案内しなさい。わたくしが直々に他国まで連れて行くわ」
なるほど、どうやら第一王女アオエデが国境でタリアを阻もうとしていた手配書の送り主らしい。
賢者の力を持つタリアとの王座争いなんだろうか。どこの世界でも政治ネタは醜いものだ。出来れば絶対触れたくない。
いやでもちょっと待てよ、国宝盗んでビキニアーマーにしたやつが国外追放言い渡されるのはごく当たり前の事であって、権力争いとかそんな高度な話じゃない気もしてきたな。
一体何が正しいんだ。というか誰がまともなんだ。判断が難しすぎる。
「待ちなさいよお姉様ぁ!!」
一瞬遠くで何かが飛び跳ねたと思ったら、突然空からもう一体のケンタウロスロボが降ってくる。
「ムネメ!もう!邪魔しないで!」
「わたくしの方が重要案件なのよ!?タリアちゃんには山程仕事があるの!」
「この非常時に何を!あなたはいっつもそう!」
「いっつもそうなのはそっちでしょ!!」
うわ面倒くさい!
いや違う、唐突におば…成人済みヒステリック姉妹喧嘩を目にしてつい本音が漏れてしまった。
「…マリウス、あちらは第二王女って事か?」
「ムネメ第二王女。もう一つの手配書、タリア王女を今すぐ南の中枢に連れてこい派だね」
「マリウスは第二王女側って事か?最初連れて行く気だったよな」
「あんなのと一緒にしないで欲しい」
「うわものすごく嫌そうな顔してる」
突然始まったやかましい姉妹喧嘩をよそ目に、小声で情報を確認する。二体のケンタウロスロボはお互いに超高級障壁を展開していて攻撃出来ないのか、無駄に暴れつつの口喧嘩だ。
拡声器が付いているんだろうけど、多分元々から声が大きく、甲高く、ヒステリックで、もう何ていうかクソうるさすぎる。
ふと目の端に何か見えた気がして空を見ると、再び黒い点が降ってくる。……三体目のケンタウロスだ。三姉妹って言ってたもんな。嘘だろここからまだうるさくなるのか。
「……あの子の邪魔は辞めなさい愚かな姉さま達。この非常時に何してるの」
「メレテまで!」「しつこいわね!!」
あ、そんなにうるさくなかった。最後にようやくちょっと話が通じそうな人が。
「メレテ第三王女。手配書をキャンセルする手配書の送り主だけど、油断しちゃ駄目だよヤマトくん。分かりやすく言えばノリがアネモネ様に近い」
不安になってきた。
「緊急事態でしょ!」「だからこそなのよ!」「あの子は姉さま達ごときが干渉すべき器じゃないって何度言ったら分かるの」
巨大なケンタウロスが、見えないバリアみたいなので押し合いながら口喧嘩が続いていく。
二人でもとんでもなくうるさかったが、三人そろえば姦しいという漢字が完成する。もうこれ音響兵器だろ。異様に声が通るのが更に最悪だ。近隣住民は皆引きこもって窓も閉めきっている。俺も室内に逃げたい。
「もう分かったろヤマトくん。催眠術に任せよう。それか馬車に侵入して気絶させて送り返そう」
「いや駄目だってば!」
「これは特別な騒ぎじゃない。いつもいつまでもこうだ。何時間もこれを聞いてノイローゼにならない自信はあるかい?」
「……うっ……!」
なんてことだ。たまに居る身内同士で一生ギャーギャー言ってるタイプの人らなのか。聞こえてくるだけでテンション下がるやつだ。
……いや。しかし。一応、一応主張をちゃんと聞いてみるべきでは無いだろうか。まだ諦めるな勇者。勇気を出せ。
「お、王女様方!!すみませーん!俺勇者やってるヤマトと申しますー!」
「あ!?駄目だってヤマトくん!」
手を振りながら近づいて大声で呼びかけると、三体の巨大なケンタウロスの顔がゆっくりこっちを向く。怖い。
「あのー、ちょっと順番に要件を伺ってもよろしいですかね?えっと、自分タリア…王女と連絡とれるんで!」
「あっそうだ勇者!忘れてたわ!」「ちょっと!恩人よお姉様!」「エロイラストはイケメンだったのに割と普通ね」
お、なんだ。意外といけそうだぞ。一人聞き捨てならない反応だったが流す。
「こっちよ!」
「何が!?」
突然どこかに向かってジャンプして走り出す第一王女ケンタウロスアオエデさん。
えっ何?今どういう流れだった?
「あっお姉様!?」「また勝手に!!」
それを追って駆け出す第二第三ケンタウロス。
「話が通じると思うなって言ったじゃないかヤマトくん!追いかけないとマズイ!放っておいたら勝手に何かの話が進んで決定されちゃうよ!」
慌てるマリウスに引きずられて、人形の次はケンタウロスを追いかける羽目になる。
「事前にちゃんと説明しなかった僕が悪いけど、三姉妹王女はかなり賢い。賢すぎて会話についていける人が少ないくらい賢いんだ」
「うわー、独善的な強気天才タイプかよ!」
「まぁそう、かな……?頭の回転がめちゃくちゃ早くてお節介で本質は親切だけど人の話を聞かないから迷惑な親戚のおばさんタイプって方が近いと思うけど」
「なるほどって言ったら俺不敬罪で捕まるやつだよそれ」
「そんなに厳しい国じゃないよ南は」
#################################
かなり海の方に戻ったので内心焦り出した頃、ポツポツと一軒家のある田舎って感じの田舎でケンタウロスロボ達が停止する。どうやら目的地は古い空き家だったらしい。
「勇者ヤマト!」
「は、はい!」
「サプライズプレゼントよ!タリアちゃんの通信にあったやつ!!」
「はい!?どれが!?まさかこの家ですか!?」
「リフォームに国から補助金も出すわ!」
「わー微妙に現実的!」
何?どういう流れ?タリアが俺に空き家を用意してたって事?
「ほら!」
「……はい?」
「分かったでしょ?じゃあタリアちゃん追放するから連れていきなさい!」
「どういうこと!?」
「鈍臭いわねぇマリウス坊やも勇者も!」
「お姉様がいつもいつも端折るから!」
「あの子に干渉するなって言ってるでしょ」
そして再開される口喧嘩。助けてくれ、意味がわからない。
「ヤマトくん、人形はまだ復活しないのか?はやく気絶させよう」
「諦めるなマリウス!コミュニケーション!大事!」
「文章じゃないとまともな交流は無理だよ、この三姉妹は」
「こら!まーだ女との会話が下手なの!?まったく男の子はこれだから!図体だけ大きくなってもほんとにいつまでも坊やなんだから!」
「かわいい女の子ともっと会話しなさいって言ってるじゃない!」
「マリウスくんには干渉していいわ。犠牲になりなさい」
「うざいよぉおーーー!!!」
怒涛の反撃を食らい、マリウスがのたうち回っている。本当に可哀想。女性だらけの親戚付き合いに放り込まれた肩身の狭い野郎の構図を見てるようだ。実際親戚なのかな王族って。いまいちどういう仕組みか分からんが。
「まったく、男ってバカばかりだわ」
「それ現代じゃ凄く悪い差別なのよお姉様!」
「もういいから帰りましょうよ」
はーやれやれこれだから男はみたいなジェスチャーをするでっかいケンタウロスロボ。さすがにイラッとしてきた。耐えろ俺。
「なんで分からないのかしら!タリアちゃんの努力が!ピンチが!」
「すみません、一から順番に、教えて、頂いても、いいですか?」
やれやれジェスチャー。耐えろ俺。
「ここは南の端っこでしょ!」
「…はい」
「じゃあもういいじゃない!タリアちゃんは南から離すのよ!」
「……すみません、何がもういいんですか?」
耐えろ俺。
「本当にバカねぇ!?敵が南から来るなら、タリアちゃんは南の国から避難しなきゃ駄目でしょうが!この国はあの子さえ生き残れば大丈夫なのよ!」
「避難…?追放って避難させるって話なんですか?」
「なんでそんなことも分からないのよ!」
「お姉様が端折るからよ!」
「本当に余計なことしないでお姉様」
あーー。途中からなんか変だなとは思ってたが、そういう感じか。
むしろ一番タリアに過保護で、襲撃が予想される南の国からあいつを強引に離せってのが第一王女の追放手配書の意図らしい。分かるわけないだろ!
マリウスの方を見る。僕にもよく分からないし、いちいち知りたくもないという顔をしている。
「本当に分かってないの!?勇者、王子!あなた達が準備してたんじゃない!中央からの援軍も、教会私兵も!」
「あ、それもう結構進んでるんですか」
「進んでないわけ無いでしょ!まだ数字の把握が甘いのね!?心配になっちゃうわ!」
「もうし、わけ、ありませんね」
ぐぬぬって顔をしている。本当にぐぬぬとしか言いようがない顔だ。
なんでマリウスが苦手なのか完全に理解した。賢くて正しくて言い方がきつくてうるさい親戚のおばちゃん過ぎる。相手も分かってて当然みたいに前提条件を端折ってくるのまで微妙に覚えがあって嫌だ。
「中枢で働いてもらうべきよ!国の中心であの子の力を万全に発揮させるのが結局一番あの子も守れるわ!」
ああー。第二王女。まぁ。正しくはある。いやこっちも過保護かよ。権力争いどうするんだ。
「お姉様達ごときが余計な邪魔をしないのが最適解だってなんで分からないの。あの子を信じられないカスに王族の資格は無いわ」
ああー。第三王女。まぁ。RTAの邪魔しないのが最適解ではある。今度は過保護どころか信仰になりかけてる。アネモネとノリが近いって評されるだけはあって、じんわりと重い。
……えっ、どうしよう。本音で言えばメレテ第三王女の不干渉最適解説が優位になって、上の姉妹を連れ帰って欲しい。正解がどうとかっていうかもう面倒だから。
「勇者ヤマト!」
「はい!?」
突然第一王女がまたこちらに牙を剥く。
「まだ余所者気分で浮ついてるそうじゃない!」
「申し訳ないですね!」
「だから家!観光じゃなく帰る場所の一つにしろって事!分かったでしょ?」
「あ、は、はい!それはなんかちょっと」
「ほらあっちの店には乾燥食品!米!あなたに大事な味でしょ?」
「え、あ、そういう感じ?」
アホみたいな隠せてないサプライズプレゼントはまだ続いていたのか。俺にこの国を守らせる為のものの筈だが、味覚が近い地方の町に家とは恐れ入った。
「ほら!」
「はい?」
「もう戦闘配備は完璧じゃない!勇者が南端に住めば最強の防壁よ!」
「最悪すぎる」
「お姉様最低よ!」
「お姉様は最低だけどあの子はただ勇者ヤマトの為を思ってるだけよ」
めんどくさいよー。感情の持って行き方も分かんなくなってきた。
新しくも古くも無い普通の家にリフォーム補助金付きだってさ。武道の遠征も仕事の出張も賃貸暮らしも慣れてたから別に宿での生活も平気なタイプだと思うんだけど、海からそこそこ近い自分の家って言われると結構嬉しいような気もしてくる。
下心をもっとうまく隠してくれれば大喜びだった可能性もある。思ってても人を防壁とか言うな。
「いや別に家無くても守れるものは守りますけどね」
「やっぱり勇者は駄目ね!タリアと一緒に追放しましょう!」
「うえ!?」
「どっちも中枢で安全に活躍してもらえばいいじゃない!」
「お姉様達は邪魔しないのが最適解だってどうしてわからないの」
なに?なんで?
どうすればいいんだよ。本当に話についていけない。流れの切り替わりが分からなすぎる。
「その程度の浅い思考だから姉を超えられないのよ妹共は!」
ひときわ大きく足を踏み鳴らす長女のケンタウロスロボ。家が揺れる。貰う前から壊れてしまう。
「自己犠牲が癖になってる人間なんて、放置しても仕事させてもダメなのよ!死ぬわ!そこの勇者も、タリアちゃんも!」
「でもお姉様!」「でもあの子は…」
「でもじゃない!ほら、マリウス坊や!わたくしはいつだって正しいでしょう!加勢しなさい!」
ずっと不機嫌そうに黙り込んでいたマリウスが動く。
「……はい。教会に案内します」
「マリウス!?」
まずい、説得されちゃったのか?正解を大声で喋る人間には抗いがたいからな。
「お、おいマリウス。あれも正解だし優しさだが、別に正解って一つじゃないんだぞ。現実問題としてはタリアの力を信じて俺の戦力もある程度使うべきで、どっちも人命優先でありどっちも優しい正解なんだぞ」
「……大丈夫、分かってるよ。一つに囚われるのが一番ダメ。だろ?」
「じゃあなんで?」
小声で確認すると、別に飲まれたわけじゃなく冷静なマリウスのままだった。そうなると余計に意味が分からんが。少なくとも今はまだタリアの邪魔されたくないぞ。結局のところ、あいつ無しで突然の奇襲を防ぐのは無理だ。
「……恐らく、勝手に飛び出した三姉妹を追って側近や専属兵も遅れて到着する。あの改造馬車も特別な試作兵器だと思う。ヤマトくんが言っていたよね、メタ推理を解放したって。僕も今そっちの視点で気が付いた」
「どういうことだ?俺は今タリアが抜けたら絶対守りきれないと予想するが」
「違うんだ。僕もうっかり常識の範疇で邪魔を警戒しちゃったけど、よくよく思い返してみればタリア王女は誰も邪魔できない。第三王女すらまだ甘いんだ。干渉を受けるかどうかの決定権すらタリア王女にあるのを忘れていた」
あ。言われてみればなんかそんなようなチート話だったな。
何かを警戒するように周囲を確かめた後、更に真剣な顔つきでマリウスの内緒話が続く。
「この状況の違う見方に気づいたんだ。僕らは今から最新兵器と権力者と兵を護衛しながら賢者の元へ連れていく。中央からの派兵も教会の私兵もちゃんと準備が進んでいたらしい」
「……まさか」
「冷静に状況だけを見れば、全体の守りを高めた上で、強い戦力と強い権力が今南端に揃っている。そろそろ第二波と言っていたけど、そろそろで想定する期間を思ったより早めたほうがいい。多分数日後には対決かも知れないよ」
……マリウスが予言めいた事をかっこよく言い終わる前に、遠くの空でバギィンという破裂音がした。
「ごめん甘かった。僕はいつも想定が甘い。この甘さで前回も遅れたのに…!」
「俺もだ!状況認識が甘すぎた、走ろうマリウス!」
「あっ!?」
「ちょっと!!何事なの!?説明しなさい!」
「どう見ても緊急事態でしょお姉様達のバカ!!」
駆け出す男二人とケンタウロス達。分かってから振り返れば事前に戦力増加だと気づけた気もするんだが、当事者の内は難しすぎるだろ。Any%RTA動画の操作される側になってみろって話。意味も流れも分からなすぎるんだよ。
タリアに過保護な三姉妹王女が付いてこれる程度に疾走する。あいつもしかして重い女製造機なんじゃないだろうな。いや女だけじゃなく若干マリウスも変な重さ出すんだよな。
賢者の力への信仰みたいな信頼と、辛い境遇が生む同情心と、それでも人助けに奔走する王女の姿って考えると、想像以上になんかやばいのを量産しまくってる予感がしてきたぞ。実際に会うとバカで気軽で親しみやすいのが一番危ないよな。くだらない約束でも守るし。
緊急事態だけどなんかもう色々忙しくて思考がまとまらなくなってしまう。
自己犠牲とか言われたけどさ、仲良くなった友達の力になりたいのって別に正義とか英雄症候群とかそういうんじゃないだろ。
今の俺はもうヒーローになりたいとか義務感とかで動いてるわけじゃないし、異世界勇者ごっこも実際にはあいつに言われるほどもう夢心地で遊んではいない。誰かさんにじわじわ変えられてきたのもあるが、それがいいと自分でも思うから受け入れてきた。
豪邸でもマジカルでもない普通の自分の家が補助金付きで急に生えてくるあたり、本当に夢とか余所者気分をぶち壊してくる。
多分タリアだってそうだろ。自己犠牲なんてするつもりは無いんだ。魔法の世界の現実で普通に生きる俺達は、ただ単に好きな奴らと楽しく一緒に居たいだけなんだから。




