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勇者が隠していた竜



大地が割れ、伝承が目を覚ます。




それは地の底から現れた。


明らかに並の動物とは異なる、建物より大きな巨躯。


明らかに獲物を襲う為の、獰猛な牙。


けたたましい咆哮が響き渡り、暗闇から這い上がってくる黒い魔物。


爬虫類を思わせる頭と、明確に肉食動物だと伝わる口、ただの蛇やトカゲと明確に一線を画すまさかの二足歩行、そのバランスを支える巨大な尾。




それは、まさしく竜だった。




ここの調査は大当たりだった。ヤモリでもワームでも無い。これだ。


人類に天敵に成りうる大型の肉食ドラゴン。




ここまで様々な推測してきたが、本物は一目で誰にでも分かる。なんで空からの襲撃が先で地面からなのかは全く意味が分からないが、これが本物だ。




「邪竜!」

「…!?」




先に駆け出していたヤマトが驚愕してこちらを振り返り一瞬何か言いたげにしていたが、どう見ても緊急事態だ。ベルトを操作して皆にバフをかけ、魔法の鎧を纏い戦闘へと駆け出していく。


私は皆を守る為、咄嗟に広範囲を庇う。国宝ビキニアーマーの遠距離攻撃無効と魔法道具による庇うのコンボは無敵だ。実績もある。少なくとも倒される事は無い。どんな緊急時だろうと、手に届く範囲の命は絶対に守って見せる。




そして、初めて見た本物のドラゴンらしいドラゴンに気圧されたものの、私達は圧倒的に強い。確かに並の動物より巨大で獰猛なのは一目で伝わってきて本能的に恐怖を感じたが、もっと何百倍も大きな化け物を大量に倒してきた後なのだ。



これはインフレ後に突如現れた普通のボス。


それが伝説の存在だろうと、瞬時に臨戦態勢に入っていたアネモネのファイアボールはむしろ手加減が必要なレベルだろう。地上で爆発させるのは本当に本当に危ないんだと散々説明しておいて本当に良かった。




アネモネは突然の衝撃に対し状況を確認するよりも早く近くの岩を砕き、空へ飛んだ。


私の咄嗟の庇うスキル発動は敵への反応じゃない。アネモネの手加減とか空気の壁が本当に大丈夫なのか内心ちょっと不安だから反射的に出ちゃったのだ。




「一式!ファイアー……ボール!!」




どうやら投石型は一式らしい。てことは二式は多分敵を粉微塵にしてファイアボールにする方だね。割と気分で叫んでるっぽいし理解も適当だから、その時々で勝手に名前も変わりそうなのが凄い。




ドゴォオオン!という爆音と共に、細長い円筒状の火柱が天高くそびえ立つ。


一応空気の壁みたいなのはしっかり機能しているようだ。なんでそんなことが出来るのかさえ気にしなければむしろ防衛手段として素晴らしい気もするんだけどなぁ。




『グォオオ!!(拒絶!)』



その瞬間、広範囲に轟いた重低音の咆哮が『拒絶』という呪文にも聞こえた。



気が緩んでいた。そこまでしなくてもなんて甘えた気分でアネモネの攻撃を眺めていた私は、火柱がかき消されて無傷のドラゴンが飛び出してきても何のリアクションも出来なかった。


理解が追いつかなかったのだ。知的天才賢者なのに。




今のは……竜の呪文……?ファンタジーのような竜言語が、竜魔法が実在している?


音は獣の咆哮にしか聞こえなかったが、同時に言葉であり魔法だとも感じたのだ。




一瞬遅れて、テント付近に数人の人間が吹き飛ばされてくる。


ようやくそこで我に返り、予想外の被害が出たことに青ざめるが、それは不自然な空気の繭みたいなものに包まれていて、飛ばされた人間には何のダメージも発生しなかった。


どうやら敵ではなくアネモネが攻撃に先んじて近くに居た歴史調査員達をこちらに投げ飛ばして避難させていたようだ。



酷い着地をした人もすぐ立ち上がると、簡易テント近くに居た人々に混ざって各々に武装していく。



「戦闘準備!」「タリア様を守れ!」「邪竜だ、これぞ邪竜だ!!本当に居たんだ!!!」「資料だと惜しむな、生け捕りできる相手じゃない!」「ここで殲滅しろ!」




なごやかな調査風景は一瞬で戦場になり、調査員は戦闘員になった。どうやら歴史調査で魔物と遭遇するのは定番のようで、誰もがそれなりに腕に覚えがあるようだ。


聖女候補のダークナイト達も既に臨戦態勢で私を守るように陣形を取っている。恐らくアネモネが頼んでいたんだ。



王族だから貴重な人員を割いて守られているとなると効率も気分も悪いが、私が皆を庇えば無敵なのでこれは何も悪くない。何もせず私を守るなって口だけで言ってるようじゃ王には成り得ない。どうせ皆が守らざるを得ない立場になるのなら、守る価値と理由をより強く持つのが最適解だ。



「可能な限りボクの視界を確保して下さい!対象を認識しないと庇えないっす!」



いつの間にやら簡素なゴーレムを召喚したウラニアがその肩に乗って視界を開き、突然脱いで平らな胸部を見せつける痴女になる。


その胸にはなぜか私の遠距離無敵ビキニアーマーのブラが装着されている。パンツは私が履いてるのに。



「あれ!?それ私のブラ!?」

「こんなこともあろうかとブラだけ模造品にすり替えておいたっす!」



盗品を素材にした装備が更に盗まれていた。雇い主の王女のブラを平気で盗むな。



「いやちょっと待って、じゃあ私の上半身ってただビキニのブラを露出しながら白衣を羽織ってる痴女ってこと?」


「そうっす!」


「そうっすじゃねーよ!意味なく王女に露出させるなよ!知ってたら白衣のボタン留めてたわ!!」


「でも下だけ露出は変態っぽいから絶対やめたほうがいいっす!」



こ、こいつ!この一大事にとんでもない選択肢を!じゃあ今の私って下だけ露出してる変態か、意味もなくブラ見せてる痴女にしかなれないじゃん!二択がクソすぎる!




「ロケット……パーンチ!!」

『グォオオオオ!!!(拒絶!)オオオオオ!!!(発射!)』




こっちがアホなことをやってる間にもアネモネとドラゴンの凄まじい戦いが繰り広げられていく。信じられないことに不可視の衝撃波をお互い連続で打ち合っていて、さすがに私も自分達の世界って思ったよりファンタジーなのかも知れないと疑い始めてしまう。




「マリウス!飛ばれるとマズイ!翼のあるやつを頼む!兵の皆、俺達は小型を!!」




巨体に目を奪われて気づいていなかったが、どうやら他にも様々な敵が出てきていたようで、特に大きな翼をもつ竜はアネモネと戦っている巨体とは違う方向性でまさにドラゴンだ。


どう考えても羽じゃ飛べない巨体の方には翼も生えていないが、かといって翼のある方のドラゴンも比較対象より小さいというだけで人間よりは数倍大きい。迅速にマリウス王子が叩き落として逃さなかったのは勇者王子組の咄嗟の大戦果だ。緊急時のパワーアップアイテムが媚薬じゃなかったら完璧だった。



調査員や聖女候補もちらほら加勢に加わっている。どうやら人くらいの大きさで群れをなして戦う感じの肉食竜が居て、ここで絶対に倒さなければならないと判断したヤマトが声をかけながら対処しているようだ。


街の防衛に使われている魔物除けがこの竜達に効くのか全く分からないのを思うと、確かに群れを逃がして繁殖でもされたら怖すぎる。勇者あいつホントに便利すぎて良くない。未知の相手への判断の速さも雑学知識からなんだろうか。




そして戦闘を見るほど確信していく。邪竜とはもうシンプルに人間を捕食対象にしうる肉食竜なんだ。邪竜種とでも言うのだろうか。なんだったんだよヤモリとかウロボロスの難しい話は。


まさかアネモネとまともに戦える生命体が存在していたとは。正直もうなんかギャグみたいな常識外の強さだとカテゴライズしてたけど、敵のインフレも本当に早すぎる。



「タリアさま、地面の中から出てきたあれが警戒していた邪竜っすか?単体の名前じゃなくて、ああいう人間を襲いそうな竜の総称?」


「多分そう。でもなんだろう、人間を襲う竜ならなんでも邪竜って話じゃなくて……」



ウラニアの問いに何か引っかかりが出る。あれが邪竜だと確信しているが、そういう定義か問われると条件が足りないような?


大人しそうな歴史調査員の一人が、発言して良いのか確認を取るように手を上げてアピールしている。


もちろんというように頷き返すと、何やらゴソゴソとノートを引っ張り出してきて見せてくれる。



「賢者様。近年進んだ研究結果から考えて、元々この星には竜族が繁栄していたのでは無いかと思うのです。ここまで大規模なトラップは初めて見ましたが、あれは別世界の魔物や神話の竜といったファンタジーな存在を召喚しているのでは無く、むしろこの星の本来の住人を呼び起こしているのでは無いかと」


「トラップ!?い、いや、この星の元々の持ち主ってほうも気になるけどまずトラップってのは?」


「こういう古代の地層を調べられそうな場所には、もう必ずと言ってよいほど古代の生態を利用したらしき痕跡があって、人の魔力に反応して起動するのか実質的に発掘トラップになっているのです。今までは巨大な昆虫とか古い動物が多かったのですが、大当たりの地層だとこんなことになるとは」



各地での調査報告やスケッチを見せてくれる。巨大昆虫は絶対邪竜じゃないと思うけど同じ枠で出てくるのか。怖すぎる。




「賢者様、自分には他人に答えを教えてもらって生涯の研究を終わりにしたくないという我欲があります。自分自身で調べて見つけたい。そんなこと言ってる場合じゃないのは分かっていますし、自分の今までの研究と知識による予測が今すぐ役に立つかも知れない。なので質問したあと耳を塞ぐとかいうとんでもない非礼を許して頂けませんか」


「もちろんもちろん。いいから早く教えてくれ」



周囲を一度警戒して、話していられる場合か皆で確認する。


私は逆に今すぐこの情報を深く知るべきだと思うので、アネモネに視線を送る。自分に引き付けるような戦闘に切り替わったので視線だけで分かってくれたらしい。聞こえてるわけが無いんだがアネモネなら遠くの会話を聞くくらい出来そうなので、普通に全部通じているのかも知れない。




「……まず前提として、近年の調査結果から考えるとこの星は本来なら竜の星であり、何らかの外的要因で突然滅ぼされたのでは無いかと思われるのです。地域にもよりますが、実はこの星の地面には竜の死体が大量に埋まっているのです」



そうなのかと頷こうと思ったが、変に賢者に答えを与えられたくないのも開発者としてちょっと分かるので、なんでもない感じの相槌で次を促す。


推測段階までたどり着いたのに、そこで私の答えを聞くというチートを使ってしまうと歴史の謎を追う意味と意義を失ってしまうもんね。こんな緊急時じゃ無かったら無理に干渉しないとも。




「つまりあれは古代生物をネクロマンシーで悪用する倫理観カス祖先共の死竜兵器であり、歴史調査が異様に進まない原因はそういった良質な調査地を兵器製造所にしたりトラップ化してきた歴史があるからでは無いかと思っ」


「あーーー!」「うわあああああああああ!!」



しまった。あまりにも突然求めてた大正解を語るもんだからうっかり即反応しちゃった。それだー!みたいに指さしてしまった。人生を賭けた謎解きのネタバレを食らった研究者が悲鳴を上げながら崩れ落ちる。


巻き添えを食らったのか周囲で他にも数人倒れた。



「ごめんね!!」


「い、いえ、証拠が、結局最終的には証拠を見つけないと意味無いですから!自分らはまだやれます!!他にも謎は沢山あるし!!」



偉い。支援はするから許して欲しい。私のうっかりによる無駄な犠牲を生みつつ得た貴重な情報。もう絶対に無駄には出来ない。一気に思考を回す。




邪悪な死竜兵器。邪竜。




こいつらも超巨大ヤモリと同じ魔法生物だ。



そして先程読んだ禁忌魔法に絶対書き加えるべき最悪の魔法を鑑定してしまう。


あれを魔法生物だとすぐ判断出来なかったのは、模造的な疑似生命ではなく本当に生きていた生命の復元体だからだ。強力な竜を魔力素材と組み合わせて復元再生し、更に加護や魔法道具を埋め込んで兵器にする。



信じられないほど邪悪だが、邪悪なのは竜じゃなくて人間だし、これに似た手口を知っている。めっちゃ身近に知っている。



こうなると、まさか勇者作成の本来の姿って、ネクロマンシーも有り得るのか……?実際何度か議題に上がってたけど、「自分達より強すぎる英雄を非道な手段で作ったら、まず自分達が仕返しされるのでは」という問題も解決出来るし、そもそも剣を刺せば普通人は死ぬ。


殺して素体にして操ると考えるとそれはもう最高効率なのでは。正直洗脳を考えては居たけど、敵の洗脳に弱い強力な兵器は怖いし、うっかり洗脳が解けたら逆襲される。でもネクロマンシーは解けたら動かなくなるので反撃もされず安心と。



おいおい、なんかちょっとこう、本当にダメだぞこれ。冗談で済むカスさでは無い。いや誘拐の時点で結構か。うわぁ。




その時、戦闘の方も進展があったようで、ヤマトがなんらかのアーティファクトを天高く放り投げる。



「アネモネ!後でタリアに調べさせたいけど機能も止めたい!」


「はい!」




勇者の依頼を受けたダークナイト聖女はアーティファクトを一瞬目で追いかけて見上げた後、不意に巨大な竜へと突進して頭を思いっきり蹴り飛ばし、人の居ない遠くの平地まで吹き飛ばす。



『これは、硬い、刃』



そのまま一旦空中に着地して、あの粘土っぽくなる魔力素材で剣を作ると、今度は天高く飛び上がってヤマトが放り投げた人の頭部くらいの大きさの丸いアーティファクトを両断……いや一回すれ違っただけで八等分に切断していた。




『グォオオオ!!!』




その途端、重低音の咆哮と共にあの巨大な竜から膨大な量の魔力が円筒状に吹き上がる。凄い。アネモネが魔力的な爆発を先読みして壁を作っていたんだ。


もう少し小さな竜もマリウス王子と第一王子の兵がアネモネの行動の意味に気づいて遠くに吹き飛ばしていたようで、続いて小さな爆発が連続で何度も続く。




私なんにも活躍してないけど、突然の戦闘が突然終わり、静寂が帰ってくる。庇うって言ってもこいつらまず攻撃を一切受けなかったから本当になんにも活躍していない。じゃあただの露出してるだけの痴女じゃん。しかもブラは本当に露出してるだけだよ。




「タリア!こいつらはもう動かないか!?」

「うぇ!?あ、えーと、ちょっと待って!」



ヤマトに戦闘がこれで終わったか確認される。駆け寄ろうとしたら唐突にアネモネにお姫様だっこされていて、恐らく何かあっても即逃げられるのであろう近めの空中から竜の様子を眺める事になる。


特殊な魔法素材で再構成されていた体は殆ど吹き飛ばされ、もう骨しか残っていない。何らかの道具や加護を埋め込まれていたと思われる痕跡が各部の骨にあるが、爆発で吹き飛んだのか証拠隠滅的な機能付きなのか道具自体は見当たらない。




「……ここにあるのはただの古い竜の遺骨だ。骨というか古すぎて鉱石化している。戦闘は終わりだと思う」



最前線で戦ったいたらしい歴史調査員がそれを聞いた途端駆け出して、貴重な太古の骨の保全に動き始める。




「レプリカだ!急にまた戦闘になって破損するかも知れない!まず完全な形だけでも残せるようレプリカ標本の型を急いで作ろう!」


「あ、それアネモネに頼むといいよ」



恐らく魔法道具を駆使してレプリカ標本を急遽作ろうとする調査員に助言して、魔力操作が器用過ぎるアネモネに協力をお願いすると、瞬く間に粘土素材が骨を薄く覆っては剥がされ、次々とレプリカ作成用の型枠が作られていく。


凄い。なんて便利なんだ。やっぱりアネモネにあの魔法素材を大量に渡せる準備をしておいたほうがいい。万能すぎる。




「あ」


「割れてる!また割れてます聖女様!丁寧に!ほんとに!優しく、ゆっくり!!」


「あ」


「雑ぅうう!!見た目は繊細な美少女なのにすっごい雑う!!力加減が出来ないんですか!?」




やっぱり万能では無いかも知れない。急にまた復活して暴れるかも知れないから一旦雑にでもスピート対応して欲しいという思いと、貴重な調査対象をパキンパキン割る実際の光景で皆の心が揺れ動いている。




「おい、おい」



ヤマトが密談したそうに私を少し離れた場所に呼ぶ。一瞬アネモネがこっちを見たので多分密談は不可能だと賢者の能力が訴えている。聞こえてるよねやっぱり。



「タリア、まさかあの骨がなんなのかこの世界の人間は知らないのか?」

「え……!?」




えっ!?知ってるの!?



なんてことだ。魔法の無い世界から来た異世界の勇者がこの世界のドラゴンを知っている……?魔物も居ないって言ってたじゃないか。意味がわからないぞ?




「なんでヤマトが邪竜を知っているんだ?似てる神話があるとかそういう話か?」



両手で顔を覆い天を仰ぐ勇者。あれこのポーズする時って大体ファンタジーじゃなくて解釈違いだの流れじゃなかったか?



「邪竜じゃねーよ……!ほんとにバカ……それは絶対ダメだって……!!ジャンルが違うんだってば……!!!」


「邪竜じゃない!?いやでも私の能力は今までより明確に反応して……」



手で続きを制してくるヤマト。分かってるけど分かりたくないのポーズでもある。




「……あれはファンタジーのドラゴンなんかじゃないんだ。いや竜なんだけど、現実の竜なんだよぉ……」


「本当にさっきから何を言ってるんだ?良く分からんが別にファンタジーのドラゴンだって現実に出たら最終的には現実のドラゴンってことになるだろ」



いつもの嫌だ嫌だのときの表情をしているが、緊急事態の重要案件なのでちゃんと私に情報を伝えなきゃならないと理性に縛られているようだ。難儀な。真面目で賢いのにバカって大変すぎる。




一瞬の無駄な葛藤の後に、意を決したのか重要な情報を開示する異世界の勇者ヤマト。なぜか小声で。




「俺の世界では、あれは『恐竜』の化石で、あの巨大な肉食恐竜は恐らく『ティラノサウルス』の一種だ……!ドラゴンじゃないんだよ……!」




……はぁ!?!?




「わけが分からん!竜って自分で言ってるし、恐ろしい竜ってもうほぼ邪竜じゃないか!なんでそんな大事な情報を知ってて今まで隠してたんだ!?そんなに似てたらどう考えても最初に連想できただろ!!」


「違うんだよお!しない、絶対に連想しないんだ、ファンタジーで恐竜は!異世界のドラゴンは普通なら現実じゃありえないドラゴンなんだよ!!」


「ありえないドラゴンはありえないんだから現実じゃ見れないだろ!」


「うわあああ!!!」



バカが崩れ落ちる。何度言っても現実と夢の区別がつかないようだ。毎回言い負かしてるのに懲りないのが凄いわ。



だが得た情報は凄い。とんでもない新情報かつ重要情報が急に続々と引き出されていく。広く正しく定義された名前を知った事で、賢者の力を持つ知的天才美少女のこの私には「ティラノサウルス」という邪竜の情報が突如として全開示されていく。世界の辞書が更新されたんだ。


石と化してるから化石。外見上は骨でも成分が置換されていて元の骨そのものじゃない事まで異世界人は普通に知っているわけだ。一部魔石化してるわけだけど、魔力が無い世界でこの現象に正しい定義付けをしているのは驚異的だ。



分かってきたぞ。そういうことだったのか。ヤマトも数多の竜種を滅ぼした竜殺しの世界の出身なんだ。この世界の地面に大量のドラゴンの死体が埋まっていて、別世界ですら人類繁栄の条件に竜の殲滅があったなら、これはもう偶然では片付けられない。



きっとこれは邪竜だけじゃなく勇者召喚についてもきっと重要なヒントになる。似た人類が居る世界は似た経歴を必ず持っている。



──人は、竜と相容れない存在なんだ。竜を先に滅ぼさないと私達に似た人間が生まれない。竜を蘇らせれば人類に災いを成す。運命めいた新事実に、知的な興奮まで覚えてしまう。



「違うんだよぉおおおおおおお!!!」




なぜかヤマトは必死に否定しているが。


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