ゴミ
私あまりにも知的天才美少女なもんだから結構忘れっぽいんだよね。
いや本当に。言い訳じゃないんだけど、ほら、賢者って覚えなくても必要になったら全部答えが分かるから、覚える習慣が無いわけよ。
テーブルにずらっと並べられた成果物。私専属の特別研究員ウラニアと、なんか事務的な手続き部分で地味に補佐していたらしい第一王子マリウスによる、超多忙な日々の結晶だ。
どうしようどれがなんだっけ。
「これがヤマトさんが戦闘中に向こう側を偵察してくれてた録画情報っすね」
「あー、サキュバス釣り人が拾ってサキュバス商人がくれた白いやつ」
確かに、何よりもまず情報が無いとどうしようも無いもんな。現状、敵の意図も目的も分からない。そこらへんヤマトは頭が回って凄い便利。
異世界で謎の事件に巻き込まれるパターンに詳しく、対応も反応も早い。あんまり人生で異世界に飛ばされること無いと思うんだけどな。
軽く確認した限りでは暗くて殆ど何も分からなかったが、映っているのは世界の穴の向こう側だ。未知数の塊。私の能力と合わせて可能な限り情報を引き出したい。
「これは時間かけて精査したいから後でじっくり見させてくれ」
ウラニアが頷いて次の道具の説明に移る。
「こっちはヤマトさん用の装備の試作っすね。体の中に埋め込まれた封印から魔力をサキュバス式で取り出すベルト、そのベルトに引き出した魔力で空っぽの武装ゴーレムを召喚して中に入って魔導鎧にするボタンと音声認証っす。」
「音声認証?」
「ベルトのボタンを押して『変身』ってヤマトさんが言ったときだけ稼働するっす。誤爆防止だとかなんとかリクエストがあったんで。今のところは一旦ただの鎧サイズにして、今後可能なら敵に合わせて巨大なゴーレムにも乗れるようにしたいって感じっす。あの時の勇者さまの簡易版っすね」
「うおおおお!ウラニア博士最高!!俺異世界に来て良かった!!!」
なんだろう、凄く合理的で正しいみたいに取り繕われてるけど、異様にはしゃいでいるヤマトの顔が欲望を満たすための屁理屈だと言っている。もう賢者とか関係無くあのアホな顔が全て自白してる。
「ウラニアさん、ゴーレム召喚ってどうやるの?」
「ヤマトさんのお腹の中と一緒っすね。封印しておいて出すんすよ」
珍しくアネモネが興味を示している。そういえばあの襲撃の時ってサイズ差がどうしようも無かったからね。
多少敵を破壊出来たらすり潰した敵の魔力でとんでもない大規模破壊魔法使えるみたいだけど、巨体一体だけとかが天敵で尚且つ勇者だけがそれに勝ててしまうみたいな認識なんだろうね。
認識と最強さが釣り合ってないけど本当にこれ放置してていいんだろうか。いや止めようが無いし頼もしいんだけどさ。
「で、次はこれ。この瓶に入ってる光る砂がアネモネさまが切り札にしてた『純魔力』っすね。ほら、あの宙に浮いていた時にボク達を包んでキラキラ光ってたやつっす」
「純魔力なんて定義、今始めて聞いたけど」
「今適当に決めたっす。雑に言うと水中の含有魔力を気が狂うほど大量に丁寧にろ過して、なるべく他との結合を防ぎながら慎重に慎重に集めたものっすね。本当に気が狂うほど面倒だけど、時代を変える次世代素材っす」
賢者の力でわからないものは大体新しく定義しないとならないものではあるが、純魔力とはなかなか挑戦的だ。今の魔力製品を、混ざりものだらけの低レベルな過去製品呼ばわりするくらいの気合が入っている。
実際水に溶けていたり色々固着して魔石になっているのは純粋な魔力の状態じゃ無いと言えるが、本来不安定で自在に扱えないから魔力とか魔法呼びされているわけで、そんな自在に集めて純度を高めていけるならそれこそ新時代の始まりだ。
……よく考えたらアネモネは既に時代も次元も違うから、アネモネ由来の技術ってそうなるのか。
「私そんな難しいことしてたかしら」
「アネモネさまがやってる事は大体意味わからんくらい難しいっすね!人工の魔石に近いけど、発動結果とか力の方向性が固体化している魔石と違って純粋なエネルギーの物質化に近いっす。だから純魔力。魔力が科学になる第一歩なんで、歴史が変わる発明かもっすね」
「あっまずい!やめてくれアネモネ!ウラニア博士!それ俺の地雷だわ!!魔法は魔法でいいんだって!!わからないから魔法なの!!完全に科学にしたらそれはファンタジーじゃなくてSFなんだよ!」
そして魔法が大好きなヤマトがまたなんか嘆いている。
「お前の世界だって大体どんな魔法も科学だったろ」
「だから嫌なんだって!夢が壊れる!」
「夢じゃなくて現実なんだよこっちは」
まーた始まった。やたら魔法について語る癖に魔法を解き明かすのが地雷って面倒くさすぎるだろ。
「そもそも起きた現象の仕組みを考えるのが科学なんだから、魔法だろうと自然現象だろうと世界の全てが科学だろうが。探求が科学であって、解けてるかどうかは関係無い」
「科学で説明できないのが魔法なんだよ!」
「科学で説明できないものは科学の未解決問題だよ」
嫌だ嫌だと嘆くキッズを無視して話を続ける。
「これで反転魔法の研究も一歩進んだっす。明後日までにはちょっとした試作機作ります。まず魔力の純粋な姿をボクらは思ったより理解していなかった。こんなにエネルギーそのものだったとは。ある意味アネモネさまは真の魔力使いで、本物の魔法使いっすね」
私魔法の反転でそんなに難しい事してるつもり無いんだけど、これに携わっている人は本当に皆苦労しているようだ。申し訳ない。
「タリアさまもアネモネさまも『え、わたしそんな凄いことやっちゃったかな?』みたいな顔するの許せないっす。それ本当はボクが一番やりたいやつなのに」
「わかるー!分かるよ博士!言うて俺から見たら博士も凄すぎるからドヤってもいいぞ」
「きゅひひひ!そうっすか!?ボクも!?」
「笑い方すご!さすがにそれで感情無いキャラも自称するのは絶対無理だぞ!?」
「なぜ知ってるんすか!?」
なんか急に元気を取り戻したヤマトとウラニアがキャッキャしてるが、これも無視して次に行く。
「で、最後のこれは何?アーティファクト?」
「色々あって僕がダンジョンの奥で拾ってきたものだね……」
事務作業でやつれた顔のマリウス王子が静かに呟く。ヤマトの方が事務適性も高いらしく、勇者に手伝われると余計に頑張りすぎてしまうようだ。
なんで第一王子が必死に人脈やら事務やら頑張ってるのか分からないが本当に健気で便利なやつ。勇者への愛が重すぎるのでは。
「うーん……魔石に覆われた記録媒体……か?」
ここは完全に私の出番だ。鑑定で私の右に出るものは居ない。
アーティファクトってのはそのまま人工物の事で、どちらかというと太古の人工遺物の事をそう呼ぶ事が多い。どうやらヤマトの世界でも全く同じ呼び方がされているようだ。
勇者召喚も似たようなもんだけど、アーティファクトは今の常識的な道具と違いたまに飛び抜けた品が出てくるので、ダンジョン探索とアーティファクト発掘を生業にする冒険者もいる。
なんで古臭い道具なのに性能が飛び抜けてるのかは最近分かってきた。倫理観が違うからだね。
「それ多分スライドだぜ。伝わるかな、幻灯機。俺の世界にも昔からある簡単な映写機用のフィルムセットだと思う。」
「おいバカ勇者!ここで活躍出来なかったら私の立場がおかしくなっちゃうだろ!!」
こいつ!平気で人の活躍を!!こういうとこあるよな勇者は!
「魔石ってどうやって出来るのか知らないけど、多分これ意図的な保護とかじゃなくて長い年月かけて覆われたっぽいよな。どういうことなんだウラニア博士?」
「自然洞窟じゃないダンジョンは大体奥で何かあって出来るものっすからね。濃い魔力の吹き出してくるポイントが近くにあったんすよきっと。それが色々な物質と結合して魔石になるんで、このアーティファクトはその結合の核になっちゃったわけっすね。」
私を無視して話を進めるヤマト。許せん。魔法の科学扱いを嫌がる割にすぐ学者ノリになるの意味わからん。
私達があれこれ抗議したり語っていると、ズシズシ近づいてきたサキュバス格闘家のライラさんがアーティファクトをつまみ上げてコンコンと叩き、面倒な難しい話題から逃げて離れていたアネモネに渡しにいく。
「姉御、中身を傷つけず綺麗に取り出して欲しい」
「わかったわ」
えっいやちょっと待って、と言おうと思ったらもう抜刀して斬り終わってた。後からキキキンって音が重なって聞こえたので多分凄く連続で斬ってたんだと思う。
魔石はね、方向性を持った高エネルギーの塊みたいなもんだから物理的な加工は大変なんだよね。状態を維持しようとする力が強いというか、要は固くて重くて粘る。
アネモネが剣を作ったりしてるあの粘土魔石みたいに、魔力を通すとその魔石の特性によって性質が変わるから、それを見極めて丁寧にやるんだよってドヤ顔で説明しながら私が加工したかった。その鑑定も私の得意分野だから。
勇者と聖女が私の活躍を奪うよ、助けて。
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上司サキュバスのご厚意で暗幕のある大きな会議室を貸し切り、防音魔法やら何やら一応なんかやばい情報が出ても大丈夫な状態にして、さっそくアーティファクトの中身とヤマトが撮影した情報を交互に詳しく確かめていく。
アーティファクトの方は別に魔法道具でもなんでも無い本当にただのスライドで、光を当てるとスクリーンに文字が映し出されるだけだった。
未知の言語でどっちが裏か表かも分からなかったが、さすがに今度こそ知的天才美少女の出番だ。私に読めない文字とか無いからな。
「えーー、『作業標準書』………?」
「あ、俺もう萎えたわ」
「一応僕らの苦労の結晶だからね。もうちょっと耐えようよヤマトくん。」
最初はワクワクしてそうだったヤマトの目からキラキラが一瞬で消えた。まぁ私もテンションは下がったので分からなくも無い。
これ大昔にここらで働いていた人達用の作業マニュアルだね。魔法道具でも無ければ消えた文明の神話でも無い。いや歴史の専門家とかは大興奮するやつなんだろうけどね。
一応ぎりぎりウラニアとマリウス王子は地味で真面目な学問にも強いので、頑張って対応しようとしてくる。
「なんの業務なんすか?」
「うーんとね、『衛生管理責任者』……『清掃業務に用いる道具と経費』……割と作業者の安全とか気にするホワイトな清掃業務の標準書だ。素手でゴミ触っちゃダメだよとか色々書いてある」
「……ボク、あんまり興味が……」「僕もさすがにちょっと……」
ボク組二人もダウンした。ちなみに私のすぐ隣に居るアネモネは真面目な顔で声は聞いているものの話は全く聞いていない。
ここに住んでいるサキュバス達の意見も参考にしたかったので、失礼ながら見た目の割にすごく賢いライラさんにも混ざってもらっていて色々話を聞くつもりだったんだけど、掃除のマニュアルを掃除してたんだろうなくらいの感想しか出てこないよね。
「うぅむ……我もあまり興味無いが、サキュバスには重要かも知れん」
「えっそんなことある!?単に何かゴミ収集したり掃除してた会社の作業標準っぽいよ?」
「太古のゴミ関連施設は歴史家サキュバスが真っ先に狙う。だがそんな遺跡は周辺に無い。そして作業標準書があって作業場が無いわけも無い。不自然だ。」
おおーという顔で見る私達。ヤマトだけが険しい顔をしはじめたのでもしかすると世界単位で常識に違いがあるのか?
「我が思うに、この世界の人類は遺跡や遺物が極端に少ない。歴史の跡が足りない。勇者伝説なども酷く曖昧で神話も童話も雑だ。多分かなりしっかり調べたほうが良いぞ、人の生きた証であるゴミは。」
「この世界の人類……? ライラさん、もしかしてサキュバスって俺と同じ様に別世界から来たのか?」
「大元は夢の世界とか精神世界みたいなマジカルな住人らしいな。もう完全に物質世界に適応していて今は隣人扱いだが、昔は同じく外来のゴブリンやオークと共に魔物と呼ばれていたらしいぞ」
「ゴブリンとかも異世界転移キャラなの!?」
「普通に居る普通の動物を魔物とは呼ばんだろ」
いやどうみても別世界から来てるだろ魔物は。明らかに進化の過程が違いすぎる。自分が異世界人なのにもっと異世界っぽいやつらに驚いてるのはなんなんだ。
「我らがここに住み着いたのは恐らくさっきの魔力が吹き出していたっていう話に関係があるはずだ。そこそこ新しそうな文明の道具が大きな魔石に覆われるほどエネルギーが放出されている土地という事は、サキュバスなら住んでるだけで栄養補給出来るわけだからな。」
なるほど言われてみれば合理的だ。何事も理由があるもんだね。そんな大事な場所をエロトラップダンジョンにしちゃったんだ。まぁサキュバスだしそれも自然で合理的か。合理的かなぁ?
「……おい、タリア、この世界の大元の住人は誰なんだ?」
「え?」
認識としては自分達なんだけど口が即答してくれなかった。あれ?
「えっ、急にホラーっすか?実はボク達もヤマトさんの世界から来たみたいな?」
「凄く嫌だが、ここが俺の世界の超未来だったとかいうパターンもありがちではある。ただ他の魔物も異世界から来たというなら少なくとも異世界は確実にあって、異世界への移動方法も異世界召喚も確実にある。遺跡が少ないなら、自分達は最初から居たと言える証拠も無いんじゃないのか?」
うわ。別世界者の視点怖い。確かにダンジョン踏破でもしないと遺物や遺跡ってなかなか無いんだよな。
そうか、ヤマトみたいに魔物の居ない平和な世界だと歴史も安全にがっつり調べられるんだ。自分達がどこで生まれてどう生きてきたか知れるのってすごい。分からないのが普通だから、外野に言われるまで気にしていなかった。歴史を完全に把握してる世界もあるんだ。
……無言の圧を感じる。ヤマトによる、『言わんとすることは分かるか?』という圧。
段々嫌な気配がしてきた。急にヤマトだけ険しいシリアス顔になってた理由。
──最悪の場合、私達は異世界を行き来出来る侵略者の末裔で、良い世界に移住出来たら資源や人材を異世界から誘拐して調達し、不要な『ゴミ』は別世界に不法投棄してたクソ野郎だったのでは、みたいな話だよね?
いやそこまでは言われてないんだけど、少なくとも実際に勇者は誘拐していて、今『ゴミ』の行方を問われていて、この世界の元々の住人だと証明する手段も無い。
作業標準とかいうから気が抜けて適当に見ていたが、この流れは本当にまずい。既にまぁまぁ倫理観を疑われている系の野蛮な人類なので、せめて別世界へのポイ捨てだけは……!
急に冷や汗をかきながら作業書の続きを詳しく読んでみる。頼む。仕分けしてリサイクルしててくれ。頼む。
「……『第一種危険物』、えーっと……『封印作業書を参照』……『廃棄魔法』……えーーっと……いや、別書参照だな!残念、ゴミ処理は別書だ!」
「おいタリア。危険物ってとんでもなく集まりすぎた魔力とかもそうじゃないのか?」
「残念ながら種別も別書だから詳しくは分からないな」
まずい。ご先祖の倫理観が。賢者の力がヤマトの指摘を肯定している。
「アネモネ。俺の儀式に使った聖剣ってなんで封印されてたんだ?」
「えっ!?ゆ、勇者様の儀式を不要な時にしない為かと……!」
「凄まじい魔力が籠もってたとか言ってなかったか?というかそれで俺が膨大な魔力を使えるわけじゃん。気軽に触れたら危ないよな?」
「は、はい。」
まずい。本当にまずい。賢者の力がひたすらヤマトの推測を肯定している。私は今必死に自分の力に『この世界の人類はどこから来たのか』問うているんだけど、無駄な豆知識が大量に脳内に流れるだけで、ヤマトの話にしか分かりやすい答えが来ない。この能力ってばご主人を贔屓する気がない。
くそっ世界とか人類みたいなクソデカ主語だと定義が曖昧すぎるのか?
フィクションの神話とか単細胞生物の成り立ちとか雑多な答えを沢山知っても何の役にも立たん。私の質問が下手で、成り立つ答えが多すぎると情報が洪水を起こすわけよ。
全知って最強なんだけど、文字通りいちいち全部を知らされちゃうとノイズだらけで邪魔なわけ。そこまで聞いてないんだよ。意図を汲めよ意図を。常識的な一つの答えだけでいいの。誰も霊長類の分類とか聞いてないわけ。
自分の力ながら、賢すぎるやつってどうしてなんでも無駄に難しく捉えるんだ。流れで分かるだろ。
というか、こんなに答えが分岐するって事は、もしかして私達の祖先って複数の他世界との混血とかなのか?
「……おいタリア、もう一度その作業標準を全文きっちり翻訳してくれ。どこに『危険ゴミ』を入れて、どこに捨てるのか、俺にはちょっとだけ心当たりがあるぞ?」
「……なあヤマト、もし、もしもだけどさ、人類単位で過去からとんでもない外道行為をやらかしてしまっていた場合ってさ、詫びってどんなレベルになるのかな?」
例えば異世界の人間を圧縮封印ゴミ袋にして小さめの異次元穴にポイ捨て出来るようにするみたいな外道とか。
勇者召喚は明らかに戦闘を想定してるので全く同じ仕組みでは無いと思うが、どちらかがどちらかを応用してる疑いはある。そして倫理観無いやつが一番身近で一番やってそうなクソ行為と言えばゴミのポイ捨てだ。
少なくとも、人を誘拐して中に色々詰めて利用する原型がゴミカス式ゴミ処理だった可能性は非常に高い。
「いやいや、全然、全然責める気とか無いぜ。再発防止は必須だが元々皆そのつもりの良いやつだしな。当事者じゃない遠い子孫に詫びろとか理不尽な事言っても仕方がない。……ただ本当に世界レベルでの外道行為をしまくっていた場合は、いつか突然何者かに襲われたとしても攻撃される理由を気にする必要ないかもな?」
あっ、ヤマトの視線が珍しくちょっと冷たい。アネモネが教会の老人を嫌いな気持ちがよくわかった。負の遺産の責任を背負うの嫌過ぎる。
「まだ逆転の目はあるぞ。タリア達だって元々の住人じゃないかも知れないじゃないか。俺と同じく誘拐されてきて何かされた強化人間の末裔とかさ。」
「どっちにしろお前の件で実行犯になってるから共犯でダメじゃないか?」
「あ、私死んでお詫びするわね?」
しばらく話についていけなかったアネモネが唐突に流れを理解して久々にメンヘラしていた。
ずるいけど私が抱きつけば無理して私ごと貫いたりしないはずなので、背中から手足を絡めておぶさっておく。
「……!か、軽すぎる!儚い!かわいい!アッ息が!耳に!」
「キュートアグレッション!」
急に興奮するアネモネとライラさん。怖い。
「フーちゃんで撮影した映像も改めて慎重に確認しようぜ。……向こうから開けられたんじゃなくて、元々はこっちから開けた穴かどうかという疑いも踏まえてな。」
こいつまた勝手に魔法生物に名前つけてる。
「私達って認識的には突然襲われた被害者なのに、勇者から始まっていろんな情報を知れば知るほど気まずくなっていくの本当に嫌だな。」
「別に俺は怒ってないし分からなくもないけど、アネモネが凄いのはそこの切り分けだよな。どんな事情でも加害は加害として迷わず背負ってる。敵にも味方にも自分にも容赦がない。」
「確かに。偉いよアネモネは。」
「あ、えっ!?えへへ!?死にたいけど生きてて良かった!?」
おぶさって撫で回す私と正面から褒めるヤマトに挟まれて聖女がバグってる。言われてみれば確かにそういう部分は聖なる女だよアネモネ。
私も逃げるわけにはいかない。
ヤマトが向こう側を撮影した筈の、白い魔石に改めて向き合う。
情報だ。とにかく情報を増やしたい。私達は知らなければならない。自分を守るためにも、他者を傷つけない為にも。




