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 ……はい次、パターン168。


――パターン168了解。座標固定……完了。±(プラマイ)3の範囲を類似検索中。


 ……168、イ・ロ・ハ。

   

――橋本さん? 語呂で遊んでないで、もっと真面目にやってください。

  

 い――いいじゃんか別に……。ていうか、いくら手掛かりが無いからって、座標の総当たりは非効率だからやめとこ? って、あれだけ言ったのに……。

 

――はいはい、やりますよ? 候補座標へアドレスを一斉送信。

  

 アドレス……送信完了。

 それらしい反応……無し。ほらぁ! やっぱり無理なんだって!


 あーもう無理、おじさん疲れた、もう限界。

 ちょびっとだけ休憩……! 戸森(ともり)ちゃん、アイス取ってきてアイス。ほら、この前買った高いやつ。

  

――もぉ……私も一個貰いますよ?

  

 ミルクはダメ!! 絶対にダメだからね⁉️ それ以外なら……まぁ、一個だけなら……。


――うるさいなぁ……分かってますって。

 


 最近、なーんか冷たいんだよなぁ戸森ちゃん……。


 ……ん? なんだろ、波形に変なノイズが――。

 【ReedOnly】――読み取り専用……って、えぇ!? ちょ、戸森ちゃん!! 来た!! 来たよ!! 繋がってる!! ねぇ戸森ちゃん!? ねぇってば!!

 

 聞こえてないし……。



 えっと、ごめんね。観測者君……でいいんだよね?

 声しか聞こえてなくて、多分何がなんだか分かんないと思うけど、申し訳ない……。実は、まだこっちの朗読補助プログラムの準備が全然出来てなくて――。

 

 くぅ……こんなに早く繋がるなら、QX5キューエックスファイブから取り外したやつのスタンドアロン化を優先しとけばよかったな……。

 

 あ、そうか……自己紹介、しないとだよね。

 僕は橋本(はしもと)って言います。キミにこんなふうに自己紹介するのは何時以来だろうな……。また話せて嬉しいよ。


 って言っても、覚えてない……よね?

 ……そりゃそうか。すまん、変な事聞いた。忘れてくれ。


 悪いんだけど、もう少しこの分かりにくい状態で辛抱してくれるかな? 寝ずに作業すれば、多分三日くらいで実装できると思うんだけど……。

 

 戸森ちゃーん!! ねぇまだ!?

 ダメか……そりゃそうだよな、冷蔵庫は上の階だし――。



――橋本さん!! 此方イロハです。もしかして、観測者さんと繋がったんですか!?

 

 イ――イロハちゃん!? なんだ、まだ聞こえてたのか……。うん、今しがたね。

 って、んー……困ったな。ちょっと混線してきたぞ?

 

 ……よし、こうなったら、僕が人力朗読補助プログラムとして、出来るだけ今の状況が分かるように説明するから、観測者君も想像力をフルに使ってついてきてね!?

 

 えーっと……今僕は真っ白な研究室――だいたい学校の教室くらいの広さ――に一人ポツンと座ってて、さっき聞こえたのはダイブ中のイロハちゃんの通信音声だ。

 部屋には長机とパソコン、それから研究資料がギッチリ敷き詰められてて――って、なんかまた一段と散らかってないか? 掃除しろよな……まったく……。


 それから、僕は白衣を着てて、黒縁の丸メガネをかけてて、髪は七三分けのツーブロックで……。



 ……あれ、もしかして、僕の文章力、低すぎ?

 

 

――橋本さん……? なんか、また太りましたか? ダメですよ? いくら好物だからって、アイスばっかり食べてちゃ――。

 

 イロハちゃん!? 大人っていうのはね!? ストレスと戦うために糖分を接種しないと生きていけないの!! 分かる!?

 

――橋本さん、ほら、朗読朗読。

 

 あ、えっと……。んぁあもう!! 人力とか無理ぃ!!

 

――私、代わります! こっちに通信をそのまま送ってもらってもいいですか?

 

 か――構わないけど、イロハちゃんをマウントしてるQX5には、まだ朗読補助プログラムが……。

 

――私と観測者さんなら、そんなの無くたって大丈夫です。今までもずっと補助無しでしたから……。それともう一つ、お願いが――


 お願い……?

 

――えっと……私が合図するまで、その……二人きりにしてもらってもいいですか?

 

 ……え?

 あぁ!! ごめん!! うん!! 分かった!! 気が利かなくてすまん!! どうぞどうぞごゆっくり!!



 ……という訳だ、観測者君。

 このまま通信を保留してイロハちゃんのほうに繋いでおくから、何時も通り、”ページをめくって”先に進んでくれ。


 最後に一つだけ……。

 キミには、本当に感謝してるんだ。キミが居なかったら、イロハちゃんは今頃――。

 観測者君からすれば、何の事だかさっぱり分からないかもしれないけど、お礼を言わせてほしい。本当にありがとう。


 こうやって、もう一度一緒に仕事が出来るのも何かの縁だ。頼む、また彼女の力になってやってくれ。

 

 それじゃ、また今度ね。

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