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番外編   ローレンス家 セリーside


 「お母さん!お父さん!お帰りなさい!」

 「お帰り」


 僕は数年前に結婚したかつての両親の子供だ。昔の両親は聖女と勇者として結婚し、殺された。当時、19歳、僕達は1歳だった。



 絶対にもう一度会うんだ。会うまで死ねない。両親のコネクションで竜に15歳まで育ててもらい、そこからは時間を止めてもらっていた。その中で僕達は青竜から加護を受けて、看破の力を手に入れた。


 「ただいま」

 「ただいま、セリー、レイラファール」


 でもその力は殆ど使っていない。お母さんは幻影魔法を使わなくなったから。その分、ボロボロ感もよくわかるが。


 「お母さんもお父さんも、今日何かあったの?」

 泥の付いた服で帰ってきた両親。

 「竜3人組にボコボコにされたんだよね」

 「うん。僕は氷竜しか相手できなかったけどそれでもヤバい。勝てない」



 最近は黒竜、赤竜、氷竜の3人が騎士団に入り浸っているそうだ。

 自慢じゃないが、僕達の両親はとても強い。それ以上に竜が強い。それが凄く気に入らない。

 僕の一番は2人なのに。


 「ん〜〜〜!疲れた!」

 「騎士団って意外と書類仕事多いもんな」

 2人の言葉にピコンとセンサーが鳴った。


 「お母さん、マッサージするよ」

 「僕も父さんのことマッサージする」


 「あ、ありがとうセリー」

 「じゃあお願いしようかな」


 こんな時こそ役に立たないと。

 「気持ちぃ」

 「だね〜」


 好評みたいだ。初めこそ僕に嫉妬の視線を向けてきたお父さんだけど最近はそれも無くなった。4人で出かけたこともあるし家具とかも家族でお揃いか色違いにしている物が殆どだ。



 多分お母さんが徹底的に甘やかしたんだと思う。自他共に認める溺愛具合だし。

 「あ、そうだ!私達明日から一週間、休み取ったから」

 「明日はセリーとレイラファールの誕生日だから今年も家族だけでお祝いしたいと思ってね」


 「本当!ありがとうお母さん、お父さん!」

 「僕も、嬉しい。また4人でお祝いできる」

 こうやって、毎年恒例の行事として誕生日は必ず全員で祝っている。年に一度しか無いことだし普段激務の2人の息抜きにもなっているようだ。


 翌晩、4人だけの夕食が始まった。一日の半分以上家にいない両親のために最低限のことをしてくれる使用人はいるが基本的に誕生日当日は気を遣ってくれているのか用が終わったらすぐ4人だけにしてくれる。


 「……!」

 「ピザ…」


 運ばれて来たのは僕達が一番好きなピザだった。去年は鶏肉だった。唐揚げも好きだし美味しいけどやっぱりピザ。喉がゴクリと鳴る。


 「ふふ、食べて良いよ」

 「「いただきます」」

 あ〜〜!カリカリなのにフワフワでチーズと蜂蜜の相性が!


 「クワトロフォルマッジっていうらしいよ。色んな種類のチーズをたっぷり乗せて蜂蜜をかけるピザ」

 「気に入った?」

 「美味しい!」

 「僕も、好き」



 ピザのしょっぱさと蜂蜜の甘みが最高に良い。

 「ここの料理人達はやっぱり腕が良いね」

 いくらでも食べられるけどもうこれで最後らしい。まだ食べたかった…。


 「このくらいの量が丁度良いよ」

 「そうだね。これから運ばれてくるもの食べられなくなっちゃうからね」


 さっきとはうって変わって甘い匂いがしてきた。

 「わあ…!」

 「フルーツタルト」

 お母さんとお父さんは生クリームみたいな甘いものが苦手でここで出るのも甘さ控えめの料理ばかりだが色々なアレンジが加えてある。


 「セリーとレイラファールが育ててた果物で作ったみたいだよ」



 普通なら何年もかかるけど魔法の練習がてら一気に成長させてみた。僕は割と大雑把な方なので成長だけさせて果物はレイラファールが育てていた。僕は一年足らずで収穫できる野菜を育てているからサボり魔ではない。


 「こんなに美味しくなるんだな」

 「葡萄の酸味が丁度良い感じ」

 喜んでもらえた。良かった。頑張って育てたから凄く嬉しい。



 聖魔法で育てたから傷を癒したり疲れを軽減させたりすることができる。一週間はあるからその間に普段の疲れを取ってほしい。


 「「ごちそうさまでした」」


 手を合わせていつもの言葉を言う。

 「ちゃんと2人に誕生日プレゼント用意したから後で開けようね」

 「何とか用意できたんだ」


 片付けが終わったら共有ルームに直行だ。楽しみで足取りは自然と軽くなる。

 無表情がデフォルトのレイラファールも口元が緩んでいる。



 「お待たせ!」

 「大して待ってないから平気だよ」

 部屋に入るなりお母さんの膝をゲットする。一瞬厳しい視線を送ったお父さんだけどレイラファールが自分の膝にお父さんを乗せたことで大人しくなった。

 年が近いのとこちら側が年上ということが原因だと思う。


 「プレゼント持って来たよ」

 そう言ってお母さんは何も無い筈の空間から箱を二つ取り出した。亜空間に収納するの、強いな。


 「?」


 レイラファールは凄く大きな箱だったけど僕の方は掌サイズだった。レイラファール、何を頼んだんだろう。


 「開けても良い?」

 「うん、開けて」


 「格好良い…」

 掌サイズを開けると中には装飾を施された懐中時計が入っていた。


 「時計自体はこっちで作れたんだけど動かせないからハルイお兄様に頼んで魔道具化してもらったんだ」

 「ありがとうお母さん!凄く嬉しい」

 「気に入ってもらえて良かったよ」

 「レイラファールは何を頼んだの?」


 大きな箱の中身が気になって仕方がない。

 「キャンパス」

 キャンパス?白紙の?何に使うんだろう。


 「父さんと母さんの肖像画描いてある」

 「結構恥ずかしいんだね、ああいったのって」

 「見たい」


 すぐに見せてもらうと欲しくてたまらなくなった。どこに飾るんだろう。


 「ここに飾るからお前も見にくれば良いだろ。僕から奪おうとするな」

 共有ルームに入り浸っても良いだろうか。いや、駄目と言われても入り浸るな。



 僕は、いや、レイラファールもだけどお父さんとお母さんのことが大好きなんだから。


今回の登場人物

・セリー・ローレンス(21)

・レイラファール・ローレンス(21)

・セレーネ・ローレンス(19)

・アレクセイ・ローレンス(20)

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