番外編 アリス×カイリ アリスside
私が18歳、カイリ様が21歳になった時、私達は結婚式を挙げた。セレーネお義姉様とアレクセイ様の結婚式と同じくらいの大規模なパーティーだった。
ティアバルト王国の王族に男児はいない。国王であるお父様に兄弟もいない。
つまり、王位継承権があるのは私だけ。カイリ様は王宮入りしてからも直属騎士団の第三騎士団長としての仕事をしながら元々やっていた勉強に更に力を入れた。
私は昨日、カイリ様の勧めもあって騎士団の見学に行った。
その時は守護竜である赤竜、バークレイ領に加護を与えている黒竜、セレーネお義姉様と契約した氷竜、名前だけでもインパクトのある3人が訓練場に来ていたのだ。
各団の団長と副団長全員でかかって来いとのことでカイリ様も戦っていた。16対3の圧倒的に有利だった騎士団のトップクラスでも惨敗。
最後まで残ったのは第一騎士団長とカイリ様だけ。その2人も3人に勝つことは叶わなかった。
カイリ様は氷竜に勝てるくらいの実力はあったがあとの2人が強すぎたのだ。氷竜が倒れそうになると必ず他がサポートに周り、先に体力が尽きた騎士側が負けたのだ。
「無理。強すぎ」
そう言っていたので氷竜に連続で勝てるセレーネお義姉様は本当に凄いと思う。
翌日も私は見学に行っていた。その時はクルーレス様と結婚したティアも来ていた。
「あ、アリス様」
「ティアも来ていたのね」
「はい、クルーレス様の訓練を見学しに来ましたの」
訓練場の真ん中には昨日の3人とセレーネお義姉様とクルーレス様が立っていた。
これから2対3で勝負するそうだ。騎士団最強と言われているペアと竜3人。こちら側は圧倒的に不利だろう。
ついに試合開始のゴングが鳴った。審判はカイリ様だ。
「凄い…竜が押されている……」
試合開始早々、2人は息のあった連携プレイで次々に攻撃を始めた。
クルーレス様は赤竜の相手をして絶対にサポートに回れないように、セレーネお義姉様は黒竜の相手をしながら氷竜の体力を確実に削っていった。
カイリ様は面白そうだから審判をやると言っていたが本当は強い人の動きを一番近くで見るためなのではないかと思う。
試合開始から数時間、遂に氷竜が倒れた。カウント10で1人脱落だ。
「ここからが一番キツいですね」
「ええ、竜が楽しそうに笑っているわ。これは徹底的にやるでしょうね」
竜の攻撃が速くなった。2対2だが既にこちら側は相当な体力を削られている。更に実力を上げた騎士団最強ペアをここまで疲弊させられるのは恐らく彼らだけだろう。
セレーネお義姉様の夫であるアレクセイ様は「偶にセレーネが怖い」と言っている。確かに純粋に楽しむ2人は見方によっては怖いだろう。
最早病的に戦いを愛しているような気がしないでもない。
「お、終わりましたね」
試合開始から何時間経ったかわからない。日が傾いているので5時間は経っているだろう。遂に試合が終わった。
「負けたぁ〜!」
訓練場の床に足を投げ出して叫ぶセレーネお義姉様と何故か喧嘩を始めた竜とそれにドン引きするクルーレス様。中々にカオスだ。
ただ…
「「明日も勝負したい!」」
と言う2人も凄いと思う。
「私はクルーレス様のところに行ってきますね」
「じゃあ私もカイリ様のところに行こうかな」
そこで私達は別れた。
「カイリ様!」
「ああ、アリス。もう遅いのに帰ってなかったんだね」
「当然ですわ!私はカイリ様と一緒に帰るのですから」
「ありがとう」
ドシュッと撃ち抜かれた気がした。今の笑顔は反則以外の何ものでもない。
「それにしても、あれは凄かったな」
「はい、私も見ていましたが凄かったです。人間ってあんなに動けるのですね」
「あの2人は限界知らずだからね。
6歳で上位魔物倒したセレーネとやり合えるクルーレスも凄いし俺が苦戦した氷竜に黒竜の邪魔を掻い潜ってダウンさせるセレーネも凄い。兄としても、騎士としても、情けなさこの上ないって感じだよ」
少し眉を下げて笑うカイリ様。成人男性に言うべきではないのだろうけど、可愛い…!
「明日もやるってさ。俺は明日勉強しないといけないから行けないけど」
「私も王太女教育がありますからね。明日は一緒に頑張りましょう」
「ああ。アリスが一緒なら頑張れるよ」
皆様、お聞きになりました?今の言葉。
私の夫は可愛くて格好良くて私のことが大好きなのです。本当に、私もそんなカイリ様が大好き。
今回の登場人物
・アリス・セレスティア(18)
・カイリ・セレスティア(21)
・ティア・バークレイ(18)




