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37,見つかった王族 ウィルバイツ王国side

久しぶりのウィルバイツ王国sideです。


 魔物の被害が拡大したウィルバイツ王国王都。既に騎士貴族平民合わせて沢山の人間が死んだ。


 王位を継いだハルトナイツ、王妃となったパルレラが作戦も立てずに騎士を動かしたことで被害が拡大したのだ。そしてもう無理だと判断した2人は王都の守りが手薄になったタイミングで逃亡した。


 既にティアバルト王国からの援軍情報はあった。もしここにいると知られれば責任を問われるかもしれない。

 幸い、追ってくる者はいない。魔物の波は一旦落ち着いて騎士達はほとんどが死んだ。これなら逃げられる。


 そう、たかを括っていた2人は今、ピンチに陥っている。僅かに生き残った中低度の魔物を倒すティアバルト王国の騎士が目の前にいるからだ。


 騎士の荷物の中に、懐かしい顔を見つけた。母だ。父と一緒に失踪した彼女の顔に最早生気などない。息をするように魔物をバラバラにする。そして彼らと一緒に戦っていたのは自国の、死んだはずの騎士達。


 「ウィルバイツ王国の王族の方ですね。我が国の者がお怒りですのでご同行願えますか」


 威圧感のある声でそう告げられて足が震えてその場から動けなくなる。ハルトナイツもパルレラも追われる経験がない。普段から鍛えている騎士に勝てるはずがなかった。


 「や、止めろ!おいっ!お前!側近だろう!」

 「そ、そうよ!早くしなさい!」


 ドン引きするティアバルト王国の騎士達。ウィルバイツ王国の騎士も微妙な顔をしている。まあ彼らにそんな雰囲気を察することができるわけもなく。


 「この国の王族ってアホなん?」

 「そうみたいです」

 「まあとりあえず連れて帰りますか。ではちょっと失礼して」


 一際ガタイの良い騎士が近づいた瞬間、2人の視界はぐらりと揺れた。

 「うっ……ん…」

 「起きたかへっぽこ王子」

 「はっ…!な、なぜ貴様がここにいる!」


 目が覚めて一番に目に入ってきたのはかつて婚約破棄をしたセレーネ。



 「ここまでくると憐れに思うよ。私ね、怒ってるんだ。国民を見捨てた貴方に。

 魔物に恐れをなした?命が惜しくなった?

 ふざけんなよ。お前らの行動でどれだけの人間が死んだと思っているの?


 今すぐ八つ裂きにしてやりたいところだけど、まずは気が狂うくらいに罵倒されてみな。浮気相手とね」


 ここでハルトナイツは気づいた。自分は絶対に敵に回してはいけない人物を敵に回してしまったことに。


 婚約していた時のセレーネは暴言など一度も吐いてこなかった。謝ってばかりの鬱陶しい女でしかなかった。今ここで「罵倒されてみな」と言ったのは彼女が大層ご立腹であるということを示しているも同義だ。


 ガタガタと震えているのは本人にもわかっている。



 「お久しぶりです。ハルトナイツ・ウィルバイツ様。まさかこんな形で再会するなんて思ってもいませんでした。しばらく見ないうちに随分と醜くなりましたね」

 かつての婚約者と入れ替わるように入ってきたのはずっと虐げてきた義弟だった。


 「ああ、抗議しても無駄ですよ。貴方はセレーネにも、僕にも醜いと、不細工だと言って来たのですからこの程度で激昂されるのは困ります」


 目を覚ましたパルレラもガチガチと歯を鳴らして震えている。ドス黒いオーラが流れている。だが…



 「ちょっと!あんた!あの女を何とかしなさいよ!ハルトナイツ様の弟なんでしょ!」

 「そ、そうだ!こんな時くらい恩を返したらどうなんだ!」


 こういう切り替えの速さは最早尊敬に値する。


 「言っている意味がわかりません。いつ貴方の弟になりましたか?今はセレーネ・バークレイ男爵令嬢の婚約者であり一代限りの騎士爵を賜った一騎士です。王太子の弟になった覚えはありませんね」


 ぐっと言葉に詰まる。まずセレーネが男爵令嬢になったことも、義弟が騎士爵を持っていることも知らなかった。


 「セレーネ、おいで」

 「ん」


 アレクセイが何もいない空間に呼びかけると魔法陣が現れ、そこから不機嫌そうなセレーネがやってきた。

 「っ…!」

 ゴミを見るように2人に目を向けたセレーネに怖気付く。なぜ自分がこうなっているのか、なぜ自分だけこんな目に遭わなければいけないのか、本気でわかっていないようだ。



 「んー。セイ、まずはこのちんちくりんに自分の罪を自覚させることが必要かも」


 誰がちんちくりんか、指をさされたので自分達のことというのはすぐに分かった。


 ここからが地獄の始まり。

 死にたくない。あれだけ思っていたはずなのに、今はどうだろうか。身体的苦痛は与えられていないが、精神的にはどんどん追い詰められている。


 「ふふ、その表情も良いね」


 セレーネはゲス顔で、アレクセイは何の感情も持たない顔で自分達の弱いところを的確に突いてくる。これは恐らく、「止めろ」言えば更に酷いことをされるだろう。



 2人は最終的に、誰よりも蔑み、虐げてきた人間に精神を壊された。そこで自分達のしてきたことを知ったのだった。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・ハルトナイツ・ウィルバイツ(16)

・パルレラ

・騎士

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