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36,宮廷魔術師2


 「失礼します。アルバート総括長、私とセイの魔力属性がわかりました」

 翌日、私はセイを連れて総括部長室に訪れていた。  



 セリーとレイラファールはお留守番、ロルフは第二部隊に、シサーカは部屋の外で待機している。

 訓練場の方が騒がしい。魔物のロルフに協力してもらった新人のプチ演習という感じらしい。悲鳴と怒号が飛び交っている。なかなかにカオスだ。


 「………まあ、あんな感じで外は騒がしいが聞かせてもらおうか」


 私達はオルガリオ魔術師団長とのやり取りや水晶のことを全て話した。

 「セレーネ、基本的に闇に寄った魔力属性だったお前が聖属性を新たに手にして何か昨日今日で変わったことはあったか?」


 変わったこと…あ、一つだけあるな。


 「昨日帰宅した時と今日出る時に白竜に抱きつかれました。妹が抱きつかれているのはよく見ましたが属性が闇に寄ってるからなのか私は黒竜に抱きしめられたことしかありません。変わったことといえばそんな感じですね」

 「帰宅したら竜がいること自体驚きだが。体調などの問題は発生しているのか?」


 「いいえ、体はいつも通り健康です」

 「アレクセイは無属性だったな」


 アルバート総括長はセイに話を振る。

 「はい。ですが現時点での魔力量はあまり多くはありません。努力と慣れ次第かと」

 「そうか。では今後2人は普段の鍛錬と合わせてそれぞれの魔法を練習してくれ」

 「「はい」」


 私とセイの返事が被った。

 セイは魔力が多くないので体が魔力に慣れるまでの時間が短くて済む。私は魔力は多いが許容量の方も多いのでカイリお兄様やティア、白竜にコツを教われば少しずつだが魔物につけられた傷の浄化や汚染された土地の浄化ができるようになっていった。

 まだまだ足元にも及ばないくらいの凄く小さな力だがこれでカイリお兄様の負担が減れば良い。


 でも、まだ足りない。もっと魔法を確立させて自分の願いに見合う力を手に入れないと、大切な人は守れない。

 中途半端な力じゃ駄目だ。中途半端になるのが一番駄目。それなら何も持たない方が良い。


 「ねぇ、セレーネ。いつも以上に怖いよ」

 太陽が真上に上がった頃、ロルフにつっこまれた。私自身も少しやりすぎかと思ってはいるがでもそれで皆が笑えるなら良い。


 「言っておくけどさ、セレーネがまた死んだらセレーネの大切な人は二度と立ち直れないよ。一度目は蘇生できたけど二度目はもうない」


 そんなことわかってる。でもきっと今は良くてもまた危機に晒されたらそんなこと忘れてその身を投げ打ちそうだ。

 実際、あの時もそうだった。目の前のものしか見えなくなって自分のことがどうでもよくなった。私に命を握られている状態のシサーカも、ロルフもいるのに、だ。

 

 生まれて十数年、ドラゴンゾンビと対峙したあの時ほど馬鹿なことはしていないだろう。


 「もうあんな無茶はしないよ。起きてから、2人の死を告げられて自分が無茶したことを後悔した。なんであんなことしたんだろうって」

 「それがわかってるなら良い。セレーネが死んだのは俺のせいでもあるんだ。セレーネをそんなに責める気はないよ」


 人の姿で柔らかく微笑んだロルフに感動したのも束の間。


 「あだっ!」

 「僕のセレーネに何してんの?距離近くない?」


 冷たく放たれた声はセイのもの。背中に氷のオーラが見える気がする。



 「セイ、ロルフは犬だよ。人の姿になれるだけのただの犬。たかが犬に嫉妬しないでよね」

 「だって羨ましいんだもん。婚約者は僕なのにさ、ただの魔物に独り占めされてるんだよ」


 むっと頬を膨らませて犬にヤキモチを妬くセイ。可愛すぎて悶えるのだが。ほんと好き。


 「結婚したらずっと一緒にいられるでしょ?隊は違うけど騎士団にいるのは一緒だし夫婦になれば寝室も一緒。騎士爵は領地を貰えないから領地経営もいらない。早くても3年後だけど子供はもう来年成人だから乳幼児相手に徹夜する必要もないし」


 乳幼児なら夜泣きというものがあるが幸い私達の子供は親よりも年上だ。

 セリーもレイラファールも夜泣きするような年齢じゃないから徹夜することもなくセイと一緒にいられる。そして現在15歳。この国の成人年齢は16歳。私はだから16歳で結婚できる。


 「3年かぁ。早く結婚したい。何で16歳まで結婚できないんだろ」

 「まあまあ、結婚したいのは私も同じだからさ、もう少しだけ待と?」


 「ぐ……待つ。頑張る」


 か、かわよ。我慢できずにぎゅうぎゅうと抱きしめる。不服そうにしながらもセイは大人しく私の腕の中に収まっていてくれた。


 「お母さん、僕もぎゅう」


 見学していた年上の我が子からの可愛らしいおねだりにデレた私達はセリーとレイラファールを交互に抱きしめた。前世、注ぐことができなかった愛を今世は重いくらいに注ぐと決めたから。


 「お母さん、お父さん、大好き」

 「僕も、2人のこと好き」


 両親が好きすぎるのも問題かもしれぬが激甘溺愛ペアレンツからすれば天国だ。


 「うん、私も大好きだよ」

 「僕も好き。セレーネとの子供なんだ。好きにならないわけない」


 それは私も同じだ。前世も今世も一緒になれるなんてこれはもう運命としか言いようがない。しかも死に別れした私達と息子が再び出会うなんて竜に預けていなければ一生なかった。この運命を大切にしたい。


 そう、強く思った。きっとそれはセイも一緒だろう。


 「俺が先なのに」

 『ボクだってセレーネのこと好きなのに』


 幸せだ。こうやって皆で下らないことで騒いだりできること、それが私の望んだ自分の幸せ。


 まだウィルバイツ王国からの進展報告はないけれど、束の間の幸せを少しだけ噛みしめるくらいは許されるだろう。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・ロルフ

・シサーカ

・レイラファール(15)

・セリー(15)

・アルバート総括長

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