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34,ちゅっ



 「セレーネ、今日こそは勝つよ」

 『いや、ボクが勝つ』

 「ふふ、勝てると思うなよ。私が勝つ。ロルフは今日負けたら1000戦1000敗だね。シサーカも、竜としてちゃんと足掻いてね。私はしぶといよ」


 「『絶対勝つ!』」


 今日は約束通り、勝負の日だ。少し煽ってやると2人はすぐに戦闘体制に入った。


 ここは騎士団の訓練場。ここには厚い結界が張ってあり、激しい戦闘訓練ができる。そして、安全な場所であったら見学ができるということで皆勢揃いしている。なんなら先輩達までいる。


 「剣召喚」

 『アイスクラフト』

 「………」


 1対2。最強のハンデ。


 私は亜空間から禍々しい剣を、シサーカは特殊能力のアイスクラフトで氷の剣を、ロルフは何かしらの術をかけた騎士の剣をそれぞれ構えた。



 先攻は、シサーカだ。氷の剣が面白いくらい真っ直ぐ降りてくるので受け止めるとシサーカが薄く笑った。


 「……!そういうことね」

 氷の剣に触れたところが腕ごと凍ったのだ。だが、私だってそこまで弱くない。


 「おっと危ない」

 私の動きが一瞬鈍った隙を突いて、ロルフが攻撃してきた。今は腕が使えないので回し蹴り。

 悲鳴があがるかもしれないがこの程度じゃロルフには擦り傷一つつけられないので安心してほしい。ついでに腕の氷もかち割る。


 『やっぱりこの程度じゃ通じないか』

 「当然」

 『じゃあ、これならどう?』


 シサーカは今度は弓を構えた。それと同時にロルフの手に氷の剣が渡る。


 矢の一本一本に、さっきの剣と同じくらいの魔力が込められているはずだ。【拡散】という効果がある。

 

 魔力付与の一つで、これをその弓に付与すると通常は一本ずつしか出ない矢が三本とか出たりする。つまりは剣三本が一気に飛んでくるような感じだ。


 ヒュンと風を切る音がすると同時に地面が強く蹴られた。私は瞬時にその矢を躱し、ロルフの攻撃に備えようと思ったのだがここで問題が発生した。


 避けたはずの三本の矢がこちらに向かってきていたのだ。幸い剣で切り捨てれば消えてくれたが。


 「【拡散】と【追尾】か。考えたね」

 『普通のじゃセレーネには避けられちゃうでしょ?だから追いかければいいやって。あんまり魔力付与上手じゃないから切られただけで消えちゃうけど』


 そこからはほぼ魔法の応酬だった。シサーカが氷の弓を打ちまくり、ロルフはシサーカから受け取った剣に自分の魔力を込め、私も剣で全ての攻撃を躱しつつ着実にダメージを与えていった。

 実際は切らないけど。


 弓も使えるけど流石に私が剣と弓使ったら一発KOだ。KOしなくてもロルフの再生止めてしまうしシサーカは何かあっても契約する前とかもそうだったけど自動的には治らないから。


 数時間くらい経っただろうか。日は少しずつ傾き始めた。暗くなると耳の良いロルフの無双になるしさっさと終わらせるか。


 少しリスキーだが矢を避けずに正面から突っ込んだ。


 『なっ…!』

 「これは没収ね。ロルフもこの剣は預かるね」

 「ちょっとっ…!」


 そう言って私は2人が困惑してる隙に素早く2人を気絶させた。これは果たして勝負に勝ったと言えるのだろうか。でも事実戦闘不能なので勝利は私だろう。



 審判をやっていたアルバート総括長に目を向けるとカウントを始めた。負けを決めるのは自ら負けを認めるか10秒以上起き上がれなかった場合だ。


 「カウント10!勝者!セレーネ・バークレイ!」


 結界のせいであまり聞こえないが見学していた人達が歓声を上げた。どうしようか。この2人。気絶しているので私が運ぶしかないか。


 「1人持つ」

 「あ、ありがとうございます。ではロルフをお願いします」

 「わかった」



 私はシサーカを抱いて、アルバート総括長はロルフを抱いて訓練場を出た。


 「セレーネ、凄いな。1対2でしかも上位種相手にあそこまで動けるなんて」

 「あの2人に勝てる騎士団の奴らなんて隊長クラスくらいだろ」

 「いや、あの2人にギリ勝てるのは第三部隊のとこのだけだろうよ」

 「ああ、セレーネの下の兄貴の」


 「ほらよ、勝ったご褒美」

 「わぁ…!ありがとうございます!」


 先輩に渡されたのは林檎飴。こっちに来て初めて食べたがめちゃくちゃ美味しくて今は先輩におねだりしている。勝負に勝ったらくれるので。甘いものが苦手だが何故かこれだけは食べれてしまう。


 パリっとした飴とシャリっとした林檎のギャップが良い。好き。


 「セレーネ、お疲れ様。とりあえず僕以外は皆帰ったよ」

 「セイ!」


 私が食べ終わった頃を見計らってか、セイがこちらに来た。


 「どうしたの?何かあった?」

 「何かないと来ちゃだめ?」

 これは…撃ち抜かれる。


 「……だめじゃない」


 ふと視線を感じる。


 「ナンデショウカ」

 「い、いや!なんでもないな。ああ、なんでもないぞ」


 あからさまに動揺した先輩達はそそくさと立ち去っていった。脱兎のごとく。



 「セレーネ、僕はセレーネのことを愛しているよ。今も、昔も。前世でも、今世でもね」



 凄く今更感もあるが、セイは私のことが大好きだ。わざわざ言われなくてもわかっているが。突然どうしたんだろ。


 「セレーネが目覚めた時に言おうって思ってたんだ。前世のこともあってバタバタしてて今になっちゃったんだけどね。


 言える時に沢山言いたい。後悔したくない。


 それと、聞きたいことがあったんだ。あの時、目覚めた時に僕に言いたいことがあるって言ってたよね。それが何か聞きたい」

 ああ、後悔か。確かにお互いに好きだとわかっていたからわざわざ伝え合うこともしなかった。後悔してからじゃ遅い、か。


 「言いたいことはセイと同じ。あの時、生きて帰ることができたら一言、愛してるって伝えたかった」

 「ねぇ、セレーネ」

 「ん?なあに?」


 顔の赤いセイに名前を呼ばれて返事をすれば、首が持って行かれた。



 ちゅっ



 「な、な、なにゃ…!?」

 ファーストキス。奪われた。


 「あの時はできなかったから。あとその顔、最高に可愛いね」

 「〜〜っ〜〜〜!」


 なんなんだ本当にこの子は。

 「セレーネの唇、ちょっと甘かった」

 「そりゃ、林檎飴食べたばっかだし、そういうの、言わないでよ。恥ずかしい…」


 セイはいつからこんなんになったんだ。私が死んだからグイグイ来るようになったとか?それはあり得るわ。



 「可愛い。セレーネ、大好き」

 「うん、私も大好き」


 いつの間にか恥ずかしいこと言うようになってたけど、やっぱり大好きだし。


 ちゅっ


 「え………」

 今度は自分からしてみた。まさか私からされるとは思っていなかったのだろう。赤面してる。



 「仕返しね」

 ポカポカと殴ってくるセイを笑っていなし、帰路に着いた。


 尚、翌日からかってきた先輩達はボコしておいた。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・ロルフ

・シサーカ

・アルバート総括長

・先輩騎士達

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