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33,新たな事実2

新キャラ登場です!


 全てを思い出した訳ではなかったが、少しだけなら思い出せた。


 両親を疫病で亡くしたこと。


 聖女だと担ぎ上げられて16歳の時に同じくらいの年齢の少年と2人で魔王討伐に駆り出されたこと。


 双子の男の子を産んだ私が家に火をつけられて夫と共に死んだこと。


 自分の命を終わらせ、子供から親を奪ったはずの人間のことをなぜか憎めなかったこと。


 「魔王討伐の後、僕らは死にましたので息子2人はとある竜に預けました。そして来世こそは一緒に幸せになろう、幸せだと笑って人生を終えよう。

 そう誓って火の中で死んだ。当時、19歳でした。

 結婚2年目の新婚ですね。僕の願いは聞き届けられたみたいです。

 思い出したのはこちらに来てからなので出会った時はまだ記憶はありませんでしたし一目惚れでしたが今思えば確かにセレーネの容姿は妻によく似ていました。違いは髪と目の色だけです」


 セイが私を小さく見たので話を引き継ぐ。


 「私が思い出せるのはそう多くはありませんがセイが話したことがほぼ全てです。私もセイも、大切な人を守れずに失った過去があります。

 道具として働かされることに多少の不満もありました。

 セイは、私の今の容姿がティアバルトによく似ていたと言っていましたが、記憶を取り戻した今、セイの容姿もバークレイによく似ていると言えます。そして私は先程の、自分を呼ぶセイの声が引き金になって記憶を取り戻しました」


 『失礼する。セレーネ、アレクセイ。子供というのはこいつらのことだな』


 『この子達、死んだ両親に会うまでは生きるんだって聞かなかったね』


 「レイラファール…」

 「セリー…」


 懐かしい息子達を見た私達の声が被る。


 「父さんっ…!」

 「お母さん!」


 「わっ…!」


 想像より大きくなっていた息子が突進してくると流石にバランスを崩す。


 「2人とも、今いくつなの?」

 勇者と聖女の伝説から数百年は経っているはずだ。見た目年齢が若すぎる。人間を辞めたとか?いやそれはないだろう。じゃあどういうことだ。


 「今15歳だよ。そこからは時間を止めてもらってたんだ」


 ピシッ


 部屋の空気が凍った。

 「と、年上…?」

 私は13歳。セイは14歳。カイリお兄様は15歳。ハルイお兄様は18歳。カイリお兄様と同い年、ハルイお兄様よりギリギリ年下。親であるはずの私達は息子よりも年下だった。


 「…?」

 「父さん達、僕達よりも年下なの?」


 どうやら私達の年齢までは知らなかったらしい。

 「私は13歳、セイが14歳。2人はカイリお兄様と同い年だよ」

 「親より年上なの…?僕達ちゃんと2人の子だよね…?」


 「ああ、それは事実だ。僕らは討伐時代に知り合った竜に炎の中、当時1歳だったお前達を預けたんだから」

 「良かったぁ…」


 セイの言葉に2人は安心したように微笑んだ。双子の兄のレイラファールは美青年に、双子の弟のセリーは美少年に成長していた。流石我が子。信じられないくらいの美形だ。


 「いまいち話についていけないが、その2人は実の子なんだよな。そうなるといつまでも竜に預けておくわけにもいくまい。どうするつもりなのか2人の意思を確認したい」


 お父様はまず一度私達に意思確認をしてくれる。そういうところ本当にリスペクトだ。


 「僕は彼らが望むならもう一度、家族になりたいと思っています。幸い、先日の戦いの功績で僕も高くはありませんが爵位を貰いました。

 ただのアレクセイより低くても爵位があった方が色々と便利みたいで。それなりの蓄えもありますしお金の方で困ることはそう無いかと」


 「私もセイと同じです。あの時は雑魚死しましたが今は黒竜クラスのアンデッドでない限りは確実に返り討ちにできるだけの実力を得ました。せっかくのチャンスを無駄にしたくない。騎士団の給料は結構出るので私もお金には困っていません」


 ドラゴンゾンビは本当に苦戦したからな。魔核を破壊しようと無理な魔力の使い方をしたせいで死んだらしいし。


 「そうか。本人達が望むならこちらもできることはしよう。それでアレクセイ、貰った爵位とはなんだ」

 私も爵位については聞いていない。そりゃそうか。目覚めたの今日だ。


 「騎士団の方にスカウトされて、了承したところで騎士爵を」

 「騎士団にスカウトされたの?」


 「そうだよ。まだ結婚してない、ただのアレクセイのときにそういったことを決めておいた方が良いと思って。それに知らない人からスカウトされた訳じゃないよ。カイリが総括部の方に紹介してくれたんだ」

 私は黙ってカイリお兄様を見た。


 「まあ、良いじゃん?」


 「そういえば、シサーカとロルフはどこに?」

 私が起きたと知ったら一目散に飛んでくると思うけど。主にシサーカが。


 「騎士団の方にいるよ。総括部だけは普通にあるからウィルバイツ王国にいた時のことを報告してると思う。ついでに不満を述べたり。ちゃんと朝はいたよ。

 セレーネが目覚めてなかったってのでがっかりして騎士団の方に行った。

 ここからあの国がどうなるかわからないけど国王王妃はもう終わりだね。あっちの騎士団がこっちの騎士含めて捜索隊を組んでる。魔物の方は俺が嫌々だけど結界を張ったからしばらくは平気かな」


 わざわざ「嫌々」ってのを強調している時点でカイリお兄様のブチギレ度がわかる。確かに私もあの国に結界を張れって言われたら「んー」ってなる。


 ドドドドドドドド


 地面が揺れている。まあ誰かは大体予想はつくが。

 「セレーネ!」

 『セレーネ!目を覚ましたって聞いたんだけど!』

 やっぱり。


 「誰、こいつら」


 レイラファールが不審物を見るような目で言う。安心せい。彼らは敵ではないぞ。


 『お前こそ誰だ。セレーネはボクの主だ』


 2人ともめっちゃ好戦的なのだが。シサーカとレイラファールは火花を散らしているがロルフは苦笑、セリーはオロオロして私に縋り付いてくる。え、セリーめっちゃ可愛い。


 私は大丈夫だという風に笑い、立ち上がった。


 「シサーカ、この子達は私とセイの息子。別に敵じゃないよ。全く。15歳の少年相手に何敵対してるんだ。ロルフも笑ってないで。

 レイラファール、この2人は私の従魔。ちょっとうるさいくらいで害はないし私よりも弱いから大丈夫」


 「…………それなら良い」

 「互角だけどな」

 『互角だね』


 シサーカとロルフの視線が痛いがレイラファールを説得するためだ。仕方ない。


 「じゃあ勝負しようか」

 「『望むところだ!』」

 「わーもうだめだ」


 カイリお兄様が諦めたように言って私達は笑いあった。



 凄く穏やかな時間だった。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・バークレイ一家

・ロルフ

・シサーカ

・レイラファール(15)

・セリー(15)

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