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32,新たな事実


 ティアバルト。バークレイ。


 どこかで聞いたことがある。でも、どこだっけ。凄く懐かしいような、それでいて、凄く寂しくて苦しいような。


 「セレーネ、セレーネ」

 誰かの名前が聞こえる。ああ、この声だ。

 「ん………ば……くれ、い…?」


 喉がカラカラで声が上手く出ない。あれ、私、何してた?


 毎日のように聞いた、心地良い中音ボイスで目覚める。さっきのは夢か。どうりで自分らしくないと思った。


 「セイ。おはよう」

 「お、おはよう。凄く心配した。凄く怖かった。もう二度と会えないんじゃないかって思って…セレーネ、もういなくならないで。セレーネを失ったらもう二度と立ち直れない」


 ベッドの脇には目を真っ赤に腫らしたセイがいた。うっすら隈もできているしずっと起きててくれたのかもしれない。


 「ごめんなさい。魔の森から意識がなくなっててその、言わなきゃいけないことがあったしセイに会わないとって思ったんだけど…」

 「セレーネは屋敷に着いた時点でもう、手遅れだった。ロルフも、シサーカも。息のない状態で運ばれてきた時、目の前が真っ暗になって」


 私が死んだ…?ああそうか。クルーレスにも謝らなきゃ。騎士団にも謝罪回りしないとな。となるとあの子達は私が殺したんだ。


 「っ…!」

 「セレーネ、どうしたの?顔色が悪いけど…」

 「私が、私が殺したんだ…私が」


 大切な人達の幸せを願っておきながら、未来を、可能性を潰したんだ。


 「何を言っているんだ…?2人は2日前には目覚めているよ」


 事情を聞き、私は大分粘った方なのだなと思った。従魔が死んだらその瞬間、私も死ぬはずだった。

 「クルーレスとセイがいたお陰で私は魔の森を出る直前まで生きられたんだな」

 「セレーネ…」


 バンッ!


 「「セレーネ!」」


 一斉に駆け込んできたのは兄組。

 「大丈夫!?もう痛いところない!?」


 カイリお兄様がセイを押し退けるように私の両肩を掴んだ。ハルイお兄様もカイリお兄様もセイと同じく隈がついている。


 「特に痛いところは…」

 少し左足が痛むが歩けないほどではない。 

 「じゃあ少し痛いところはあるんだな」

 うっ…バレてる。


 「2回吹っ飛ばされたので左足が少し痛みますが歩けます」

 「セレーネの少しは信用できない。自分がどんな状態で運ばれてきたかわかっているのか?」


 ハルイお兄様までそんなことを…。

 どうなったんだろう。とにかく痛かったことは覚えてるけど。


 「痛かったことは覚えています。あとはどれだけ頑張ってもウィルバイツ王国では所詮私は疫病神なんだと改めて突きつけられてショックを受けたことと元婚約者は生粋のクズだということですね」


 「うっ…ごめん」

 セイが小さくなっている。そういえばあれの義弟だったな。


 「何でお前が謝るんだよ。あのクソ王子とは父親しか同じじゃないだろ。あの性格は殆ど母親の影響だよな」

 カイリお兄様が顔だけ動かして悪態を吐く。そういえば…。


 「カイリお兄様、その…騎士団の方はどうなっていますか?」

 「セレーネとそのお供達全員の無事が確認できるまで休みだよ。皆心ここに在らずって感じで全然話にならなかったんだ。俺もだけど」


 確かに第一部隊以外の先輩も随分と可愛がってくれたからな。


 「今すぐ行きます」

 「「待て待て待て」」


 全員の声が揃っててなんか面白い。でも私がいないせいで騎士団が機能しなくなるなんてあってはいけない。


 歩き出そうとした私は突然頭が痛み出し、その場にへたり込んでしまった。


 「おい、大丈夫か。いや、大丈夫には見えないな」

 「魔王を倒さなきゃ…あの子達を迎えに行かなきゃ」


 きっと寂しい思いをしている。

 誰が?あれ…………?私、誰だっけ。


 「ティア…バルト?本当にそうなのか」

 「ティアバルト…?ああ……19で死んだ。殺された聖女。私は……バークレイと結婚したんだ」 


 思い出してしまった。私はずっと昔、魔王を倒し、勇者と結婚した。そして、1歳だった双子を遺して死んだんだ。


 驚愕しているセイと混乱している私に声が飛んでくる。


 「あの、話についていけないんだけど…」

 「どういうことか説明してほしい」

 「わかった。ただ、口外しないでほしい」

 「その話、私も聞こう」


 私達4人しか居なかった部屋にはいつのまにか両親とティアが立っていた。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・バークレイ一家

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