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25,最上位種、ドラゴンゾンビ2

主人公ピンチです。流血シーンがあります。


 戦闘開始からどのくらい時間がだっただろうか。状況的には結構キツい。威嚇だけは効かないが。


 魔力も体力もまだ余裕はある。だが、若干動きが鈍り始めた。 

 ドラゴンから直接攻撃される一番の危険区域に入っているので結界があっても全体的に私が弱体化の効果を受けているからだ。

 他の騎士達も結界はあるものの、相手は私より強い相手。全ての効果を最大限発揮でる訳ではない。



 1人、また1人と怪我人が出る。魔力再生の効果だけは変わらないので治癒師は安全圏から魔法をかけている。


 私も先程足を消し飛ばされているし拒絶魔法を自分にかけるのも惜しくなった。この足を再生するのを最後に、自分には応急処置だけを使うと決めた。この後は教会に行って蘇生もしないといけないので死者蘇生分の魔力は余裕を持っておきたい。


 幻影魔法をかけた。

 これで青竜の加護を得た者以外は見破れない。側から見たら私はドラゴンブレスにあたっても無傷な人だ。


 矢を当て、剣で斬り、それでも戦況はあまり良くない。


 レウクルーラ団長も、ロルフも、クルーレスも、大分息が切れてきたようだ。こうなったら…



 『解析魔法』



 ドラゴンゾンビの魔核を直接攻撃するべく正面から突っ込む。その体に触れると火傷をしたり肉が溶けたりするが関係ない。今、解析魔法で魔核の場所は特定した。後は粉々にするだけだ。


 魔核に手が届いた。熱すぎて逆に冷たく感じる。



 「砕け散れ」



 この後予定があるので持てる魔力を出し惜しみしつつ、できる限り最大限、魔核に魔力を込める。魔核が耐えられる魔力量には限度があり、それを超えてしまうと魔核は爆発する。


 最低限の結界をかけ直し、覚悟を決めたとき、目の前が真っ白になってけたたましい音が響き渡った。


 耳が痛い。足も痛い。とりあえずなんか全部痛い。

 

 左足の感覚がない。きっとまた吹っ飛ばされたんだ。


 私は踏ん張ることができず、重力に任せて落ちた。

 このままだと溶けた岩の上に着地しそうだ。着地というより墜落と言った方が近いか。


 「セレーネっ…!」

 落ちたはずの私に衝撃は一切やって来ず、不思議に思って目を開けるとクルーレスが私を横抱きにしていた。所謂、お姫様抱っこだ。男顔を抱っこしても面白くないだろうに。ただ、お陰で一命は取り留めた。


 「教会に行く。私の馬は?」

 「その状態でまだ魔力を使うのか?本当に死ぬぞ」

 「行くったら行く」


 私はそれだけ言うと本格的に倒れる前にとクルーレスの腕を抜け出して愛馬を呼んだ。真っ黒な馬だ。彼は人型になれるのでなんとか自力で馬に乗れた。



 「おいセレーネっ!全く…。治癒師と結界師、2人ずつ来てくれ」

 説得はもう諦めたようだ。

 「着いた……」


 幻影魔法で隠した傷はリアルでは治っていないのでここは気合いで乗り切ろう。そこから体力と魔力を回復させて王都に帰るんだ。


 教会に運び込まれていた遺体数も多かった。広い部屋がいくつも埋まっている。



 『拒絶魔法  死者蘇生』



 自分の命が惜しいなら、大切な人を遺してしまったなら。きっと呼びかけに応えてくれるはずだ。背後に はクルーレスと結界師、治癒師が待機している。


 結界師は割れてしまった私への結界を張っていて、治癒師はこの後また戦闘になった時用だろう。多分他の騎士とかは後処理だな。


 この中の誰も、生き返りに失敗してほしくない。


 貴族も平民も、皆私のことを不吉だと避けてきたし沢山良くない噂を流された。それでも、私にとっては憎い相手でも、誰かにとっての大切な人なら生き返す価値がある。成功してほしいと心から願う。


 魔力を使ってしまえば死ぬかもしれない。それでも、リスクを犯してでもかつて私を追放した人達を助けたい。ああ、こんなこと言ってるといつか本当に身を滅ぼすだろうな。


 生き返った人達は普通なら有り得ないことを成し遂げた神に感謝した。


 私のことは誰も見てはいなかった。もうそれで良いよ。私がやった事実はなくなっていても、助かった事実は変わらないんだから。



 「セレーネ…足…なんで……?」

 「足?ああ。解けちゃった」


 私にかけていたはずの幻影魔法は溶け、応急処置をしたはずの足は切断面から血が出ている。


 早く止めなきゃ。でもどうやって?もう魔力はほとんどない。ギリギリ生存可能量だ。もしこれ以上使ったら私は魔力枯渇で死ぬ。


 私が死んだら家族や使用人は悲しむし、セイだって立ち直れるか。シサーカやロルフまで犠牲にしてしまう。


 「いっ…!」

 あまりの痛みに情けない声が漏れる。

 「すぐに止血するから」


 もう無駄だ。止まらない。今、体の血全部持っていかれるような気がしている。


 「クルーレス!荷馬車を連れてきた!」

 生きの良いレウクルーラ団長の声が聞こえる。

 「ありがとうございます。セレーネ、これから王都に戻るから。絶対に寝るなよ」


 だんだん視界が濁ってくるが一応頷く。だが眠い。


 とても眠い。今目を閉じたら一瞬で眠れるだろう。

 「クルーレス……眠い」


 「眠るのは許さない。今生きる気があるなら死ぬなよ。気合いで起きてろ」



 うっ…根性論。私みたいだ。いや、私相手だからそう言ったのか。




 でも、セイの顔でなんとか起きてるような状態の私は知らなかった。どこで何が起きていたかなんて。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・クルーレス

・レウクルーラ団長

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