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23,死者蘇生

これ以降、戦闘シーンが続きます。


 もう少しでウィルバイツ王国に着く。奥にいるはずの上位魔物はなぜかほとんどいなかった。最上位種のドラゴンは魔物が半分以上死んだ時に現れるのでまだ居ないのが正解。上位魔物がほとんどいないのが異常なのだ。進行しているのは知っていたがここまでとは思っていなかった。



 ウィルバイツ王国の騎士はほぼ全滅。魔物は死者に僅かに残された魔力すら取り込んで再生したりするので死者にも結界師がついている。魂は結界を出られないのでさっさと蘇生しよう。いた方が効率が良いと判断したから。


 「レウクルーラ団長、ウィルバイツ王国の死者はどこに集められていますか?住民は後に回すとしても騎士はいれば困りません。よっぽどの臆病者でない限りは使えると思いますが」


 「王城の側に教会がある。住民と一部貴族の遺体はそこに集められていて騎士側よりは少ないが念の為に結界師もついている。騎士は王城の門入って直ぐの広場だ。死人を嫌うこの国の王子にしては珍しい」


 「では私はそちらに向かいます。道中魔物との戦闘になれば直ぐの援軍は期待できないですが必ず戻ります」


 「待て。騎士を追加で1人つける。クルーレス、セレーネと一緒に王城に行け。お前がセレーネと一番息の合う騎士だからな」

 「はい!」



 そこで私とクルーレスは隊と一度別れた。

 確かにクルーレスは剣術の共通訓練や実践で私と一緒になることが多い。


 今まであまり意識したことはなかったがお互いの動きの癖や粗が感覚的にわかる気がする。沢山いる同僚の中で一番背中を任せられる人間だ。まだ私と同じ、一年目の新人だが実力は高い。


 「王城までの道わかるのか?遠征でこっちまで来たことないだろ」

 クルーレスの言葉にああそうかとなる。私がウィルバイツ王国出身の貴族とは総括部と各団長しか知らないのだ。兄がいるのに。


 「問題ない。馬鹿みたいに大きい王城はここからでも見えるからそこまで行くだけだったら誰にだってできる」

 あからさまにそれっぽい理由を並べて言い訳したが触れてほしくないと感じ取ったのかそれ以上追求されることはなかった。


 「ここだな」

 「酷い匂いだ」


 クルーレスは思わずと言った風に顔を顰めた。確かに血の匂いが凄い。これは顔を顰めるのも無理ない。



 「セレーネ…バークレイ様……?なぜ貴女のような方がこのようなところに?」



 また新たな遺体を運び込んできた騎士が驚愕の表情で私の名前を呼んだ。見覚えならある。


 「へっぽこ王子の元側近騎士…」


 へっぽこ王子とは当然、ハルトナイツ第一王子だ。主の浮気や私への暴言暴力について苦言を呈したところ、解雇されたという。


 「ティアバルト王国の援軍です。貴方に恨みなどありませんし人手は多い方が良いのでまた戦ってもらおうかと」

 「それでは彼らがアンデッドになってしまいます。魔物を全滅させてから葬儀を行うために集めているのです」


 この人は私の拒絶魔法のことを知らない。


 「私を誰だと思っているのですか?バークレイですよ。私は彼らを生き返らすことができるのですからアンデッドにはなりません」



 邪魔だ退けという目線を向け、相変わらず黒い魔法陣を展開する。



 『拒絶魔法  死者蘇生』



 「なっ…!」


 クルーレスは私の能力について知っているため、周りの警戒を解かないでいてくれるが元側近騎士は驚きで固まっている。無理もない。


 死者は蘇らない。


 それが常識であり、現実なのだから。それに、そんなに簡単にポンポン生き返っていたらどうせ死んでも生き返るからと自分の命も他人の命も軽く扱う者が出てくるかもしれない。私は便利だとは思うがあまり使いたくはない。


 結界の中に留まっていた魂が我先にと主の体に戻っていく。


 『三重付与結界【耐性】【身体強化・ダメージ増加】』


 『結界【魔力再生】』


 自国の騎士にしたように、ウィルバイツ王国の騎士にも同じように結界を張る。結界師と治癒師にも。


 「ん…俺、こんなところで何を…っ…!?怪我が治っている…?」 

 「おい…!腕がっ!」

 「再生、している…?」


 治癒魔法を使えば切り傷も治せるがそれができないので拒絶魔法は蘇生するときに怪我の事実を全てリセットする。



 「では、王国に追放された私が、わざわざ貴方達のために魔力を消費して上位魔法を使ってあげたのですから、せいぜい私の役に立って下さいね。クルーレス、魔物狩りに行くよ。今ので減った分の魔力補給しないと」



 クルーレスには聞かれたくない内容のことは元側近騎士に耳打ちで伝えた。


 「了解」

 私は馬に跨って弓を構えた。遠くに魔物が見えたからだ。放った矢が魔物の膝に当たった時、魔力ゲージが少し回復した。



 と、完全に回復したウィルバイツ王国の騎士が半分ほど、私の後に続いたのでレウクルーラ団長に合流すべく、馬を走らせた。


 弓は遠くの、耐久値がない低級魔物なら一発で落とせる。身体強化とダメージ増加の効力はどうやら本物らしい。


 近くにいる魔物は自動再生防止の剣で薙ぎ倒す。アンデッドでない限りは頭を落としてしまえば勝ちだ。


 で、殺した魔物に矢を刺すとその魔力を奪える。キャパオーバーにならないのかという意見もあるだろうが騎士にかけている能力の三重付与結界が思いの外魔力を消費するからプラマイ0くらいだ。


 私とクルーレスが先頭に立って攻撃してくる魔物達を全滅しているので後ろについている騎士達の出番はほぼない。


 「異次元か…?」

 「本当に貴族の令嬢なのか…?」



 そんな声が聞こえてきたが無視の構えだ。今はレウクルーラ団長に合流するのが先なので。

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・クルーレス

・レウクルーラ団長

・騎士

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