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21,報せと決意2


 「カイリお兄様、お待たせしました」


 氷竜は他の竜に比べれば小さいとはいえ

ちゃんと乗れるサイズになれば普通に大きいのでロルフで向かった。幸い王都に向けた転移陣もあるのでそう時間はかからない。



 「セレーネ、早かったね。来てすぐて申し訳ないんだけど今人手が足りなくてね。浄化に時間がかかって傷を治す時間が取れないんだ。魔物の傷は呪いがかけられているからそれを消してくれないかな」


 「拒絶魔法で呪いを消すことはできません。呪いの上書きなら出来るのでそっちをします。私は用事もありますのでその後は治癒魔法をかけて下さい」

 「了解」


 頷き合って私は呪いの上書き、カイリお兄様が治癒をすることになった。呪いを上書きすることはできるが消すことはできないので騎士の皆様には申し訳ないが私の呪いは1日で切れるので勘弁してほしい。


 『低級呪詛』


 本来、呪いを上書きするには相当な魔力量がいるが、黒竜の加護を受けて魔力量と魔力循環がグレードアップしているのでこの程度なら平気だ。


 1人1人かけて回るのは面倒なのでまとめて全員にかける。質は下がらないので問題ない。


 黒い魔法陣はいつ見ても禍々しいオーラを放っている。ウィルバイツ王国で不吉と言われる理由も魔法陣のせいだろう。


 「終わりました。浄化されていない方の呪いの上書きはしたのであとはよろしくお願いします。あと目覚めた方がいたらバナナの皮と食事時には気をつけるように言っておいて下さい。私はアルバート総括長のところに行きますので」


 「ありがとう。セレーネの呪いについては必ず伝えておく」


 少しだけ笑ったカイリお兄様を背に、私は騎士団の総括を担当している部署のリヨン・アルバート総括長の元に向かった。応援要請はこの総括部から持って来られる。


 リヨン・アルバート。現在32歳。異例の若さで総括長に任命された男。子爵家の人間だがその発言力は上位貴族をも上回るほどと言われている。


 ノックをして部屋に入る。


 「アルバート総括長、お待たせいたしました。それと、皆様の呪いは上書きしておきましたので兄が治療に当たっています」


 呪いと言った瞬間、アルバート総括長は苦笑した。ハルイお兄様でも思わず笑ってしまうのだ。慣れていない人からすれば子供の悪戯のような呪いは面白いだろう。


 「ああ…あの変な呪いね…騎士団の怪我人は多かったはずだが全員か?」


 「はい、幸い死人はいませんでしたのですぐに終わりました」


 死人がいた場合はもっと時間がかかっていた。拒絶魔法を使わなければいけないし、魂が消えてしまっていたり、本人が心から死を望んでいた場合には蘇生ができない。


 もし生き返らなかった時、私だけでなく遺族や友人も絶望感に囚われることになる。それが嫌なので極力死者蘇生の拒絶魔法は使いたくない。


 「ああ、そうか。怪我人は多数出てしまったが死人が出ていなくて安心した」

 「連れもいますので次回の遠征から参加させていただきます」


 異論は認めないと総括部に若干圧をかけつつ、もう少し後に予定されていたはずの私の遠征許可をもぎ取った。



 遠征では3つの隊にわかれて移動し、ロルフ、シサーカ、私達は3つそれぞれに配属して最前線で戦うことになる。なぜ3つかって?それは他の隊はもう出たからだ。


 残るのは新人騎士と総括部。もし王都に被害が及ぶことになれば騎士の意味がない。今回の遠征、新人を送り込める難易度ではないので王都を守ることが新人の実践となる。


 もしもの時の緊急転移腕輪。カイリお兄様はハルイお兄様と総括部に繋がっている腕輪を既に貰っていたそうだ。



 騎士団の中に一応用意されている私の部屋に行き、いつでも出られるように改めて支度をする。


 「髪、切るか」


 鏡の中にはロングウルフの少年が映っている。大分伸びたので邪魔になりそう。結ぶのも面倒だし一思いに切ってしまおう。前髪も重くなってきたことだし。


 ザクッザクッザクッ


 鋏を通す音だけが狭い部屋に響き、布を挽いた床に私の黒い髪がハラリと落ちる。


 「よし、これで良い」

 マッシュウルフにして結構最初より短くなった。ウルフは譲らない。絶対に。


 部屋にはシャワー室もあるので切った髪を流すためにサッとシャワーを浴びる。


 あとは亜空間から物を出せるかを確認して遠隔攻撃用に持って来ていた弓に特殊効果をつける。今回つける特殊効果は対魔物戦ということで当てた魔物の魔力を奪い取って弱体化させるものと矢を無限に使えるというものだ。剣の方には自動再生防止の効果をつけた。魔物は自動で欠損部位が修復されてしまうから。


 例えば、ロルフの腕を吹っ飛ばしたとする。でもロルフは魔物だから流れた血が腕の形になってまた生える。また、アンデッドの場合は首がなくても魔核と呼ばれる心臓部に魔力がある限り、絶対に死なないから魔物には剣、アンデッドには弓が効果がある。


 そして一番面倒なのがドラゴン。氷竜や黒竜、白竜も一応ドラゴン科?だが有名な竜達とはまた違う性質を持つ。


 ドラゴンの性格は極めて凶暴で、その口から吐くドラゴンブレスはあらゆる植物を枯らし、岩だらけの地面をも溶かす。性格に見合う力があるため討伐は危険でなかなか手が出せないでいた。が、今回満を持して討伐予定が組み込まれたのだ。


 正直言うと不安しかない。ドラゴンは私よりもはるかに魔力量が多い。自分より魔力が多い者に私の魔法は効かない。剣と弓に付与した効果だけで戦わなければいけないし、ドラゴンとぶつかって死人が出ない訳がない。もし生き返らなかったらと、想像するだけで手が震えてしまう。


 そして丁度遠征準備に呼ばれた。


 ゴンッ!


 弱くなった気持ちをリセットするために壁に頭を打ちつけて部屋を出た。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・カイリ・バークレイ(15)

・リヨン・アルバート(32)

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