一方地球では? 1
日本時間2020/02/29のこと。
暁人が地球から消失した時間帯である深夜3時。
起きている者そのままに、寝ているものはベッドから跳ね起きていた。
そして人類は疑うことを許さない、何かの力であることを確信をすることとなる。
それは世界は変わったのだということ。
そして自分自身という人間はそれに適応させられたのだと。
その日地球に奇跡と絶望が生まれた。
確信ははまたたく間に近くの家族、友人、仕事仲間、そしてネットといったものを通して広まることとなる。
世界に化け物が現れる。
そして人類はその存在に超能力、魔法。言い方は何でもいい。要は“力”を持って立ち向かうことになる。
その共通認識が。
当然それでも疑うものも現れる。疑うことを許さない思考誘導があってもだ。
自分の身に覚醒した力。通常ではありえない埒外の力。そんなオカルト極まりないもの、すぐに信じられるわけがないは当然だ。
でもそれは手足。思うがままに使える。振るえてしまう。
どんなに疑っていても使えてしまえば、それに違和感を覚えられなければ。疑う力を失ってしまう。
こうしてSNSや動画サイトにて火の玉を生み出す動画などの力を見せるものが流れ、テレビでも宙を浮遊する人間が生放送にて流れる。
更には外には絶対地球にはいなかったと断言できる生き物が現れていた。
それと遭遇したものは化け物に襲われ、目覚めたばかりだというのに長い付き合いでも有ったかのように、力を使って打ちのめすこととなる。
と言っても殺すところまではいけないものを多くいたが……どちらにせよ、人類の脅威がこうして生まれた。
世界は混迷へと至ることとなる。
そしてそんな混迷に至ることとなった世界にて、とある人間が三人。
「あ、暁人はどこだ!?」
「わ、わからないわよ! 桜は!?」
「し、知らない。でも部屋から出てないと思、う……」
変わってしまった世界。それを知り不安になった息子と娘の二人の子を持つ夫婦。
ベッドから有無言わさぬナニかに叩き起こされた二人はリビングにて話していた。そこに二階の部屋から出てきた娘の桜が……そしてふと気づく。
娘が降りてきたのなら息子は?
自分の息子が二階にある自室の部屋から出て、下りてこない。
ゆえに三人が揃って息子であり、兄の部屋を覗いてみればいるはずの存在がいない。
暁人の家族が暁人自身の消失を知った瞬間であった。