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16・御剣走、真弓とお揃いが欲しい。

映画館から出たら昼を過ぎており、昼食を取りに店に入ろうとしたが何処も混雑していた。



「真弓、今急いで食べなくてもいいよ。

少し時間置いてからでも。」



「そうは言っても、育ち盛りのボウズの腹を鳴かせたままでいるってぇのもな。」



俺の腹が、グルグルゥーと犬が唸る様な音を鳴らし続けている。

恥ッッず!

昼ご飯の時間になったからって、そんな催促するように鳴り続けんなよ!俺の腹っ

ああ、ますますガキンチョだって思われる!



「おにぎり!コンビニでおにぎり買って食べよう!」



「せっかく、街を歩いてるのにか?

何か、美味い店にでも連れてってやりたいんだが。」



「夕飯!夕飯は真弓とディナーで!」



真弓と会話をする時もBGMの様に腹が鳴り続ける恥ずかしさに、焦った俺はとりあえず腹の虫を黙らせる方法を提案する。



「夕飯までにはウチに帰す予定だと、ボウズの親父さんには報告してあるんだが。」



「いや、デートだからディナーありで!

高級レストランで無くていーから!」



「デートの食事は高級フレンチみたいなイメージか。

相変わらず、面白い考え方してんなぁ。

それ、中高生の初デートには絶対当て嵌まらないだろ。」



真弓がククッと笑いながらスマホを出してメッセージを打ち始めた。

多分、俺のお父さんに予定を変更して良いのか聞いている。

その様子を、しばらくボンヤリ見ていたのだが、自分の腹の音でハッと我に返った。


俺もスマホを出してお父さんにメッセージを送る。



 真弓と夕飯食べに行きたい!

真弓が、オイシイもの食べにつれてってくれるんだけど

今どこもこんでてお昼はコンビニおにぎりになりそうなんだ

だからよるごはんいっしょにたべたい━━━



途中から変換無しで打った文字をそのまま送信した。

少し間を置いて



「ボウズ、お前の父さんから許しが出たぞ。」



真弓が微笑みながらスマホをヒップポケットにしまった。

俺のスマホにも父さんからメッセージが届…………


お母さんからだった。



━━━アンタ、いい加減神鷹さん呼び捨てやめなさい



お父さんに送ったメッセージをお母さんも見たのか。

激おこ的なスタンプと一緒にメッセージが来た。

よし、無視しよう。



「それじゃ、コンビニで軽く食えるモノ買って…

で、それ食ったら試験合格のご褒美っつー事で何か買ってやるよ」



「うっそ!!映画館デートがご褒美じゃないの!?

プレゼントまで………はぁ…

真弓…大好き。結婚しよ?」



何か嬉し過ぎて、ポロッと口から本音が溢れた。



「お前、イイ男だが安い男だな。惚れやすいつか。

コロッと騙されるタイプじゃねぇか?

大人になったら結婚詐欺には気をつけろよ。」



まぁ本気にされないのは分かっていたんだけど。


それに、初恋がテレビの中のラファエル皇子を見た瞬間に一目惚れしてるんだから、惚れやすいのも否定出来ないけど。


でも俺は好きになったら一途だ。

他の誰かに目移りなんてしない。


俺が惚れた人は二人だけ。

ラファエル皇子と、真弓だけだ。




コンビニでおにぎりとチキンを買い、店の前で急いで平らげる。

真弓と歩く時間を少しでも長くしたい。

何しろ真弓が食べるの早くて。

おにぎりなんて、三口で食べ終わるし。



「そんなにがっつく程、腹が減っていたのか。

スマンな、昼めしが遅くなって。」



違うから!!真弓の方を向きブンブンと首を横に振る。

お茶を飲んで流し込み、プハッと大きな息を吐いた。



「違うし!!早く真弓とデートの続きをしたいから!!」



真弓の言葉に大きな声で否定する。

コンビニから出てきたお客さんや、入ろうとするお客さんの視線を俺と真弓が一気に集めてしまった。



クスクスと女のお客さんが笑いながら「カワイー」「デートだって」と呟くのが聞こえた。

真弓にも聞こえたらしく、俺の手を握った真弓が早足でコンビニ前を離れた。

俺も小走りで真弓の速度に合わせる。


手を引かれた俺は真弓の背中しか見えてなかったけど、コンビニから離れた場所で立ち止まって俺の手を解放した真弓は、顔を赤くしていた。



「……俺とデートしてるってバレて照れた?」



「違うわ、ボウズと俺がデートだなんて、そんなん誰も本気で思ってるワケ無いだろ。

注目を浴びるのが苦手なだけだ。」



その割には、デートって言葉に反応したように見えたなぁ。

ってのは、俺がそう思いたいだけかも知れないけれど。

どちらにしろ、真弓は意外に恥ずかしがり屋サンという事だな。

また新たな真弓の一面を知ってしまった。感動。



腹の虫もおさまり、俺と真弓は街をブラブラと歩き始めた。

迷子になったらいかん、と、俺を子ども扱いする真弓が人混みに行く度に俺と手を繋ぐ。

これに関しては、子ども扱い大歓迎。

手を繋がれ隣の真弓を見上げる。

少し汗ばんだ真弓の肌に、白いTシャツがペタッと張り付いた部分があって、胸の辺りや肩から腕にかけて筋肉の形が少し分かる様な状態になっている。


何かエッロ……。



「ボウズ、ご褒美は何がいいんだ?

オモチャ売り場に行ったらいいのか?」



いや、おもちゃ売り場って………

特撮好きだからって、ヒーロー関連のオモチャを買ってくれようとしている?

特撮番組の途中にコマーシャルに出てる様な、武器とか変身グッズとか。


いや……嫌いじゃないけど……ごっこ遊びはもう卒業したから。

一応な。



「………初めてのデートと言えば、お揃いの指輪。」



「だから、どーゆーデート論なんだよ、それ。」



さすがに真弓が少し引いた顔をした。

どうも、お母さんがドラマを見たりマンガを見たり友達と話していたり。

勝手にくっちゃべっていた「デート」はこうよね!的な単語が、サブリミナル効果の様に俺の頭に染み付いてしまっているようだ。



「買った所で俺はアクセサリー着けるの苦手だし、タンスの肥やしになるだけだぞ。

ボウズだって、そんなモン普段着けてらんないだろ。」



確かに!学校にも着けて行けないし、少林寺拳法の教室にも着けて行けないし。

普段、友達と遊ぶ時に着けていて真弓の事を追及されたら困るし、自宅で着けてるのも…………

お父さんとお母さんがウザそうだ。


それは確かにタンスの肥やし!



いざとなったら、ナニが欲しいって分からないもんだ。


ここ最近で俺がお父さんやお母さんに「これ買って!」と言ったゲームや服……を真弓に買って貰うのは何か違う。


考えながら真弓とブラブラ街を歩き続けていると、真弓がステッカーらしきモノの売り場で足を止めていた。



手に、鷹の描かれたステッカーを持っている。

鷹………ああ、真弓の名前って神鷹だもんな。



「どうすんの?それ」



「ん?俺のヘルメットに貼ろうかと。

小さいし、派手でないからな。

で、お前のにコレ。」



剣の描かれたステッカーを持っていた。

俺の名前が御剣だから。ベッタベタだなぁ。

だけどそれって…あのヘルメットが俺専用になるって事だよね。



「じゃあまた……今日みたいにバイクに乗せてくれて、一緒に出掛けてくれるって事?」



「…………そうか、そういう事になるわな。

深く考えてなかった。

うーむ……ま、それもイイんじゃねーか?」



真弓は、ごく自然に今後も俺をバイクに乗せる事を考えていたみたいだ。

会って間もない近所のガキンチョのために、そこまでする?

ふところ広すぎない?

真弓の方が、惚れやすくて結婚詐欺に騙されそうだ。

俺が守ってやらないと!



「真弓!コレ買ってコレ!」



「え、どれ。キーホルダーか。」



真弓が手にしたステッカーと、ほぼ同じデザインのキーホルダーが売られているのを見つけた。


翼を拡げた鷹をモチーフにしたキーホルダーと、剣をモチーフにしたキーホルダー。



「じゃあ、お前に剣のキーホルダーを……」



「違う!剣のキーホルダーは真弓に持ってて欲しい!

鷹のキーホルダーは俺が持っていたい!!

剣は真弓ので鷹は、俺の!!」



俺の意図が、ボンヤリと真弓に伝わった様だ。

最初は、何を必死に訴えてんだ?って顔でキーホルダーを2つ手に取った真弓が、少し間を置いて「え?」て顔をした。



「…………分かった、まぁ同じシリーズっポイし、これはコレで、ペアだよな。記念つー事で。」



真弓がキーホルダーとステッカーを持ってレジに向かった。

真弓が精算を済ませるのを離れた場所で待つ。

何かブツブツ言ってるけど……??聞こえない。





「剣は真弓の、鷹は俺のって……

アイツは何も考えちゃいねーんだろうけど、深読みしたらビビるわ。」



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