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第7楽章 家族

途中から視点が変わります。

第7楽章 <家族>



笛の音に違和感を覚えた僕は、笛の音に聞き入っている怜奈とシズを置いてこの部屋を出ようと急いでドアに向かい、ノブに手を掛ける。

が、ドアを押しても引いても開く気配がない。


「海空、どうしたの?そんなに急いで。」


そんな様子を見て怜奈が聞いてくる。


「調べたいことができたんだ。司書館に戻りたい。シズ戻してくれ。」


僕はシズに近づきながら頼む。シズは少し悲しそうな顔をし、急ぐ僕とは対照的にゆっくりと椅子に腰を下ろすと、想像もしない言葉が聞こえた。






「それはできないな」






「ど、どうして!?」


「……だって、君たちがここを今出て行ってしまったら、もう戻ってこないかもしれないじゃないか。僕は長い間一人でここで過ごしてきたんだ。もう一人で過ごすのは嫌なんだよ!」


長い間この場所に一人で過ごしていたシズの考えは良くわかる。だが、それよりも今は気になることができてしまったので、再びシズに頼む

「そんなことない。会いに来るから、約束する。だから、開けてくれ」

「嘘だ!約束なんて、信用できない!嫌だ、嫌だ……」


シズは嫌だと連呼し始めて、もうこちらの話を聞いてくれない。

僕はどうにかここから出してもらおうと考えを巡らせる。

何かヒントはないかと周りを見渡すと、困った顔をしている怜奈と目が合う。

そして、僕はある一つの考えを思いつく。





「分かった!シズ。僕らとクワイアになろう!」





僕はシズの手を握り、真っ直ぐな眼差しでシズを見つめそう提案する。

シズは嫌だと連呼するのをやめ、少し頬を赤らめきょとんとした顔で僕を見つめている。

僕はシズが黙ったことを確認しチャンスだと思い、再び話し始めた。



「クワイアを組むということは、一種の家族になるということだ。家族には絶対に会いに来ない訳にはいかないだろう?だから、僕らとクワイアになろう!」

「でも、僕はここから出られないから役に立たないよ」

「役に立たない訳ないよ。司書館の本をすべて読んだその頭があるじゃないか。それは、とても大きな力だよ。『マエストロ神話』の事だってシズがいなかったら見つからなかったかもしれないじゃないか。シズはもう僕たちの力になっているんだよ。だから、組もうよ!クワイアを!僕らと!」


僕は勢いのまま捲し立てる。

その言葉を聞きシズは、すこし固まった後


「うん!」


とうなずいた後、泣き出してしまった。僕はシズを落ち着くまで抱擁してあげた。


このお部屋を出られないシズの登録は苦労すると思っていたが、案外とんとん拍子に進みすぐに僕らはクワイアになった。





それからシズの部屋でテンションの上がったシズの話を聞いて過ごした。


「少し話過ぎて疲れた。こんなに楽しかったのは生まれて初めてだ。ありがとね。また、今度続きは話そう。君たちは今日はもう遅いし帰りな。外はもう真っ暗だ。司書館は閉館しているからドアは外に繋げてある。」

「えっ、もうそんな時間なの!?」

「楽しい時間はあっという間だな。僕も楽しかったよ。シズ、今日はありがと。ほら、怜奈帰るぞ。」


僕は怜奈の手を引きドアを開ける。外は綺麗な夜空が広がっていた。

僕らは外に出て振り返る。


「じゃーね」


怜奈は大きく手を振りシズに別れを告げる。

僕はシズに近寄り、耳元であることを告げる。それを聞いたシズは静かに


「分かった。」

と言った。

怜奈はその光景を見て、とても騒いでいたが僕は無視してシズに手を振る。


「またね」


そういって、僕らは帰路についた。


後ろからノイズ音が聞こえ振り返るともうさっき出てきた扉は無くなっていた。










シズと別れてから、僕ら二人は黙って歩いていた。

先に口を開いたのは怜奈の方だった。


「さっきの話、なんで教えてくれなかったのよ」


さっきの話とはおそらく僕のお母さんの話だろう。怜奈は少し不貞腐れたように聞いてきた。だが、僕は黙ったまま答えることができなかった。


「私たちはクワイアを組んだんでしょ?ちょっとくらい頼ってくれてもいいのよ。なんたって私たちは一種の家族なんだから!」


怜奈はそう笑顔で言ってくれた。僕はその言葉にどこか心の中が落ち着くような、そんな感覚を感じた。


「ありがとう、怜奈。今度からは相談するようにするよ。」


僕は微笑んで怜奈の頭を撫でてやった。怜奈は嬉しそうにはにかむと再び前歩き始めた。


「ってことで、海空。今日海空の家に泊めてくんない?」

「……はい?」

「私たち家族なんでしょ?それに、私の家少し遠いし、こんな夜遅くに女の子を一人で歩かせる訳ないわよね?」


そんなことを言われては断るわけにもいかず、それから明日のことなどを話しながら、二人で帰り、怜奈を家に連れてきた。

おばさんに色々訴えかけられるような目をされたが、僕は無視をしておいた。

僕は先に風呂に入り、部屋に戻って怜奈を待とうと思っていたが、疲れが溜まっていたのかいつの間にか眠ってしまっていた。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私はお風呂を済ませて、万が一に備え身だしなみを整え、海空の部屋に向かっていた。

「よし」


と、気合いを入れ


「海空~、お風呂あがったわよ~」


私はそう言いながら、部屋の扉を開けると、そこにはすでにベッドで眠りについている海空がいた。


「はぁ~。ちょっとでも期待した私がバカみたいじゃない。」


私はそう呟きながら、寝ている海空に近づく。そして、海空の顔を覗き込む。

彼の幼いような可愛いようなだがその奥に潜んでいる凛々しい顔が怜奈を引き付ける。

引き付けられるまま、怜奈は海空の額にキスをする。



その後、怜奈は我に返り、布団に入るも自分のした行動を思い出し、もがいてはまた思い出してを繰り返し、眠りについたのは外が明るくなり始めた頃だった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




夜も遅くなった中、男女二人の声が遠くから聞こえ始める。


「さっきの話、なんで教えてくれなかったのよ」

「私たちはクワイアを組んだんでしょ?ちょっとくらい頼ってくれてもいいのよ。なんたって私たちは一種の家族なんだから!」

「ありがとう、怜奈。今度からは相談するようにするよ。」


そういって、女の方だけがこちらに歩いてきた。それを狙い魔法を唱えようとすると女が再び振り向き男と話し始める。それを見てとっさに魔法を唱えるのをやめる。

彼らの会話を聞き女が一人になることがないと知り、

「チッ」


と、舌打ちをする。計画が中止になってしまったからである。

明日は司書館へ向かうと聞き、また次の機会を狙うため身をひそめる。


絶対音感の方がいらっしゃれば、ここの表現は違うなどの意見を送ってもらえると嬉しいです。

Copyright(C)2021-みっちゃん

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