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第1楽章 誕生日

初挑戦の初投稿なので至らないところもありますが、温かく見守ってくれるとありがたいです。感想や意見はどんどん受け付けてますので、送っていていただけると嬉しいです。

第1楽章  <誕生日>



「ありがとうございました」


ここの店主の宍戸愛は笑顔でお客さんを見送った。

ここは、僕、宍戸海空のお母さんがやっている小さな楽器屋さんだ。そして、僕たち二人の家でもある。店は毎年黒字とまではいかないが、町の人からの支えもあって、何とかやっていけている。


「海空~、明日は祭神式で忙しいだろうから今日誕生会やろうと思の。

だから、いつもの店で材料買ってきてくれない?必要なものは書いておいたから」

「いいよ」

「ありがと、行ってらっしゃい」

「いってきます」


笑顔で見送ってくれる母を背に僕は家を出た。




12歳の誕生日を迎えると宮殿で祭神式を受ける。

祭神式とは自分のパートを鑑定してもらう儀式で、パートは神様からの贈り物とされていて、ソナタ、バリエシ、ミヌエト、ロンドの4種類があるとされている。それぞれ系統があり、ソナタは回復系、バリエシは援護系、ミヌエトは守備系、ロンドは攻撃系となっている。魔法を使うときには自分のパートの系統と同じであればその効果が二倍になる。魔法を使うのが当たり前の世の中では、パートはとても大切なのである。


「おばさん、これください」

「おー、海空かい。今日はたくさん買ってくのね」

「明日、僕の誕生日なんだ」

「あら、おめでとう。じゃあ、祭神式も明日なのね。」

「うん、冒険者になってお母さんに楽にさせてあげるんだ」

「がんばってね」

そういって僕は店を離れた。


祭神式では半分以上の人がバリエシと鑑定される。バリエシは援護系となっているが、生活魔法として使われている。よって、冒険者になるためにはそのほかの三つのパートと鑑定されなければいけない。冒険者は魔物を倒したりすることでお金を稼ぎ、普通に生活するよりも多くのお金を稼ぐことができる。

『冒険者になってお母さんを楽にさせてやるんだ』



そうこうしているうちに家に到着した。

「ただいま」

「あっ、みそら。おかえりなさい………」

「どうしたの!?」

僕を迎え入れてくれた母はいつもの笑顔ではなく、涙を流していた。

「さっき宮殿の方がきて、この店の営業は不当営業だといわれて、営業停止にされてしまったの・・・・。

 ここ一年間の納税が全くされていないって」

「え..うそ、嘘だ!」

「私も何かの間違いだって言ったのよ、でも…だめだって。納税もちゃんとしているはずなのに。営業再開するには一年間の納税額50万シリング分を払わなきゃいけないって言われたけどそんなお金うちにはないわよ……」

10シリングでジュース一本ぐらいなので50万シリングは一般の家庭にとっては相当な額である。

「僕が何とかする!」

「え?」

「僕が明日、冒険者になるよ!それで、いっぱいお金を稼いで払うよ。50万シリング」

「海空、、ありがと」

「今日は海空の誕生日会なのに泣いてちゃダメね。こんな時だからこそ笑顔にいかなくちゃ」

僕はお母さんが空元気だとわかっていたけれど、何も言わずに、うなずいた。




それから僕の誕生会はひっそりだが、盛大に行われた。僕の大好物をたくさん作ってくれてとても楽しかった。これまでの楽しかったことを話したり、歌を歌ったり、ゲームをしたり、さっき起こってことを忘れてしまうぐらいだった。そして、誕生会も終わりに近づくと、お母さんがおもむろに箱を取り出した。

「誕生日おめでとう!!」

中を開けてみるとそこには銀色に輝く親指程の小さなホイッスルが入っていた。

「ありがとう!大切に使うよ」

そういって笛を首から掛け、息を吹き込んだ。


ピィ~ヒョロロ


綺麗な音色とともに誕生会は終わりを告げた。




今日はいよいよ祭神式の日である。

昨日の一件によって僕の緊張はより一層強まっていた。

ガチガチになっている僕に気付いたのかお母さんがいつもの笑顔で話しかけてくる。

「そんなに緊張しなくていいのよ、いつも通りで。海空なら大丈夫だって信じているから。

 それに、これがあれば大丈夫よ」

そう言いながら僕に昨日の笛を掛けてくれた。

「うん、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

僕は笑顔で家を出た。そしてお母さんもまたいつもの笑顔だった。


祭神式の場所である宮殿まで行くときに村長さんに話しかけられた。

「海空くん、今日は祭神式かい?」

「そうです」

「いいパートになれるといいね」

笑顔でそう言ってくる村長元気よく返事を返し、僕は再び足を運ぶ。


宮殿に着くと、すでに子供が何人か集まっていて、周りには見物人たちがちらほらいた。

「今日は人数が多いからバリエシ以外はたくさん出るかの~」

「3人出るとすごいわね」

祭神式の開始時刻になり、神官は笑顔で開始の合図をかける。最終的には子供は20人ぐらい集まっていた。

祭神式は一人ずつ宮殿のアニマと呼ばれる宝石の前に立つ。すると輝きに包まれ、子供たちにパートが与えられている。それを神官が鑑定して発表される。

一列に並びはじめ、僕は最後尾に並んだところで、鑑定が開始された。

前の子供たちがどんどんと鑑定されていき、僕の前の子の鑑定が始まる。

一瞬の光に包まれ、そのあとに神官が

「バリエシ」

と告げると、見物人のざわつきが大きくなる。それもそのはず、僕の前までの子すべてがバリエシと鑑定されたからだ。10人鑑定して1、2人はバリエシ以外が出てもおかしくないのに、20人も鑑定してバリエシ以外が0人は異例である。

そしてついに僕の番になった。

『冒険者になって、お母さんを助ける』と意気込み足を運ぶ。

少し笑みを浮かべている神官を横目にアニマの前に立つと、一瞬視界が真っ白になる。その後、神官が視界に現れ、目を見開き、息をのんだ後、少し笑みを浮かべて告げる。









「パート無し」




「・・・え?」







そのあとの記憶はほとんどない。

冒険者になると意気込んでいたとは思えないほど肩を落とし、ゆっくりと俯きながら家に向かって歩いていた。

パート無しと言われて、なにかも間違いだろうと何度訴えても、パートは無いと鑑定で出ているの一点張りだった。見物人も驚きを越えて何も言えなく沈黙していた。僕はそこに居づらくなり宮殿を出ていった。お母さんに何て報告しようか、合わせる顔がないなどと考えていると家が見えてきた。

玄関の少し手前で立ち止まる。深呼吸をして、心を落ち着けて、ドアに手を掛けようとしたその時、


'' シ~ミ~、シ~ドレ ''


とピアノのような音の不協和音が二回聞こえ、すぐそののち爆発音とともに僕は後ろへ吹き飛ばされた。

何が起こったのか一瞬戸惑ったが、目の前に広がる光景をみて理解する。

町の人たちが爆発音を聞いて集まってくる。僕は中にいるお母さんを助けに行くために、燃えている家に入ろうとする。

が、しかし止められる

「今行ってしまえば海空まで死んでしまうぞ」

止めたのは村長だった。

「でも、、でも、お母さんがまだ中に」

涙であふれる目を家に向けると、お母さんが一瞬だけ見えた。


『ご・め・ん・ね』


声は聞こえなかったが、そういっているように見えた。

そして、いつもの笑顔とともに火の渦に飲み込まれていく


「おがぁーざーん!!」


僕は泣きながら、その家を見つめることしかできなかった。


僕の誕生日は僕の鳴き声の響く最悪の日となってしまった。


絶対音感の方がいらっしゃれば、この表現は違うとか指摘してくださるとありがたいです。

Copyright(C)2021-みっちゃん

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