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「ねえ、エイダ―の結婚式って明日よね?」

 そう言った幼馴染のメグは、薄ら笑いを浮かべていた。

 今朝、村人全員が聞いた話だ。忘れるはずもない。

 わざわざ確認したのは、ラネがこの話にショックを受けていると思っているのだろう。

 だから笑って頷く。

「ええ、そうよ。村を出てからもう五年くらい? あのエイダ―が聖女様と結婚するなんて、大出世よね」

 メグだけではない。この村に住む同じ年頃の者は、みんな幼馴染だ。

 ここは、王都から遠く離れた田舎の小さな村である。

 まさかこんなところから、魔王討伐に旅立つパーティのメンバーが選ばれるとは思わなかった。

「あの泣き虫エイダ―がねぇ。ううん、もうエイダ―様って呼ばないとね。何せ、勇者パーティのメンバーで、剣聖の称号を授かったのだから」

 そう言いながら、最後の洗濯物を干す。

 イジワルそうな顔をしていたメグは、あからさまにつまらなそうな顔をして去っていく。

 その後ろ姿が見えなくなったあとに、大きく溜息をついた。

 たしかに村の子ども達の中でも、エイダ―とラネは特に仲が良かった。

 昔は身体が小さく、いじめられていたエイダ―を、ラネはいつも全力で庇っていた。

 放っておけない弟のような存在だったのに、いつのまにか背も伸び、剣の腕を磨き、あっという間に冒険者となって村を出て行ってしまった。


 それが五年前。

 エイダ―もラネも、十五歳だった。

 旅立つ前日に、エイダ―はラネを呼び出して言ったのだ。

「必ず出世して、戻ってくる。そうしたら、俺と結婚してくれないか?」

 何となくお互いを意識していたのは事実だ。

 ラネも、だんだん逞しくなるエイダ―を異性として意識するようになっていた。そんな彼が村を出てしまうことが悲しかった。

 だから彼の申し出に、笑顔で頷いた。

「ええ。待っているわ。わたしをエイダ―のお嫁さんにしてください」

 そうして、彼とふたりで村長と互いの両親に挨拶をして、婚約者となった。

(まさか五年後に、エイダ―の結婚式の知らせを聞くなんてね)

 ラネは自嘲して、空を見上げる。

 エイダ―と聖女アキの結婚は、少し前に発表されていたようだ。けれど田舎の村に届いたのは、今朝のこと。

 もう結婚式の前日になっていた。


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