008
第三階層にはスケルトンと呼ばれる人骨型魔物が出現する。
スケルトンは少しだけ知能があるのか、二体現れた時に連携することがある。が、今のイリアには関係なかった。
「アイスタッチーーアイスタッチ」
アイスタッチでスケルトンの動きを一時止め、連携をする前にスケルトンは崩れていく。
キョウは錬成したヒールポーションを片手にイリアの狩の様子を伺いつつ少し離れてついていく。
「見事にポーションを使うタイミングがないね」
「やっぱりいつもより上手くいってる気がします。
装備の力もそうだとは思いますが、なんというか、すごい見えるというかやる気が出てるというか」
「そうなんだ。ま、調子がいい事は良いことだからサクサク進もう〜」
イリアの前のパーティーでは剣士、重戦士、アーチャー、ヒーラーとバランスの良いパーティーだった。まだ結成浅く、連携不足が如実に現れる練度の低いパーティーだったと言えるが、それでも今の二人パーティーよりは普通に考えて楽なはずだ。
では何故今の方が上手くいっているとイリアは感じているのか。
それは、責任と信頼からだった。
キョウを守らなければいけない立場になったイリアは孤児院の皆を守るような責任感感じていた。
そして前のパーティーでは役立たず呼ばわりされたイリアを信頼し、全て任せてくれているキョウならどんなミスをしても怒らないだろう、という安心も感じていた。
こういった心理的安全性がイリアの実力を十二分に引き出していた。結果、十分な装備とやる気により以前のパーティーよりも攻略がスムーズにいっている。
第三階層を攻略する頃にはキョウのレベルは2に上がっていた。
キョウはレベルが上がったことによってゲットしたスキルポイントを調合スキルに振る。
※調合・・・錬金術師の基本スキル。薬品の錬成が可能。スキルレベルの上昇に伴い、錬成速度向上と錬成可能な薬品の種類が増える。
特に問題なく、第四階層も無事攻略が終わり第五階層に二人は足を踏み入れた。
「ここが第五階層ですね。中堅含め、多くの冒険者はここに留まります」
「イリアの到達階層だったよね。第五階層で足止めするっていうのは何故なの?」
「それは、ここが一番楽に稼げるポイントだからなのが大きいですね」
会話しながらイリアは慣れた様子で先陣切って歩く。
そして、少し歩いたところで立ち止まった。
「これ見てください」
イリアが指指した地面には一際緑色の濃い草が生えていた。
「ああ、これは薬草の素になる草だね」
「ええそうです。この草の収集が低階層では一番楽に稼げる方法で。ギルドが年中発行しているクエストもこれなので、食いっぱぐれることはないですし。
ここを超えて次に生活できるほど稼げるポイントと言えば、20階層を超えないといけないので、足踏みしている冒険者が多いんですよね」
「成る程ね。上に登ろうと頑張れば生活できなくなり、ここで生活するために時間をかければ上に登れなくなるのか」
「はい。自力で登ろうとすると、中堅以下の冒険者はここでの滞在時間を伸ばしつつ、少しずつ階層を攻略する方法を取ってますね。
もしくは支援者をどうにか見つけてくるしか……」
「一気に21階層にはいけないのかな?」
「無理無理無理。無理ですよ。
10階層と20階層のボスモンスターを倒さないといけないから、装備やスキルを揃えないといけないので、そんな方法は取れないはずです」
ま、分かったよ。とキョウはそっけなく返事をする。そんなキョウに対しイリアは本当に理解しているのか疑問の表情を見せるが、キョウは気にしないように言葉を発する。
「取り敢えず、目標の第五階層に来れたので、ここでレベリングをするよ。
そのレベリング方法は、名付けて……池の水は毒の味作戦だ」