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アシタの塔はキョウの糧  作者: グリドナ
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004

 ダンジョンで魔物を倒すと自然に消えるのだが、これはダンジョンに吸収されているという見解が一般的だ。

 では、どうやってダンジョンで討伐した魔物の数を報告するかというとーー。


 「もうそろそろ帰ろっか」

 「そうですね、かなりの数の魔物を倒しましたし。

  ーーPTステータス」

 イリアが呟くとパーティーで討伐した魔物の数、ドロップアイテム一覧がメンバーの頭に浮かんでくる。


 ・魔物討伐数:587

 ・ドロップアイテム:レッドリング × 33

           マウスの皮 × 21

           マウスの爪 × 15


 行動速度1パーセント向上の付与がされた指輪装備が15個。さらに15個のうちの3つの指輪で魔力増加1パーセント増加の付与も併せて付与されていた。

 残りの18個は何も付与されていない、いわゆるゴミ装備なため皮と爪と一緒にダンジョンに捨てた。

 捨てられたドロップアイテムはしばらくするとダンジョンの地面に沈んでいき、吸収される。


 (あと5個か。思ったよりも早く終わりそうでよかった)

 キョウは予定より早く塔に登れる算段がついて嬉しそうに微笑み、イリアと共に宿に戻っていった。


 キョウ達は宿屋の主人にパーティーステータスを使って報告し、夕食をいただき宿泊する。

 翌日、用意された朝食を頬張り、ダンジョンに行ってくるとキョウが宿屋の主人に声をかけたところ引き止められる。


 「今日も行くのか?」

 「はい、行ってきます」

 「そうか、ちょっと待て……これをやる」


 宿屋の主人はカウンター下から出したものを並べる。


 アルケミスト用装備一式

  ・収納ベルト(調合済みの薬品を8本まで収納できる)

  ・上下の服(スキル効果のパーセンテージ強化と行動速度向上、状態異常抵抗向上が付与)

  ・アルケミスト本(スキル効果の向上。中身は何も書かれていない)

 魔術師用装備一式

  ・魔術師のローブ(回避力向上、精神力上限5%強化)

  ・上下の服(攻撃力、回避力向上)

  ・魔術師の杖(精神力、スキル効果の向上)


 キョウは父から聞いていた内容を思い出していた。

 (これが父さんが言っていた40階層までは使える装備一式か。この主人が何故そんなものを持っているかは分からないけど、ありがたく貰っていこう)


 「もらっていいんですか?」

 少々の遠慮の気持ちを見せるキョウに主人は持って行けと答える。

 「「ありがとうございます」」

 キョウとイリアは礼を言って受け取り、部屋に戻って早速着替えていそいそとダンジョンに向かっていった。



 今日もイリアがメインで獲物を狩っていく。

 キョウはドロップの確認と回収をしながらずっと感謝していた。不満も漏らさずあくせくと動いてくれるイリアに対して申し訳ない気持ちが積乱雲のように積もっていく。ときどき危険を知らせたり、指示を出したりするけどイリアはそれをどう思っているか不安になる。確かめたい気持ちもあるが、PT解消につながる恐怖もありキョウは何も言わずにいた。


 午前中のうちに集めたかった指輪5個が集まった。

 これでこのダンジョンで集めたかった行動速度プラス1パーセント指輪20個が揃う。さらにそのうちの5つには魔力増加1パーセントが付与されている。

 

 「これを装備することで僕らの行動速度が10%上がるので、かなり強化されますよ」

 「あまり変わらないように思うのだけど、本当なの?」

 「スキルを撃ってから素早く行動可能になることは最も重要だ。と、父さんが言ってました。

  まあ本当かどうかは実戦で確認していこう」

 「ええ、そうね」


 言葉尻からイリアはまだ半信半疑であることが窺える。何故なら一般の冒険者が重要視するのは一撃の強さだからだ。そこにはDPS(1秒間のうちに魔物に与えるダメージ量)の考え方は無い。

 そうなった理由としてはいくつかあるが、一つは攻撃が強いほど塔攻略PTを映すモニターに映えるからだ。弱い魔物を一撃で屠る様は見ている観客を喜ばせる。逆にチクチク攻撃する様は逃げているようで好ましくされていない。

 また、攻撃と攻撃の間は個人の力量によって如何ともできると考えられている。スキル発動後の硬直時間などは個人の技能でカバーすることが冒険者の一つの重要な力量だとも思われている。

 こういった考えが必ずしも間違いというわけでは無いが、攻撃の威力だけを追い求める方法はどこかで詰まってしまうとキョウは父から聞いていた。


 「取り敢えず必要なものは揃ったので、父さんに言われた塔に登る許可は得たことになる。

  だったらさっさと塔に戻って登っていこうと思うんだけど、いいかな?」

 「ええ、異論はありません。何ならダンジョンに寄り道せずに、昨日PTを組んでから登ると思っていたぐらいですから」


 イリアとキョウは塔に戻ることとした。その前に、宿に戻ってお世話になった宿屋の主人に声をかけることにした。

 「今日は宿泊しなくて大丈夫になりました」

 「そうか。また気が向いたら魔物を退治しにきてくれよ」

 「はい。いつかまた来ますね」

 新しい仲間が見つかったときにまた来ることはキョウの中で決定事項だった。



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