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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第6章 キーンの冬期休暇

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第68話 キーン、ミニオンを改造する。


 ソニアが年末年始の休暇中自宅に帰れないため寮で過ごすというので、キーンがソニアを自宅に連れ帰った。その途中、召喚魔法使いの襲撃を受けたが難なく退けることができた。


「そろそろ昼食の準備を始めますから、二人は居間で休んでいてね」


「手伝います」


「アブリルさん、ありがとう。それじゃあ手伝ってもらいましょう。

 キーンは、……、手伝わないでいいです。

 アブリルさん、台所はこっちです」



 アイヴィーがソニアを連れて台所に行った。なぜか手伝わなくていいと言われたキーンは、居間で一人で座っているわけにもいかず、浴室でも掃除しようかと思いタワシやバケツといった掃除道具を用具入れから持ち出して浴室に向かった。


 浴室に入って掃除しようと思ったが、特にどこが汚れているわけでもない。それでも浴室の床ぐらい磨いておこうと水を魔術で流しながらタワシでこすっていくことにした。


 しばらくそうやって浴室の掃除をしていたキーンだが、自分のしていることはどう見ても単純な作業だ。これならミニオンでも可能な作業に思えてきた。


 既存のミニオンではもちろん無理だが、ミニオンという魔術的入れ物は既にある。その中の一部分を変更して、


 1、掃除する範囲を決める。(範囲決定部分は既存の部品がある)

  1-1、全体を格子状に区切り、区画を作る。以降は各区画で作業する。

 2、水を出しつつタワシを動かす。

  2-1、タワシを掴む(キャリーミニオンは手紙など運搬物を内部に取り込んでいたが、タワシの半分だけ内部に取り込むように変更する)

  2-2、水を出す(水を出す部分は既存の部品がある)

 3、汚れを取るようタワシを前後左右に移動する。

  3-1、汚れを見つける(新規に作る)

  3-2、汚れの上で体内に半分取り込んだタワシを前後左右に移動する。その際上から少し力をかける。(新規に作る)

 4、汚れがない区画は、一度拭き掃除してその部分は掃除範囲から除外する。

 5、掃除範囲がなくなるまで、2から4を繰り返す。


 新ミニオンであるお掃除ミニオンの製作方針は固まったので、新規作成の部品を考えていく。順番にでき上った部品をミニオンのもとに組み込み不要な部分を取り出し、修正部分を修正していく。ついでなので、床掃除もできるよう魔術部品も考えてお掃除ミニオンに追加した。


「こんなものかな。

 試しに、お掃除ミニオン、浴室」


 浴室掃除にはミニオンはタワシを持ち水を使うが、床掃除などでは雑巾を持たせるように考えているため、キーンは一応浴室を指定してミニオンを作り出した。


 水を出すにはそれ相応の魔力を使うため、ミニオンに込めた魔力はキーンにして、多めだった。


 汚れなど何もない浴室だったが、キーンの視界を掃除範囲として認識して生まれたミニオンは、浴室の床に置いてあったタワシを体の表面に半分埋まる形で取り込んで、タワシの付近から少量の水を垂らした後、タワシを前後左右に動かして浴室の床の上を移動し始めた。ある程度移動すると、多めに水を流して床面を洗い流していく。


「ほう。思った以上に役に立ちそうだ。浴室はこれ以上掃除しても仕方がないから、廊下を掃除しよう」


 キーンは一度ミニオンを消して、用具入れから雑巾を持ちだし、水をバケツにいれて廊下の端に立って、


「お掃除ミニオン、廊下」


 生れたミニオンはキーンの持つ雑巾を体に4分の1ほど埋めて、水の入ったバケツに雑巾をつけ、何度か上下左右に動かした後、いったん雑巾を内部に取り込んで水気みずけを絞り、雑巾の4分の3を外部に出して、廊下を行き来して拭き掃除を始めた。拭きながら水分が少なくなってくると、最初に雑巾を絞った水を雑巾に戻して拭いているのでだいぶ長い間拭き掃除を続けられる。ある程度拭き掃除を終えたら、バケツに戻って最初のように雑巾を水の中で良く動かして、汚れを取ってまた床掃除に戻っていく。


「見ているだけでも、何だか楽しくなるな。やりようによってはもっと複雑なこともできそうだし。最初に組み込むだけじゃなくて、後から指示したことができるようになればもっと役に立つんだがなー。うーん」


 さきほど帰宅途中襲撃された時見た召喚獣はおそらく召喚される都度つど、命令されたことをこなす能力があるのだろうが、ミニオンの場合(あらかじ)め機能を作り込んでおく必要がある。


 ミニオンの拭き掃除を眺めながらじっと考え込むキーン。考えながらミニオンを作ったり消したりしている。


 まず、ミニオンの命令記憶部分。確かに10数個くらいの動作を覚えさせることはできるが、20個以上となると格段に難易度が上がり、キーンですら簡単ではないと感じてしまう。


 要は単純化だ。動作が20個近いお掃除ミニオンは同時に五つ作るのが限界だった。動作を10個以下にするとミニオンを作るのは格段に簡単で、100個でも200個でも作ることができそうだった。


 ということは、命令記憶部分だけ複数個作り、その上に優先順位付けをする部分を乗っければ、事実上無限に複雑な動作が可能になるはずだ。


 無限の命令を覚えるミニオンに対して、無限に命令を与えるのはそれはそれで大変となる。ミニオン自身が周囲の状況を見聞きして必要な動きを覚えていくようにしたいものだ。


『考えれば考えるほど難しそうだ。……。

 あれ? アイヴィーは人ではなくマキナドールというアーティファクトだとじいちゃんが言っていた。アイヴィーは言葉もしゃべることができるし自分で考え行動している。僕が今考えていたミニオンの目指すべき先がマキナドールなんじゃないか?』


『となると、魔力が抜けると消えてしまうミニオンじゃなくて、消えてなくならないものでそういったものを作る必要がある』


『魔力を閉じ込める。魔術を閉じ込める。……』


『そういえば、「龍のアギト」は大剣に強化魔術が定着した物だ!』


『これならいける! ミニオン定着! これだ!』


 キーンは、廊下に立ってソニアのこともアイヴィーのことも忘れて、じっと考え込んだまま動かなくなってしまった。





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