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ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏(はんぺい)-  作者: 山口遊子
第4章 9月危機、光の騎兵隊

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第39話 軍学校臨時会議。付録:サルダナ軍編成


 校長から呼び出されたゲレード少佐は訓練場から足早あしばやに会議室に向かった。


 会議室に入ると、軍人教官がすべてそろっていた。


「みんなそろったようなので、さっそく始めよう」


 会議室の一番前の席で、話を始めたのは軍学校校長、フォールマン・グッドオールド退役大将だ。


「北部国境のハイバルとうげを越えて、セロト軍が北部地方に侵入しつつあるとの情報がもたらされた。峠の第1砦は既に抜かれている模様だ。今のところ敵の全容はつかめていないが、わが方は北部地方を管轄する第2兵団と北西部管轄の第3兵団が向かうことになる。王都の近衛兵団はこれまで通り王都の防衛。残った第1兵団は後詰ごづめとして、第2兵団、第3兵団の後に続くようだ。

 第2兵団はすでに増援部隊を北部要塞に先発させていが、セロト軍が山岳地帯の第2、第3砦を抜いて要塞を攻撃するまでには、増援部隊は間に合わないだろうとの見方だ。

 ここ軍学校には、今のところ何も指示は来ていないが、情勢を見守る必要がある」


 セロトとは、キーンのいるサルダナ王国の北から、北東に広がる大国だ。国土的には、サルダナ王国の6倍から7倍の広さを持つ。従って人口も多く軍の規模もサルダナの5倍はあると考えられている。ただ、セロトは西に接する大国ローエン、東で接する超大国ソムネアと絶えず紛争を起こしているため、軍にそれほど余裕があるわけではなく、これまでサルダナはセロトの侵攻を撃退し続けている。


「ランデル少佐とサール中尉には近衛兵団への帰還命令が出ている。生徒たちを解散して速やかに帰還するように」


「「はい」」


 返事を返したランデル少佐が続けて、


「校長、一つだけよろしいですか?」


「なんだね? ランデル少佐」


「実は、アービス生徒のことですが」


「おう、キーン・アービスだな」


「はい。そのアービスです。彼はとんでもなく優秀な魔術師です。いずれ近衛兵団からなにがしかの依頼が彼にあるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」


「依頼の内容にもよるが、まさか戦地にやるなどということはあるまいな」


「それはありません。時間がありませんのでそれでは失礼します」


 そういったランデル少佐は、サール中尉を引き連れて会議室を出て行った。



「ランデル少佐が言っていたことについて、担当のゲレード少佐は何か知っていることはあるかね?」


「ランデル少佐から話は聞いております。アービス生徒は全6種類の強化魔術を馬に対して同時にかけることができるという話です。

 しかも馬の頭数とうすうには制限もないそうで、時間の許す限り魔術をかけ続けることができるとのことです。

 アービス生徒がかけた強化魔術の持続時間をサール中尉は昨日確認したそうで、持続時間は8時間少々あったと聞いています。

 負荷の大きさで強化魔術の持続時間は前後する可能性はありますが、もし襲歩しゅうほ並みのスピードで5時間も走り続けることができれば装備が重い軍馬でも、200キロから250キロ走れます。

 アービス生徒は馬だけでなく自分以外のに対しても同じように強化魔術を全6種、重ねがけできるとも言っていたようですので、騎乗者も長時間の高速騎乗に耐えることができると思います」


 ゲレード少佐の言葉で会議室にいた面々に驚きの声が広がった。さすがに万を超える近衛兵団の兵士全員に強化魔術をかけることはできないだろうが、その強化魔術が8時間も持続するなら、そこらの歩兵でさえ重い装備を背負って時速10キロで何時間も移動できそうだ。6時間で60キロ。これは今までの騎馬の丸1日、10時間ほどの移動距離に相当する。フル装備の歩兵部隊の場合、無理をして1日20キロの移動が限界だったが、それが半日で3日分の移動が可能になる。まさに軍事的な革命だ。


 王都には現在近衛兵団がいるだけで、軍本営の伝令を除いて騎兵の数は1個中隊100騎のみ。なので、確かに近衛兵団がキーン・アービスにそういった(きょうか)依頼をすることは考えられる。


「そういうことなら、アービス生徒に負担にならない範囲で軍に協力させるとしよう。ゲレード少佐、あとでアービス生徒に伝えてくれ。

 心構えの訓練になるので、生徒達にも状況を伝えておくように」


「校長、明後日は学校は休みですが、いかがしますか?」


「明後日の休みは予定通りでもよかろう。

 ゲレード少佐、アービス生徒だけには悪いが休みの間、寮で待機していてもらおう」


「了解しました」


「以上だ。それでは解散」


 集まった軍人教官たちが会議室を出ていき、現在生徒を残したままで午後からの授業じつぎを中断していた者はそのまま足早に戻っていった。



 ゲレード少佐も急いで武術訓練場に戻っていった。


 訓練場の中では、キーンも含めみんな指示通り素振すぶりを続けている。


「よーし、素振りやめー! 全員集合!」


 ゲレード少佐の号令で、生徒たちは少佐の前に駆け足で集合した。


「先ほど中座した理由だが、セロト軍がハイバル峠を越えて北部山岳地帯に侵入したようだ。峠の第1砦は既に抜かれている。山岳地帯の第2、第3砦は健在らしいが予断は許されない。現在第2兵団と第3兵団が北部要塞に向かっている」


 ゲレード少佐の言葉を聞いているあいだ、一同は押し黙っている。中にはぎゅっと手を握りしめている者もいる。ハイラル峠に建設されていた第1砦には200名ほどの兵士たちとそれに見合う軍属が詰めていた。砦の守備部隊の中に係累けいるいのいた生徒かも知れない。


「最悪この王都が戦場になる場合もあり得る。軍学校生徒といえども一般人ではなく軍人の端くれだ。各自覚悟はしておくように」


「「はい!」」


 最後の言葉に、生徒たちが大きな声で答えた。ゲレード少佐はそれに大きく頷き、


「現在我々にできることは勉学と訓練にはげむことだけだ。それでは、10分ほど休憩したら、立ち合い訓練を始める」


 各自はその場に腰を下ろし休憩を始めた。キーンもまねをしてその場に座っていた。


 そのキーンの座っている場所にゲレード少佐がやって来て、


「アービス、近衛兵団からアービスに強化魔術の依頼があるかもしれない。その時は頼むぞ」


「はい」


「ところで、アービスの魔術はほかにどんなのがあるんだ?」


「禁呪指定魔術と言われている魔術以外ではおそらくできない魔術はありません。禁呪について言えば、これまで一度も見たことがないので使えませんが、一度でも見ることができればおそらく使えると思います」


「禁呪指定魔術というと、魔術師団の魔術兵たちが使う集団攻撃魔術だよな。それすらも個人で発動できるというのか?」


養父ちちの話によると、私にかかると簡単に発動できそうだという理由で、禁呪指定魔術の書かれた文献も見るのを禁じられていました」


「なるほど。大賢者の判断というわけか。ただ将来は使う必要が来るかもしれんな」




[付録]

サルダナ軍

軍本営(通常王宮宮殿内に設置されている)

 近衛兵団(王都セントラムの防衛)

  本営+50個中隊+1個騎兵中隊+5個魔術師中隊

 第1兵団(ダレン方面:西部から南部)

  本営+150個中隊+5個騎兵中隊+15個魔術師中隊

 第2兵団(セロト方面:北部)

  本営+100個中隊+1個騎兵中隊+10個魔術師中隊

 第3兵団(ローエン方面:北西部)

  本営+100個中隊+1個騎兵中隊+10個魔術師中隊

 魔術師団

  本部+45個中隊(本部5個中隊、各兵団に合計40個魔術師中隊を派遣)


サルダナ軍は中隊を基本単位として運営されている。


歩兵中隊:200名(各50名の4個小隊)

 歩兵小隊:50名(各10名の5個分隊)

騎兵中隊:100騎(各30騎の3個小隊+斥候分隊10騎)

 騎兵小隊:30騎(各10騎の3個分隊)

魔術師中隊:40名(各10名の4個魔術師小隊)

  魔術師小隊:10名


5個中隊を大隊、10個中隊を連隊としている。



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