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第176話 バーベキュー大会4、ボルタ兵曹長とスザンナ


「クリス、どうせだから、僕の大隊の中隊長たちを紹介するよ。

 こっちの女性が第1中隊の隊長のソニア・アブリル少尉。クリスにも話したことがあるけれど、軍学校の1号生徒代表。一番の成績優秀者」


「ソニア・アブリルです。ソーンさん」


「あなたが、アブリルさんね。キーンがよくあなたのことを話してたわ」


「そ、そうなんですか?」


「事情があって実家には帰りづらいので、長期休暇中にはキーンのうちにいるとか聞いているわ」


「そ、そんなことまで。……」


 ソニアは耳を真っ赤にして黙ってしまった。


「ほとんど何も考えていないキーンだから、わたしも変な意味で心配はしていませんから大丈夫です」


 ソニアが耳を真っ赤にしたので、不思議に思っていたキーンだが、何だかクリスが事情を理解していてソニアをなだめているようなので、良く分からないままホッとしたようだ。


「次が、第2中隊長のトーマス・ブルマン少尉」


「トーマス・ブルマンです」


「僕の大隊の中隊長になった5人は上からの成績順だったようで、トーマスは学年2位、

 そして、第3中隊長のビリー・キング少尉」


「ビリー・キングです」


 ……。


 中隊長5人を順に紹介していった。


 他の生徒たちも名前を呼んでもらいたかったようだが、きりがなくなるので、


「後の連中は、僕の同級生。みんないい連中ばかりの軍学校に転入できて、本当に良かったと思ってる」


 そのキーンの言葉で、クラスメイト達から歓声が上がった。





 こちらは、キーンたちが同級生たちに囲まれて談笑しているところから少し離れたところで話をしているボルタ兵曹長とクリスの護衛のスザンナ・ローレル。


「母上が亡くなられたそうで、残念だったな」


看取みとることができただけでも幸運だったよ」


「そうか。

 ソーン家の護衛になったところを見ると軍に戻る気はないんだな?」


「そういうことだ」


「お前も聞いていると思うが、クリスさんとうちの大隊長殿は婚約されている。今後とも会うことが増えそうだな」


「そう言えばそうだったな」


スーザン(・・・・)(注1)、仕事関係ではなく、そのうち、以前のように一緒に飲みにでも行かないか?」


「それは、いわゆるデートに私を誘っているのか?」


「そうとってもらってもいい」


「お嬢さま次第だが、休みの日があればな」


「その時は知らせてくれ」


「お前はいつでも大丈夫なのか?」


「その時は仮病でも使うから大丈夫だ」


「厳しい訓練で鬼のボルタと呼ばれていたお前もずいぶん変わったな」


「兵隊には厳しい訓練からつちかわれた徹底した規律が必要だと思い、その通り訓練をしてきたのだが、うちの大隊長を見ていれば、俺や兵隊たちが少しばかり意気込んでもあまり意味はないってことが良く分かったからな」


「どういう意味だ?」


「俺自身超大国の軍事アーティファクトなど見たことはないが、大隊長殿は個人でそれに相当するんじゃないかと思っている。

 お前も先日のギュネンでの戦いのことは耳にしているだろう?」


「ここにいる1000名のアービス大隊が全くの無傷でダレン軍5万を蹴散らしたと聞いている」


「その通りなんだが、実際は、兵隊たち全員、大隊長殿の魔術で強化されていたんだ。その強化状態では、何時間走っていようがほとんど疲れないからどこまでも走っていける。飛んでくる矢でもクロスボウのボルトでも、重い長槍で簡単に叩き落とせるようにもなる。刃物で切られ、弓矢が体のどこに命中しようが全く怪我をしなくなる。それほどの強化を大隊員1000人全員だぞ。

 それは、まず置いておいて、途中でダレンの軍事アーティファクト、デクスフェロが向かってきたんだ。それに対して大隊長殿一人で挑んだんだがな、確かにダレンの誇る軍事アーティファクトだけあって、大隊長殿の魔術でも直接的には全く効かなかった。それで、大隊長殿はデクスフェロの足元に一瞬で深さ20メートルもある大穴を作ってその中にデクスフェロを落っことしたんだ。そうしたらデクスフェロの中に入っていた操縦者が、穴の底まで落ちた衝撃で亡くなったようでデクスフェロはそのまま動かなくなってしまった。それで動かなくなったデクスフェロを魔術で簡単に穴から運び出して鹵獲してしまったんだ。すべて大隊長一人でやったことだ。

 それほどの人物だ。まだ成人前だが、古参兵たちでさえ大隊長殿をあなどるような者は一人もいない。お前も知っているだろ? 最初にここに集められた古参兵たちのことは?」


「これ幸いと、各部隊で自分のところの厄介者を独立新小隊に異動させたと聞く。そういった連中が一目も二目も置く成人前の隊長か。

 アービス殿はすでに少佐と聞く。サルダナ軍も大きく変わるのだろうな」


「俺もそう思っている。その近くにいられることは軍人として幸せだ」


「そうだな」


「硬い話はこれくらいにして、そろそろ俺たちもみんなに混ざってバーベキューを食べようぜ」


「急ごう」


 ボルタ兵曹長とスザンナ・ローレルは揃ってキーンとクリスのもとに急いだ。



「スザンナ、ボルタさんと話がちゃんとできた?」と急いでやってきたスザンナにクリスが聞くと、


「はい。休日にデートに誘われました」


 スザンナの横に立っていたボルタ兵曹長は明後日あさっての方向を向いている。それを横目で見ながらクリスがスザンナに、


「フフフ。ボルタさんも積極的なのね。それなら、明日はボルタさんもお休みでしょうし、私は一日中うちにいるから、スザンナはお休みでいいわよ」


「ありがとうございます。

 ボルタ、お嬢さまから許可が出た」


「そ、そうか。

 クリスさんありがとうございます」とボルタ兵曹長がクリスに礼を言うと、クリスは半分笑いながら、


「どういたしまして。

 そういうことだから、キーンは明日うちにきてね。久しぶりにキーン先生の魔術の指導を受けたいわ。そういえばサファイアさんたちが一度キーンの大剣の技を見せてもらって、軽く手合わせしたいって言ってたわよ」


「了解。だったら、僕の『龍のアギト』は今寮に置いてあるからどうしようかな? ボルタ兵曹長に預けている『銘なし』を持っていくか。でも自宅にも予備が欲しいから、武器庫から訓練用の大剣を1本拝借して、9時にクリスのうちに行くよ」


「だったら、うちにも訓練用の木製の武器ならたくさんあったはずだから、その中で適当な大剣を選んでくれればいいわ。キーンが強化するとただの木の大剣が『龍のアギト』みたいになるんでしょ?」


「なると思う」


「それなら、うちの人たちも喜ぶと思うから、1本強化してみせてくれる?」


「いいよ」


「明日はセルフィナたちと待ってるわ」





注1:スーザン

ここではスーザンはスザンナの愛称。


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