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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第51話 成長の真価

 盾の一撃がシドの首筋を掠めた。

 彼が咄嗟に飛び退いていなければ、頸動脈を切り裂いただろう。

 大した反応速度である。


 僕は盾に付着した血を一瞥する。

 道中で刺客から奪ったこの盾は、縁を研いで刃にしていた。

 かなり頑丈な素材のため防御面で優秀で、さらに刃物として使えるようになっている。

 現在の僕の武器は、この盾と杖による光魔術だった。


 シドは顰め面で首を押さえると、苛立った様子で叫ぶ。


「致命傷でも動くかよ。根性だけは一流だなっ」


「根性ではありません。すぐに治せる傷を無視しているだけです」


 僕は脇腹に触れる。

 回転する円盤は既に消滅していた。

 しかし傷口は深く、抉れた内臓がはみ出そうとしている。

 肋骨も砕け散って原形を留めていない。


 普通なら死を待つしかないほどの惨状だ。

 だけど僕の場合は違う。

 脇腹の傷は高速で再生し、破れた内臓が修復しつつあった。

 骨が伸びて元の形状となり、肉が盛り上がって皮膚が覆って隠す。

 シドの攻撃による負傷の痕跡は破れた衣服を残して消えた。


 それを目の当たりにしたシドが驚愕する。


「嘘だろ……それが光魔術の回復力か」


「はい。便利ですよ。あとは痛みを堪えるだけで不死身になれます」


「ハッ! だったら何度だって切り刻んでやるよッ!」


 シドが再び突進してきた。

 周囲に円盤を浮かせながら連撃を放ってくる。

 回転する円盤を僕の死角に動いて、上手く連携を見せてきた。

 光魔術の影響で制御しにくいはずなのに、それにしては相当な精度だ。

 並外れた鍛練の賜物だろう。


 僕は集中して防御する。

 どうしても捌き切れない攻撃が当たって負傷するが、光魔術の治癒で再生した。

 全身が血塗れとなっていく。


 合間で盾の刃による切断を狙うも、シドは目ざとく回避した。

 上手く調節して掠り傷で済ませている。

 もう二度と不意打ちが通じることはないだろう。

 彼の表情を見て直感的に悟った。


 魔力の消費を感じる。

 それでもまだ十分に余裕がある。

 思考も冷静だった。

 むしろ戦いが激化するほどに研ぎ澄まされている。


 ここまで辿り着くために経験した刺客との殺し合いが、僕の実力を飛躍的に向上させていた。

 アイニスさんによると、これが勇者の才能らしい。

 限界まで追い詰められたことで開花したのだ。


 僕とシドは高速で攻防を展開する。

 盾の切り裂き攻撃を見舞う。

 当たったけどまた掠り傷。

 いつの間にか腰に円盤がめり込んでいた。

 鈍い音と振動に合わせて骨が削られていく。

 そのまま強引に盾を打ち込む。


 血みどろの戦いを続けること暫し。

 シドに異変が生じた。

 彼の動きが露骨に鈍り始める。

 僕への攻撃が当たらなくなり、回避の反応が遅れてきた。

 それに本人が気付いていない様子だった。


 予備動作が丸分かりの斬撃を弾いた後、僕はシドに忠告する。


「激しく動かない方がいいですよ。症状が早く悪化しますから」


「あぁ!? 何言ってんだ。ふざけた挑発で気を削ぐつもりなら――」


 言いかけたシドが転倒した。

 彼は立ち上がろうとするが、四肢が震えるばかりで叶わない。

 円盤の魔術が消えて、武器の柄を取り落としていた。


 僕は無表情でシドを見下ろすと、淡々と彼に事実を述べる。


「神経毒です。暴れるほど苦痛が増します。じきに呼吸ができなくなって死に至ります」

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