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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第43話 勇者の観察力

 翌日も刺客との戦いは続く。

 日の出と共に移動し始めた直後、二つの人影が正面から歩いてきた。

 研ぎ澄まされた殺気はこちらに向けられている。

 どちらも外套で容姿を隠しており、性別や種族は不明だった。


 立ち止まったアイニスさんに倣って、僕は動かずに観察をする。

 一瞬でもこれをやることで、冷静さを保つと同時に相手の戦闘法を予測するのだ。


(僕には知識と経験がどちらも足りない。それを補わないといけない)


 右から歩いてくる刺客は長身だ。

 重心が少し傾いているのは、武器を吊るしているからだろう。


 手は隠されているので見えない。

 歩幅に異常はない……いや、少し早足だと思う。

 戦いが始まる前に間合いを詰めたいようだ。


 一般的な魔術師なら急ぐ必要はない。

 距離を取った状態で戦うべきで、むしろ間合いを取ろうとする。

 だから戦い方は、近接戦闘を軸とするはずだ。


 あっ、外套がめくれた拍子に刃が見えた。

 たぶん斧だ。

 仄かに発光していたので、魔力を浸透させているのだろう。


 きっと攻撃は斬撃だけではない。

 魔術にも注意しなくては。

 間合いの変動も視野に入れるべきだと思う。


 数歩後ろを進む刺客は、やや小柄だった。

 こちらは片手に短い杖を所持している。

 つまり魔術師である。


 ただし、ここで決め付けるのは良くない。

 魔術師と思った刺客が、小型のクロスボウで攻撃してきたことがあるのだ。

 相手は暗殺の専門家なのだから、様々な戦法を想定しなければならない。

 アイニスさんからもそう忠告されている。


 その刺客は途中で足を止めた。

 まだ僕達からは距離があるし、相方の刺客は構わずどんどん進んでくる。

 やはり遠距離から魔術を飛ばすのが得意らしい。

 或いは相方の支援や、僕達の妨害でもするつもりか。


 何にしても間合いの外から一方的にやられるのは都合が悪い。

 僕の光魔術では届かない距離だ。

 隙を見て接近したら、一気に叩いてしまおうと思う。


 考察を深めるほど僕の動揺は薄まる。

 冷静に、冷徹に行動できる。


 これが自分なりに見つけた対処法だった。

 戦いが終わったら後悔と嫌悪感に襲われるけど、少なくとも先延ばしにできる。

 今は、それだけで十分だろう。


 殺し合いに雑念はいらない。

 非情かもしれないが、それが真実だった。

 観察を終えた僕は、ゆっくりと杖と盾を構える。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! リュースがゆっくりながらも着実に成長している様で何よりです。 >殺し合いに雑念はいらない。 >非情かもしれないが、それが真実だった。 >観察を終えた僕は、…
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