第41話 処刑人の標的
私はその場で次の目標を考える。
手に入れた資料を参考に、殺すべき標的を挙げていった。
大半が中級か下級の魔族である。
未だ王国各地に潜伏し、現地の魔物を従えて戦力確保を進める輩だ。
状況によっては私が介入するまでもない。
事前準備を怠らなければ、地元の騎士団でも撃退可能だった。
一騎当千とはいかないまでも、それなりの実力を持つ者がいると形勢は安定するだろう。
私もなるべく殲滅するようにしているが、辺境で手が回らない際は情報提供だけで済ませることもある。
それでも解決に向かうことがほとんどなので問題ない。
人間でも十分に勝利できる相手だった。
標的として厄介なのが、人間側の協力者である。
主犯格にあたるような存在がいるのは確信していた。
絶対に逃がすつもりはない。
ただし、その主犯格を殺せば解決するわけでもなかった。
魔族の協力者は無数にいる。
末端まで数えると、結構な規模になってしまうだろう。
人間と魔族は相容れない天敵同士というのが常識だ。
ただ、時として眼前の利益を優先する者がいる。
それが協力者だ。
私個人の調査力では全容を把握できていないが、王国の腐敗と魔族の侵蝕は大なり小なり繋がっている。
これは間違いない。
貴族の不正の裏には、魔族の影が紛れていたりする。
そういった案件に何度か遭遇してきた。
ある意味では魔族よりも厄介な存在と言えよう。
表向きには権力を持っているので、合法的に裁くのが難しい。
たとえどれだけ強力な騎士団がいても、雇い主である貴族には逆らえない。
その構図が巡り巡って魔族の勢力拡大を許す事態になっていた。
(合法では裁けない悪を叩き潰す。それが私の仕事だろう)
国内で危険度の高い魔族はだいたい始末した。
まだ油断できない局面だが、ここからは協力者も始末していくべきだ。
不正を暴くほどに魔族側の妨害が進み、情報も集まってくる。
国の自浄作用にはもう期待できない。
誰もやらないのならば、私がやるしかないのだ。
その功績が、いずれ勇者であるリュースにも回ってくるはずである。
(そうと決まれば、さっそく攻めに行くか)
私は洞窟を出て進む。
国内の悪徳貴族と商人を一掃する時間だ。
今頃、リュースはアイニスと帝国で鍛練を続けている。
二人が戻ってくるまでに、王国を浄化しようじゃないか。




