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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第23話 血潮の目覚め

 頭が痛い。

 その鈍い感覚を抱きながら、僕はゆっくりと目を開けた。


 視界には黒い枝葉が広がっている。

 その隙間の向こうに月があった。


 背中には土の冷たい感触だ。

 少し湿っていて気持ちが悪い。


 どうやら僕は大の字になって倒れているらしい。

 力を入れて起きようとするも、腹部の痛みに顔を顰める。

 そして、のんびりとしていられない状況だったことを思い出した。


(あの三人は!?)


 跳ね起きて周囲を窺う。

 夜の森には誰もおらず、あちこちに血痕だけが残されていた。

 僕自身は怪我をしていないが、服や装備に血が付いている。

 今更ながら、鼻腔にへばり付く濃密な臭いに気付く。


「あ、れ……?」


 目眩と共に吐き気を覚えた。

 その場で嘔吐するも、胃液しか出てこなかった。


 ひとしきり吐いてむせた後、僕は慎重に立ち上がった。

 まだ気持ち悪さは残っているけど、若干ましになった気がする。


 その状態で辺りを見て回った。

 ところが見つかるのは赤黒くなった血痕だけだった。


(死体がない)


 先ほどまで僕は三人の暗殺者から尋問を受けていた。

 アイニスさんの居場所を問い詰められていたのだ。

 僕は太刀打ちできずに気絶した。

 目覚めると彼らの姿はなく、戦いの痕跡だけが残されている。


 きっと三人はもう生きていない。

 僕はなんとなく確信していた。

 このような展開に心当たりがあった。


(また僕はやってしまったんだ)


 意識がない間に三人を殺害したのだろう。

 前に盗賊と戦っていた際も起きた。

 僕の生存本能が暴走して、勇者としての力を悪用する。


 正直、嫌な気分にはなるものの、この特性がなければ僕は死んでいた。

 自分の奥底に眠る暴力性に救われたのだった。


 ただし、今回に限っては気になることがある。

 僕は意識を失う寸前に見た光景を思い出す。

 倒れた僕を嘲笑う三人の背後に、漆黒の影が立っていた。


(あれは幻……なのか)


 何か明確な意志を感じた気がする。

 しかも、その影は言葉を喋ったはずだ。

 肝心の内容が思い出せないが、確かに発言していたのだ。


 あれは、僕の殺戮本能が具現化した姿だろうか。

 己の内から目覚めた力を、幻覚として目視したのかもしれない。


 無意識のうちに暴れてしまうのだ。

 そういった現象が起きたとしても不思議ではないだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] やはりリュースは、自分が二重人格者かもしれないと思い込んでいるわけか。しかもかなり強く。 どこぞのスローターな領主は本当に二重人格者で、裏側…
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