表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/106

第22話 助けの声

 その瞬間、僕は一つの決心をした。

 奥歯を噛み締めると、闘気を燃やしながら動き出す。


(こうなったらやるしかない……!)


 至近距離から盾を突き出して攻撃した。

 頬に添えられていた刃が離れるも、男は盾による殴打を掴んで止めていた。

 こちらの攻撃を読まれていたのだ。


「おっと」


 男は掴んだ盾をひねって僕を地面に倒す。

 あまりにもあっけなかった。

 まるで力の流れを乱されたかのようだ。

 きっと何かの武術なのだろう。


 男は愉快そうに笑うと、僕に向かって拳を振り下ろしてきた。


「甘いぜ坊ちゃん」


「カハッ!?」


 腹に強烈な衝撃が走る。

 思い切り殴られた。

 内臓が滅茶苦茶になったような痛みが襲ってくる。

 転げ回りたいのに、男の足が僕を踏み付けているせいで動けない。

 涙を流しながら、静かに悶絶するしかなかった。


 男は足で僕を揺すりながら嘲笑う。


「力も速度も技も足りねぇな。そんなんで俺達を倒せると思っちゃいけないぜ」


「う、ぐぅ……」


 僕は嘔吐する。

 それでも容赦なく男は問いつめてくる。


「早くアイニスの居場所を吐け。そしたらすぐ楽にしてやるからよォ」


「いや、だ」


「じゃあもっと苦しめ」


 その直後、顔面を踏み付けられた。

 視界が真っ黒になり、熱い激痛が走る。

 泥と草の臭いもした。


 視界が開けると、僕を見下ろす男達がいた。

 とても楽しそうだった。


 涙と一緒に、鼻から液体が流れる感覚がある。

 たぶん血だろう。

 今ので鼻が折れたのではないか。


「今代勇者は弱虫で役立たず……裏社会の常識になってるんだぜ。全部てめぇのことだ。運だけが良かった坊や……いや、身分不相応な宿命を背負わされたんだ。運は悪いか」


 男は嘆くように語る。


 言われなくても知っている。

 王城にいた時、陰で悪口を言われていた。

 当然の扱いだろう。

 僕は彼らの期待を裏切ったのだから。


「お前を助ける人間なんていない。アイニスは損得勘定で動いていやがる。勇者が死んだところでプランを変更するだけなんだよな。そこまで困りやしねぇんだ」


「う、そだ……」


「嘘だと思うなら呼んでみろ! 奇跡的に来てくれるかもしれないぜ」


 朦朧とする意識の中、男の怒声が頭の中で響く。

 僕は意を決して叫んだ。


「誰か、助けてぇ……っ!」


「――情けない」


 心底から軽蔑するような声。

 涙で滲む視界に意識を向ける。

 三人の男達の後ろに、漆黒の人影が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 助けを呼ぶ声に呼応するかの様に現れたのは、 ネアか、アイニスか、それとも別の誰かか? >心底から軽蔑するような声 は、内心そのままか? …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ