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第2話 闇の鉄拳

 斜面の上では盗賊団が待っていた。

 追撃の一つもせず、ニヤニヤとこちらを眺めている。


 舐められているのだ。

 リュースがあれだけの醜態を晒したのだから仕方ない。

 まだ自分達が圧倒的に優勢であり、それが覆ることはないと思い込んでいる。


 特に反応がないことから、私と弟が入れ代わったことには気付いていないらしい。

 看破されないように意識しているとは言え、あまりにお粗末だった。

 こちらを非力な獲物としてしか認識していない証拠である。


「お? 意外と元気じゃねぇか」


 盗賊が感心した様子で言う。

 私はそれを無視して、握り締めた拳に魔力を込めながら口を開く。


「おい。てめーら、覚悟できてんだろーな?」


 私が尋ねると、盗賊が愉快そうに笑い出した。

 そのうち一人がへらへらと無防備に近付いてくる。


「どうした坊主。急に偉そうじゃねぇか。頭を打っておかしくなったのかよ」


「うるせーな。黙って死に晒せ」


「この、クソガキがッ」


 激昂した盗賊が短剣で切り付けてくる。

 それを半身になって躱すと、がら空きの顎を拳で殴り砕いた。

 何本もの歯が宙を舞い、盗賊が勢いよく転がっていく。

 尻餅をついた盗賊は、情けなく口を開けながら悶え苦しんだ。


「ごえはっあああぁぁぁっ!?」


「どけよクソ虫が」


 追撃の膝蹴りを入れて昏倒させつつ、首を踏み折って止めを刺す。

 それだけで盗賊は静かになった。

 何度か四肢が痙攣するも、すぐに大人しくなる。


 他の盗賊達は呆気に取られていたが、すぐに我に返った。


 奴らは口々に喚いて目の前の現実に驚愕する。


「リーダー!?」


「どういうことだ! さっきまでと別人だぞッ」


 今の盗賊が頭だったらしい。

 それにしては弱すぎる。

 精々、正規の騎士に並ぶ程度であった。


 戦い慣れているにしても、弱者を痛め付けることに慣れているだけだ。

 私の殺気に気付いていないのだから、所詮は三流だ。

 他の連中は同等以下の強さということだろう。

 まさに有象無象の集まりに等しかった。


(本気を出すまでもないな。竜とゴブリンの喧嘩になる)


 死体の横を歩き抜けながら考える。


 この盗賊団は小物だ。

 近所の村に寄生しているだけで、それ以外の特技は何もない。

 存在価値など皆無のゴミということである。


 わざわざ生け捕りにして投降させる意味もなかった。

 ここで皆殺しにしてしまってもいいだろう。

 殺意が魔力を高めて、周囲の空間を軋ませていく。

 それは不気味な魔物の唸り声にも似ていた。

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