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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第18話 懸念

 ある日の午後。

 僕はアイニスさんと一緒に街の定食屋にいた。


 定食を食べ進めるアイニスさんの顔は暗い。

 いつも明るい表情なのに、とても真剣な目をしている。

 会話も弾まず、上の空といった様子だった。


 心配になった僕は途中で声をかける。


「あの……どうかしましたか」


「うん? 何もないよ」


 アイニスさんはそう言うも、明らかに普通ではない。

 水を飲む時、ちらちらと周りを窺っていた。


 誰かを気にしているのだろうか。

 それ以上は何も訊けず、僕も黙って定食を食べる。


(アイニスさんは何かを隠している?)


 ここ数日は、ずっとこんな調子だった。

 いつも何かを考えているのだ。


 僕はアイニスさんのことを何も知らない。

 あまり話したくなさそうなので、尋ねることもできていないのだった。


 僕と一緒に旅をするようになってから大きな問題は起きていない。

 アイニスさんの悩みとは、彼女の過去に関することではないか。

 そんな風に推測していると、アイニスさんが話しかけてきた。


「ところでリュース君。今日の鍛練は休みでいいかな」


「はい、大丈夫ですけど……」


「ごめんね。ちょっと用事があるんだ。明日はちゃんと付き合うから許してね」


「その用事、僕も付いていっていいですか?」


「残念だけどそれは難しいかなぁ。そもそも楽しいものでもないし」


「……分かりました」


 僕の頭を撫でたアイニスさんは、テーブルに代金を置いて先に出ていく。

 こちらを振り返ることは一度も無かった。


 一人になった僕は当てもなく店を後にする。

 特に傭兵酒場の依頼も受けていないので、森の片隅で鍛練をすることにした。

 最近はアイニスさんがいたため、こうして自分だけで実施するのは久々だった。


 杖と盾を構えて、基礎の型を何度も繰り返す。

 剣を使っていた時と同じだ。

 反復練習ができなければ、その先に進むことすらままならない。


(アイニスさんに信用してもらえないのは、僕が弱いからだ。きっと強くなれば教えてもらえることだって増える)


 動き続けながら考える。


 僕達はまだ出会ったばかりだ。

 魔王討伐の旅を手伝ってもらっているが、それ以上の関係ではない。

 仲間と呼ぶべきか怪しいところだろう。


 きっと僕自身もアイニスさんを信用できていないのだ。

 だからこんな風に考えてしまっている。

 募る自己嫌悪を振り払うように、僕は鍛練に没頭していく。

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