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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第16話 修練の日々

 活動地域を移したリュースとアイニスは、翌日以降も地道な仕事を続けた。

 魔物退治がメインで、たまに盗賊捕縛や護衛任務、薬草採取を挟んでくる。

 報酬は安いものの、赤字になるほどではない。

 つつましく暮らせば、二人でも問題なく生活できるほどだった。


 この街でもリュースは勇者の身分を隠している。

 周りから馬鹿にされることに加えて、嫉妬の感情も向けられるようになった。

 アイニスという美女を連れているせいだ。

 肩身は狭くなったはずだが、リュースの顔は以前より輝いている。

 頼りにできる仲間が増えた影響で精神的に落ち着いているのだろう。


 滞在から十日が過ぎる頃には、随分とこなれた様子で依頼をやり遂げるようになった。

 アイニスに聞いたところ、必要な技能に合わせて依頼を変えているらしい。

 リュースに足りない部分を補填するために仕事を選んでいるそうだ。

 一見すると鍛練にならないような仕事も、総合的には糧になっているのだという。


 細かいことは素人の私には分からない。

 なんでもアイニスは、機密騎士になる前は指導官をしていたらしい。

 まだ若いというのに、才能を認められて抜擢されたそうだ。

 実力がありながらも驕らず、他者を伸ばせるだけの目と言葉を備えていたのである。

 つまり相当な天才肌だった。


 日頃の雰囲気からそれは感じていたが、過去の実績を聞いて納得した。

 機密騎士隊がアイニスを送り込んだのもよく分かる。

 何もかもが足りない勇者リュースに必要なのは、優秀な指導者なのだった。


 実際、彼女の手腕は凄まじい。

 拠点を移してから、リュースの実力は大きく向上した。

 今までは一兵卒未満だったが、現在は一兵卒には勝てる程度になっている。


 これを誤差に思うかもしれない。

 しかし、姉である私からすればかなりの変化である。

 彼女とリュースが出会ったのはごく最近だ。

 短期間での成長としては上出来だろう。


 アイニス曰く、これまでも確かに成長していたが、それを上手く表面化できていなかったそうだ。

 彼女は表面化の後押しをしただけだという。

 そんな風に謙遜していたものの、私は分かっている。

 この功績は紛れもなくアイニスのものであり、私が失敗した点でもあった。


 厳しくすれば成長すると思った。

 現実はそこまで簡単ではなかった。

 私だけではここまで来るのに時間がかかっていただろう。

 もしかすると、途中でリュースの心が折れてしまったかもしれない。


 アイニスの指導には、つくづく感謝せざるを得ない。

 やはり専門家という存在は必須なのだと痛感した瞬間だった。

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