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光の勇者と闇の処刑人 ~天才の弟が頼りないので、凡人の私が暗躍しなければならない~  作者: 結城 からく


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第1話 弱虫勇者

 その日、僕は盗賊の森と呼ばれる地に来ていた。

 近所の村の女性が攫われたと聞いて、救出に訪れたのである。


 勇者の僕は、人々の助けになるのが使命だった。

 だからこそ恐怖を押し殺して決心した。

 しかし現在、僕はたくさんの盗賊に包囲されていた。


「ヒャッハー! ここらは俺達の縄張りだぜ! ガキが来るところじゃねぇんだよォッ!」


 盗賊の一人が勝ち誇った顔で言う。


 僕は後ずさるも、既に囲まれているせいで意味がない。

 向こうは十数人の集団で、僕はたった一人だ。

 きっと彼らは戦い慣れている。

 余裕の態度も当然だった。


「ヒヒッ、森の出口まで案内してやろうか? ただし死体になってもらうがなァ!」


 別の盗賊が短剣を舐めながら発言する。

 それに合わせて他の者達も大笑いしていた。


 彼の住処は森の奥にある。

 攫われた村人もそこにいるのだろう。


 僕が救い出さなければならないのだ。

 いずれ魔王を倒すのだから、盗賊に苦戦している場合ではない。


(でも、この数を相手に勝てるはずないよ……)


 弱気になっていると、盗賊の一人が武器を掲げた。

 そして血走った目で合図を発する。


「行くぞ野郎共ども!」


「おうさっ!」


「やってやるぜェッ!」


 盗賊達が一斉に動き出した。

 それぞれが連携しながら接近してくる。


 彼らが狙うのは僕の命。

 戦闘――つまり殺し合いが始まった。


「ひっ」


 恐怖で喉が詰まって声が洩れる。

 それでもなんとか剣と盾を握り直すと、襲いかかってくる盗賊に応戦した。


 王城での訓練によって防御術は上達している。

 多方向からの攻撃を弾くことはできるが、合間を縫った攻撃に対処し切れない。

 手足や脇腹に短剣や棍棒が命中した。

 鎧で守られているので出血はしないものの、衝撃による痛みに顔を顰める。


(やっぱり駄目だ! 僕一人じゃ絶対に勝てないっ)


 絶望したその時、盗賊の蹴りが腹にめり込んだ。

 吹っ飛ばされた僕は、近くの斜面を転がり落ちていく。

 全身をぶつけて泥まみれになった末、草むらに飛び込んで止まった。

 起き上がろうとしたところで呻く。


「ぐ、うぁ……」


 あちこちが痛い。

 それに視界がゆっくりと傾いて回っている。

 落下の際に頭を打ってしまったのだろう。


 盗賊達の嘲笑を聞きながら、震える僕は目を閉じる。


「姉、さん……たすけ、て……」


 掠れた声で呟いた後、意識は闇に沈んでいった。




 ◆




「姉、さん……たすけ、て……」


 勇者の呟きと気絶する様を、私はそばの影から見守っていた。


 泥だらけの彼は盗賊団に大敗した。

 ただの一撃も返せずに気を失ったのである。


 潜在能力は極めて高い。

 それを活かせないのは、ひとえに本人の性格が原因だった。


「リュース……あんたは本当に情けないね」


 私は弟の体たらくを嘆くと、その場で漆黒の外套を脱ぎ捨てる。

 内側に着込むのは弟のリュースと同じ鎧だった。


 双子の私達は背丈や顔立ちが瓜二つである。

 髪型も揃えているため、見分けを付けるのは困難だろう。


 違いと言えば武装くらいか。

 リュースは剣と盾で、私は素手である。

 それも双子という真実には繋がる要素ではない。

 つまり同じ格好の私の功績は、すべてリュースという勇者の物になる。


「ここで少し寝てなさい」


 気絶したリュースの耳元で告げて、立ち上がった私は斜面を歩いて上る。


 標的はたった十数人の盗賊。

 この私が苦戦するはずもなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 頼り無げな弟としっかり者の姉。 私が今まで読んで来た結城さんの作品群の中では珍しいパターンなので、新鮮に感じます。 [一言] 続きも楽しみにしています!
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