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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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カボチャ



「あれ? 今日はヤノハちゃん、いないんだ?」


 翌日、朝食を終えて家事を終えて、一段落しての昼食前、居間に向かうとコン君とさよりちゃんの姿しかなく、ヤノハちゃんの姿が見当たらない。


 今日は雨で畑仕事もなく、病院に定期検診に行ったテチさんと由貴と一緒なのかな? なんてことを考えていると、学習ドリルに取り組んでいたらしいコン君が、疲れたのか鉛筆を転がしながら言葉を返してくる。


「ヤノハちゃんなら外で遊んでるみたいだよ。

 雨も嫌いじゃないんだって、新しい傘と長靴とレインコート買ってもらったから、それを使いたいのもあるんだと思うよ」


 続いてさよりちゃん。


「笑いながらどろんこ遊びしたり、お父さんとお母さんに叱られながら元気いっぱいみたいです。

 気温が下がってきましたし、あまり冷えない方が良いと思うんですけど、それよりも楽しさが大事みたいです」


「あー……なるほどなぁ。

 今まで出来なかったことを思いっきり楽しんでいるのか。

 ……ならそのうちホテルとかにも行くと良いのかもねぇ、あそこにはあそこでしか出来ないレジャーがたくさんあるから。

 家族で行けば良い思い出になるかもねぇ」


 との俺の言葉を受けてコン君とさよりちゃんは、


「んー……どうだろ、ヤノハちゃんは多分、オレ達より幼い子なんだよ。

 まだまだ幼くてー……積み木とかそういうオモチャでも楽しいんだと思う」


「体は大きいですけど、そんな感じですね。

 変に凝った遊びじゃなくても、鬼ごっことかしりとりでもいっぱい楽しんでくれると思います」


 と、意外にも大人なコメントをしてくる。


 ……なるほどなぁ、幼稚園児みたいな感覚なのだろうか。


 確かにアンパンヒーローとか由貴と一緒になって楽しんでいるからなぁ……まだまだ情緒なんかの成長が追いついていないのだろう。


 しかしその割には泣きじゃくってのワガママとか、とんでもないイタズラとかはしない良い子なんだよなぁ。


 情緒が成長しきっていないなら、そういうった面があってもおかしくないのだけど……そういうことはなく、妙に聞き分けが良いという大人な部分もある。


 ……アンバランス、ということなのだろうか?


 情緒とかは成長していないけど、脳は成長しているから感情の制御が出来る……とか?


 うぅーん、あまりにも特殊な事例過ぎてなんとも言えないなぁ。


「多分、ヤノハちゃんは分かってて子供してるんだと思う。

 あえて大人にならないようにしてる? そんな感じ」


「あー、確かにそうかもですね。

 きっと子供を楽しみたいんですよ」


 と、コン君とさよりちゃん。


 まさかな大人なコメントに俺は少しだけ驚くが……コン君達も成長しているってことなんだろうなぁ。


 いずれはコン君達も大人になる訳で……一体どんな大人になるんだろうなぁ。


 なんてことを考えていると、


「こーんにちはーーー!」


 と、元気いっぱいなヤノハちゃんの声が玄関から響いてくる。


 それを受けて玄関に向かうと……雨の中、よほどにはしゃいだのだろう、雨と泥にまみれたヤノハちゃんが立っていた。


「あー……うん。

 傘とレインコート、それと長靴と服、洗っておいてあげるから、お風呂入ってくるといいよ。

 着替えは御衣縫さんから預かっているのがあるから、それを使ってもらって……お風呂の準備が出来るまで、そんなにかからないから、それまでは玄関で待機かな。

 えーっと……さよりちゃん、タオルをいくつ使っても良いからお世話をお願い出来る? 俺はまずお風呂のスイッチ入れて、それからショウガ蜂蜜紅茶入れてくるから……お風呂が沸くまではそれであったまってもらうことにするよ」


「分かりました!」

 

 俺の言葉を受けてさよりちゃんがそう言ってくれて……俺とコン君は風呂などの準備へ。


 女の子のことは女の子に任せて、さっと風呂を洗って湯沸かしボタンを押して、それから台所へ。


 そして体の温まるショウガと栄養たっぷり蜂蜜、それと紅茶で飲みやすくして……一応紅茶は薄めにしておく。


 カフェインでどうこうなる量ではないと思うけど、何しろヤノハちゃんだからなぁ……テンション上げまくって深夜まで騒いでいるとかもありそうで、一応は予防をしておく。


 熱くなりすぎないように淹れたら玄関に持っていって、それを皆で飲んでいるとお風呂が沸いたコール。


 お風呂にはさよりちゃんも一緒に入ってもらって……お風呂でもさよりちゃんがお世話係をやってもらう。


 体格的には逆なんだけども、現状おねーさんなのはさよりちゃんの方で、実際しっかりとヤノハちゃんをコントロールしてくれているようだ。


 着替えはさよりちゃんのも含めて脱衣所の着替え用のプラスチックボックスに入れておいて……それから脱いだ服を洗濯機に。


 レインコートは手洗い、傘も手洗い、長靴も手洗いなので、それらは家の裏口に。


 裏口には山に入った後の洗い場を兼ねている、蛇口水道つきの広めの石床空間があるので、そこでそれらを綺麗に洗ったなら干して……一段落したら再び居間へ。


「……まぁ、うん、由貴が大きくなった時のための予行練習かな」


「あー……由貴ちゃんはおっきくなったら元気いっぱいになりそうだね」


 なんてことをコン君と言い合いながら腰を下ろし……時計を見るとそろそろお昼。


 ……さて、何を作ろうかと悩み、テレビを眺めて、


「……次に出てきたものを作ろうか……」


 と、なんとなしにそんなことを言うと、目をギラッとさせたコン君がリモコンを奪取してチャンネルチェンジ。


 料理番組が流れて……今日のメニューは「かぼちゃのグラタン」


「……しまった、ちょうど料理番組の時間だったか」


「いつもこれ見てるから! どれも美味しそうなんだ!」


 俺のつぶやきにコン君は元気いっぱい返してきて……仕方ないかと俺はメモ帳を用意し、テレビで流れる作り方をメモしていく。


 そう難しくない作り方、材料も家にある、問題なく作ることができそうで……番組が終了すると同時に立ち上がった俺は、コン君と一緒に台所に向かい……材料を用意してから、かぼちゃグラタンの調理に取り掛かるのだった。


 

お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
大人っぽいと思っても、まだまだ子供なんだな それでいい、それがいい
コンくんの食に対する嗅覚は流石だなー
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