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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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寿司



 今日は皆で車でお出かけ、そしてランチ、帰宅。


 帰宅後手洗いうがいをし、由貴はお昼寝をし……そしてコン君は居間に寝転がってのふて寝。


「……まぁ、ああいうものだから」


 座布団の上に座ってお茶を一口飲んで、俺がそう声をかけるとコン君は尻尾でペタンと畳を叩いて返事をしてくる。


 今日のランチは新装開店、獣ヶ森に出来たばかりの飲食店、回転寿司での食事だった。


 養殖所が出来て海鮮ブームが出来上がり、しっかりネタが手に入るとなっての開店で、平日だというのに結構な行列で店に入るまで1時間。


 それでも子供達はワクワクドキドキ、楽しみにしていたのだけども……内容としてはがっかりだったようだ。


 いやまぁ、悪くはなかった、回転寿司としてはネタが良いので普通に美味しかったのだけど、期待値を超えることはなく、しかも大混雑をしていたものだから、ほんとど寿司が回ってこない上に、注文をしても届くのが遅く、ようやく回ってきたと思ったらネタもシャリも乾燥しきっているという有り様。


「……もー……!」


 あの良い子のコン君がそんな声を上げてすねてしまう程度にはがっかりだったようだ。


 さよりちゃんも元気がなく、由貴はハンバーグ寿司が美味しかったからかご機嫌で寝息、テチさんもそこそこに不満そうで……とんだ初回転寿司となったようだ。


「まぁ、ああいう時はハンバーグとかコーンとか、そういうの頼むと良いかもね。

 ハンバーグとかは多少乾いても美味しいままだからさ。

 提供も他より早かったりするし、今度行くことがあったらそうしてみると良いよ」


 と、俺がフォローを入れるも反応は芳しくなく、そこに一緒に行ったヤノハちゃんが元気な声を上げる。


「あたしはハンバーグ美味しかったんで全然おっけーでした!

 あとあと、ラーメンも美味しかったです! どっちもあんまり食べたことなかったから最高でした!

 あー、あと、からあげとか天ぷら寿司とかもよかったですねー!」


 ヤノハちゃんは日に日に元気になっていっている、そして自我というか性格がハッキリし始めた。


 ハキハキ喋って元気いっぱい、いつも駆け回って笑みを絶やすことがない。


 そんな元気っ子なだけかと思えば、テレビの趣味などはなんとも大人で恋愛ものがお好みらしく、我が家には全くいない恋愛ドラマ勢の誕生で、時たまチャンネル争いが発生、元気にじゃんけんをしていたりする。


 負けても笑顔、どうあれテレビを見られるのなら楽しいから良し、何か嫌なことがあっても笑い飛ばす姿は、中々の強者っぷりだった。


 そんなヤノハちゃんの事情は、既に獣ヶ森の人々にも伝わっている。


 町内会経由であちこちに、お偉いさんにもしっかりと。


 その結果は普通に受け入れるというもので……元人間どうこうという部分よりも、同情の方が勝ったようだ。


 獣ヶ森にはいないリカオン獣人、しかも子供獣人ということで、とても目立つけども皆静かに見守ってくれていて、特に問題とかは起きていない。


 またその趣味や、ませている部分からか、フキちゃんといった大人になったばかりの女の子獣人とも仲が良いようだ。


 外見としてはそっち寄りというか、一緒にいても多少背が低いくらいで違和感がないらしく、ときたま一緒に遊びに出かけているようだ。


 アクセサリーを買ったり服を買ったり、恋バナをしたり。


 特に恋愛話に関してはフキちゃん顔負け……らしい。


 恋愛ドラマを見ているだけで、そこまで語れるとは思わないのだけども……好きが高じて、ということなんだろうか?


 そんなヤノハちゃん、好きな相手もちゃんといるらしい。


 それを聞いて御衣縫さんが、それはもう必死で……本気で、全力でどこの誰かを調査したそうだが、結果は出なかった。


 というか出せなかった。


 何しろ毎日変わる、その時で変わる。


 テレビに出ている俳優だったり、アイドルだったり、そこらで見かけた男性だったり。


 惚れっぽいというのか……別の何か、初対面の人を相手にしての緊張を、恋愛のそれと勘違いしているような気もするけども、おっさんから変に水を差すのも悪いかと、俺は何も言わないようにしている。


 御衣縫さんはあれこれと言っていて、けぇ子さんは放任主義、テチさんはよく分からないからとさじを投げていて……フキちゃんとその友達は煽る方。


 ……まぁー、今までが今までだからなぁ、元気いっぱい楽しいのなら、好きにしたら良いと思う。


 心配することになる御衣縫さんは気の毒だが……それもまたお父さんの仕事だろう。


 ……俺もいつか由貴の心配をすることになるんだろうなぁ。


「……にーちゃぁーん、おいしいお寿司たべたい……」


 俺がそんなことを考えていると、コン君が悲鳴のような声を上げる。


「えっと……出前を取るかい?」


「にーちゃんのお寿司が食べたい……」


「うぅん、作れなくはないけど、美味しくなるかはなんとも言えないよ?

 流石に寿司握りの練習はしたことないからなぁ……プロには負けるだろうなぁ」


「それでもいーいー……なんか作って」


 コン君の珍しいワガママに素直に応じることにした俺は、立ち上がってテチさんに後を任せて買い物へ。


 酢飯の材料やら寿司ネタをあれこれ、ついでに手巻き寿司もやれると面白いかと、そのための材料も。


 きっとヤノハちゃんはハンバーグ寿司とかも欲しがるだろうから、ミニハンバーグ用の材料と……揚げ物の材料も。


 テチさん辺りはきっと昼飯に続いてのお寿司だけじゃ不満爆発だろうから、色々とおかずとなる揚げ物を作らないといけない。


 当然それらだけではバランスが悪いので野菜も。


 ……海藻サラダ辺りでも良いかもしれない、寿司との相性も悪くないと言えばないし。


 海藻は流石に養殖所では売ってないのでスーパーで。


 それらを全て揃えると買い物袋がとんでもない量となり……なんだか最近はずっとこんな調子だ。


 これなら注文して配達でも良かったかなぁと思いつつ帰宅、するとまた寿司を食べられるからとコン君が回復していて、それに引っ張られてさよりちゃんも元気いっぱい。


 そんな2人に手伝ってもらっての片付けをおこない……それから下拵えを開始しての、皆のお腹を満たすための大仕事が開始となるのだった。



お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
みくら寿司、獣ヶ森で開店
結局ヤノハちゃんは何が原因で弱っていたんでしょうね? 病巣を丸ごと獣人要素に置き換えられたとか…? 栄養が足りない、っていうのは獣人化の際にごっそり持っていかれたって事でしょうか… さておき、元気にな…
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