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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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タコ料理


「干蛸は、地域の名物になっていたりする程、美味しいんだよねぇ。 

 旨味が凝縮されて保存が効いて……例えばタコの炊き込みご飯、タコ飯に使ったりすると、すっごく美味しくなるんだよね。

 有名な駅弁もある程で……特に真蛸の干蛸のはたまらない美味しさだよね」


 買い物を終えて、買ってきたイカぐるぐるを庭で組み立てて……説明書片手にセットをしながら、そんな声を上げる。


「干蛸はオレも好き! とーちゃんもでっかい足のやつを炙って食べたりしてる! お酒と一緒に!」


 すると縁側に座って様子を見ていたコン君がそう返してきて、俺は電源コードを引っ張りながら言葉を返す。


「大きい足だとミズタコかな? ミズタコは大きくて大味なんだけど、干したり漬けたりすると身がしまってぐっと美味しくなるんだよね。

 個人的には真蛸の方が好きだけど、コスパを考えるとミズダコになっちゃうよねぇ」


「おー……マダコの方がおいしーんだ?

 えっと、今回にーちゃんが買ってきたのはマダコ?」


「うん、真蛸だよ。

 ……ミズダコは多分、養殖出来ないんじゃないかな……すごく大きいタコだしねぇ。

 大きいものだと4mとかになるタコだから、養殖でどうこう出来ない……と、思うんだけど、あの養殖所だからなぁ、そのうち販売開始しそうでもあるかな」


 普通なら養殖出来ないのだけど、あの養殖所にはそれが通用しない。


 既に現時点で不可能な魚介が養殖されているのだからもう、突っ込んでも仕方ない。


 ……しかもそういった普通なら不可能な養殖は見えない部分、見学可能な水槽以外で育てているようで、一体どこでどんな水槽で養殖しているのやらなぁ。


 なんてことを考えながら作業を進めて、電源コードを繋いでセットは完了。


 試しにスイッチを入れてみると、静かにぐるぐると回転をし始める。


「おー……ちゃんと動いたな。

 あとはこれでタコを干して……明日になれば食べられるくらいにはなると思うよ。

 ただまぁ、皆はそんなには待てないだろうから、普通に今日の夕飯にもタコを出すよ。

 とりあえず……今日はタコミンチかな、それとタコの洋風炒め、タコ唐揚げ。

 明日のお昼にタコ焼き、それから干蛸との食べ比べかな」


 ぐるぐる回転する様を見ながらそう言うと、コン君と隣のさよりちゃん、そして後ろで仁王立ちのテチさんも頷いてそれで良いと示してくれる。


 そして由貴は……イカぐるぐるが気になるのだろう、俺の足元までやってきて、両手を振り上げ大きく広げて……威嚇と言ったら良いのか、そんなポーズを取る。


 そんなポーズのままジリジリジリジリ、イカぐるぐるとの距離を詰めて……あ、これ、飛びつくつもりだと察した俺は、すぐさま両腕で抱きかかえての確保を行う。


「ミャーーーー!」


 あとちょっとだったのにと抗議の声を上げる由貴をしっかり抑え込んで……それからテチさんの元に向かって預けて、改めてイカぐるぐるでの干物の準備に。


 タコは養殖所が内臓やぬめり取りなどの下処理をしてくれたので、下処理完了したタコを使う。


 塩水に漬けたもの、みりんとお酒を混ぜ合わせたものに漬けたものを用意して……料理用の竹串でもって十字架のような形を作り、針金でしっかり縛って固定したものに、タコを貼り付け状態にする。


 頭を十字架の上部分にしっかり固定、両腕を大きく広げたかのように足を二本、左右部分に貼り付けて……多少強引に引っ張ってでもしっかり広げる。


 広げたなら固定は針金で、身に穴をあけても良いからしっかり縛り上げる。


 これからぐるぐる振り回す訳だから、ここでしっかりやっておかないと待っているのは大惨事、過剰なくらいにしっかり固定をしていく。


 固定完了したならイカぐるぐるにセット、イカぐるぐるにも針金を使って固定。


 まぁー……まさか吹っ飛んだりはしないだろうけども、安心のためということでしっかりと。


 終わったなら改めてスイッチを入れて……結構な勢いで回転してくれるタコを眺める。


 夏の日差しの下のその光景はなんとも面白く、ずっと眺めていたくなるけども、夏の日差しと食欲魔神達の視線がそれを許してくれず、家の中へ。


 片付けやら手洗いうがいを済ませたら台所へ、約束のタコ料理を仕上げていく。


 タコミンチと言うと、洋風に仕上げてパスタとかに使うことが多いのだけど……今回は和風に。


 まずはタコをみじん切り、玉ネギ、セロリもみじん切りにし、混ぜてショウガと塩コショウで味付け、そうしたらそれを溶き卵につけて片栗粉をまぶし……焼いてさつま揚げ風にしてしまう。


 そして洋風は次のタコ炒めで。


 タコとジャガイモを一口サイズに、玉ネギも細切りにして……フライパンにオリーブオイルを入れて、鷹の爪とニンニクを軽く炒めて風味づけ。


 風味がついたら一旦鷹の爪とニンニクを取り出し、タコとジャガイモを投入、しっかりめに炒めたなら玉ネギを追加、更に炒めて……鷹の爪、ニンニク、塩コショウ、バジルとパセリを入れて軽く混ぜ合わせたなら完成。


 タコ唐揚げは……まぁ、普通の作り方で。


 すりおろしショウガとニンニクに和えて、10分くらい冷蔵庫で放置、それから片栗粉をまぶし……しっかりと揚げる。


 あとはそれらを盛り付けて……ご飯と味噌汁を用意したら夕食の完成。


 さっぱりとさせたいので味噌汁はトマトとオクラを具材にしたものにしてみたのだけど、これが中々良い組み合わせで美味しく仕上がった。


 トマトの旨味とオクラのとろみ……夏に飲むにはちょうど良い感じだ。


 それらを配膳し、皆でいただきますと声を上げ……早速とばかりに食欲魔神達がタコを口に運んでのリアクションは、かなりの高評価だった。


 タコは本来食べた瞬間美味しい! となるものではなく、噛んでいる間にじんわり美味しくなってきて、その触感とじんわりと味わう食材だと思っているのだけど、全員がそこまで噛まずに目を輝かせての美味しいお顔。


 ……そんなに濃い味付けはしていないけどな? と、首を傾げながら口の中に運んでみると……うぅん、確かに美味しい。


 養殖だからなのか、ここが獣ヶ森だからなのか、旨味の汁が滲み出ているようで……一緒に炒めたジャガイモまでが凄い美味しさ。


 何がどうしてこうなったのやらと驚く味で……強い旨味のせいで箸がとまらない。


 俺でそんな状態なものだから、皆はそれ以上で……特に由貴はもう、感動さえ覚えているような顔でタコをもぐもぐもぐもぐ楽しんでいる。


 唐揚げを特に気に入ったようで、食べきれないだろうってくらいの量を両手で口の中に押し込んで、もぐもぐもぐもぐ。


 少し熱を入れすぎて固くなったものでも、逆に歯ごたえがあって良いと喜んでいるようで……テチさんもコン君もさよりちゃんも、いつにない勢いで口を動かしている。


 ……なるほど、そうか、こうやって歯ごたえのある食品を出せば、ドカ食いをしないでくれるのか……。


 こうやって咀嚼をしっかりしているとその分だけ満腹感も上がるはずで……そうか、獣人達にはこういう料理を出すべきだったのか。


 あー……なるほどねぇー……。


 と、そんな気付きを得た俺は、今後のメニューをどうしていくかと頭を悩ませながら、皆に釣られてもぐもぐもぐと懸命に硬めのタコをかみ続けるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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