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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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干物料理


 翌日。


 数十年に一度の猛暑とされる日光のおかげで、なんとも良い具合に干物が出来上がり……テチさん達も家にいるとのことで、皆揃っての干物試食会が開催されることになった。


 夜露を避けるために倉庫に下げた干物台を一度表に出し、日光にしっかり当てた上で回収……軽くつまんで味見をしてから、魚焼きコンロでじっくり焼いていく。


「……ちなみにだけどにーちゃん、干物ってどんな料理にする? そのまま食べるだけ?」


 そんな様子をいつもの椅子から眺めていたコン君が問いかけてきて……俺は頭の中にあるレシピを発掘しながら答えを返していく。


「それはまぁ色々あるけど……パッと思いつくのは炊き込みご飯かな。

 アジの干物、ゴマ、大葉、ミョウガで炊き込む感じで……似たもので冷や汁もあるね。

 細かく刻んだキュウリとナスとネギ、干物、ゴマ、大葉、ミョウガ……味噌ベースで味付けて冷やしただし汁をかけて完成。

 あとはほぐした身とキュウリ、ワカメで酢の物にするとか……同じくほぐした身と大根下ろし、セロリ、ネギ、大葉、ミョウガ、ゴマで混ぜ込んでのサラダ。

 変わり種でポテトサラダにすることもあるかな……キュウリのぬか漬けと刻みラッキョウで味をつけて干物を入れての和風ポテサラだね。

 ……もうちょっと手間をかけるのなら干物のアクアパッツァも悪くはないかな。

 まぁー……アクアパッツァにするなら真鯛を使いたいところだけども」


 との俺の言葉に対し、コン君はその目を輝かせることで期待感をこれでもかとアピールしてくる。


「……ま、まぁ、少し時間がかかっても良いなら、アクアパッツァとポテサラくらいは作るよ。

 真鯛干物のアクアパッツァに、アジ干物のポテサラ、それとアジの干物をただ焼いたもの……になる感じだけども、それで良い?」


 更に俺がそう言葉を続けるとコン君だけでなくさよりちゃんもコクコク頷き……話を聞いていたのか居間からも「それでいいぞー」とテチさんの声が飛んでくる。


 ならばとまずは真鯛の干物を用意してのアクアパッツァ作りだ。


 アクアパッツァにする場合は、焼いて置く必要はない……干物は汚れや水気がついていたらそれを拭き取り、あさりは殻を擦り合わせて洗って……他の野菜も定番の処理をしておく。


 フライパンにオリーブ油をたっぷり入れたら、押しつぶしたニンニクを入れて軽く炒めて……色がついたら取り出し、干物を皮を下にする形で入れて焼く。


 しっかり焼きめがついたらひっくり返して、ミニトマト、あさりと、さっき取り出したニンニクを入れて、スープ代わりに白ワインを入れる。


 それが煮立ったらスプーンで具材全体にスープをかけながら煮込んでいって……10分程煮込んだらオリーブ油を少し追加、塩コショウで味を整え、盛り付けたなら完成。


 ポテサラは簡単、ジャガイモの皮を向いて適当に切って水にさらし……水から取り出したらしっかり水を切って、浸かる程に水を張った鍋で茹でる。


 竹串がすっと刺さるまで茹でたなら、ざるに上げて煮汁を捨てて……しっかり水気をとったなら鍋に戻し、弱火にかけて水分を飛ばす。


 しっかり水分を飛ばしたなら木べらでジャガイモを潰し、刻んだキュウリのぬか漬けとラッキョウを入れてレモン汁と醤油で味付け。


 しっかり混ぜたらアジの干物を焼いてほぐしたもの、オリーブ油、マヨネーズ、塩コショウを入れて……しっかり混ぜたら完成。


 あとはアジの干物を焼いて……大根おろしも用意、必要ないと思うけど好みもあると思うので醤油とポン酢も用意する。


 ポン酢はゆず果汁とカツオ出汁の入ったお高めのものにし……それとご飯を大盛り。


 きっとテチさんは食べまくるのだろう、由貴もきっとスプーンでもりもり食べるのだろう。


 今日がそうなることは分かっていたので、新旧の炊飯器4個がフル稼働していて……これだけあれば足りないということはないはず。


 完成したならそれらを配膳し……配膳が終わったら試食タイム。


『いただきます!』


 と、皆で声を上げてから、それぞれ食べたいものに箸を伸ばしていく。


 まずアジの干物……うん、やっぱり何もつけなくてもうんまい。


 まぁ、あの養殖所の魚だからなぁ、美味しくて当然で……雲一つない晴天のおかげもあって旨味がとんでもないレベルで濃縮されている。


 同じ乾燥でも天日干しだとどうしてこんなに美味しくなるのか……思い込みなのか、何なのか、そこらのことはよく分からないなぁ。


 とにかく美味しい、過去一の美味しさと言っても過言じゃない。


 サバをただ干物にしただけではこれには勝てないだろうなぁ……今回買ったのはミリン干しにするつもりで、今ミリンに漬け込んでいるから、それが仕上がって干したなら……うん、拮抗はするはずだ。

 

 ……そして真鯛のアクアパッツァ。


 当然のように美味しい……わざわざ干物にしなくても美味しいのだけど、干物にしたことで旨味の強さが変わってきている。


 しっかり煮込んだことで柔らかさも増しているかもしれず……普通の真鯛のアクアパッツァよりはこちらの方が個人的に好きだったりする。


 真鯛とあさりの出汁が抜群で、ミニトマトが良いアクセントになって……ご飯というよりパンに合う味だけども、皆どんどんご飯を食べ進めてくれている。


 コン君は干物そのまま派、さよりちゃんは大根おろしとポン酢、テチさんは大根おろしと醤油、そして由貴は……面倒くさいのか干物をそのまま食べるのがお好みのようだ。


 まだまだ箸はしっかりとは使えず、事前にほぐしてあげたものをお椀に入れて出してあげたのだけども、スプーンでどんどん口に運んで、もっくもっくと口を動かして……ご飯なんていらない、干物だけで良いと言わんばかりに、ただただ干物だけを食べている。


 ポテサラは一口食べただけでもう良いとの表情。


 あれこれ余計なものがあるよりも、ただ干物だけが良いらしい。


「えっと……これも美味しいよ?」

 

 と、真鯛のアクアパッツァの身をほぐし、たっぷりスープにつけたものを差し出してみると……口をくあっと開けての待ち構えモード。


 そっと箸を口の中に入れてあげると、パクッと食いついてもぐもぐもぐ。


 すると目を見開いての覚醒をし……また大口を開けての待ち構えモードを展開する。


 もっともっと食べさせろ。


 無言でそうアピールしてくる由貴のために俺は、それからしばらくの間、由貴のお世話係に徹するのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。

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