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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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BBQ開始


 ミンチタルタルは結果としては大成功だった。


 大好評で作っても作っても売り切れるという感じで、皆のお腹をこれでもかと満たしてくれた。


 それはもうこれだけで良いんじゃないかな? ってな勢いだったけども、まさかそんな訳にもいかず、準備は進められることになった。


 ただ肉ばかりでは良くないということで、相応の野菜も用意することになり……野菜に関してはスーパーではなくタヌキ獣人で神主で農家でもある御衣縫さんにお願いすることにした。


 御衣縫さんの畑の野菜は驚く程に美味しい、普通に出来が良いって言うのもあるけど、その日に採れたばかりのものを持ってきてくれるから、その美味しさは圧倒的だ。


 その分だけ高くつくけども、その価値は十分にあって……新鮮夏野菜のバーベキューはかなりの美味しさとなってくれる。


 ソースはバーベキューソースでも良いし、爽やかに玉ネギやトマトソースでも良いし、そのまま食べるだけでも良い、何をしても美味しくなるはずだ。


 そんな訳で電話をして注文をすると御衣縫さんは快諾してくれて……当日おすすめの夏野菜を持ってきてくれるそうだ。


 その電話口で御衣縫さんは、


『どうせならサラダ作れ、サラダ!

 新鮮な夏野菜切り分けて、味付けはザク切りトマトとオリーブオイル、これだけで美味くなるもんだ!

 火を通しても美味いがな、新鮮な野菜はそのままが一番よ!』


 なんてことを言っていて、山盛りのサラダも作ることにした。


 ……まぁ、メインはあくまで肉なので、そこまでの需要はなさそうだけども……。


 という訳で、翌日の夕方過ぎ、今度はBBQ肉の調理を開始した。


 試作ではなく開始で……翌日の本番に食べられるように、じっくり12時間くらいの工程となる。


 やることは単純で、バーベキューグリルで炭火でじっくり焼くだけ。


 焼いて焼いて、定期的にリンゴジュースとリンゴ酢で作った液体を霧吹きでふきかけて乾燥を防いで焼いて……一気に加熱するのではなくゆっくりじっくり、肉に刺した温度計をしっかりチェックしながら、焼き上げていく。


 霧吹きと温度チェックは1時間ごとなので、眠ったりは出来ないのだけども、これもまたBBQ……本場のお父さん達はもっと大変な想いをしているんだろうなぁ、なんてことを考えながら頑張る。


 今日ばかりはコン君とさよりちゃんは不参加、二人とも明日の本番までは自宅でゆったり過ごすそうだ。


 テチさんは由貴の面倒を見てくれていて……由貴は庭であれこれしている俺に興味津々のようで、窓の内側にある網戸に張り付いてこちらを見ていたり、調理の準備をする俺の背中に張り付いて手元を覗き込んでいたりと忙しい。


 由貴も明日何かがあるということはちゃんと理解しているようで……ソワソワワクワクとして、昼寝もあんまりしていないようだ。


 それでも夜になればぐっすりで……俺はその間も肉の面倒を見続け、ある程度まで温度が上がったら、今度は肉をアルミホイルで包みこんでいく。


 テキサスクラッチと言うんだったか……肉の温度は60~70℃を超えるとだんだん上昇しにくくなっていく。


 無理に上昇させようとすると焦げたり固くなってしまったりするという厄介な状態で、そうならないようにアルミホイルの力を借りるという訳だ。


 アルミホイルの内側には、バター、砂糖、スパイス各種、ハチミツを塗り込んでおいて……しっかり肉汁がこぼれないように包みこんだらまたグリルへ。


 そして再加熱。


 そろそろ完成が近付いてきたのでソースやサラダ作りも開始する。


 サラダは御衣縫さんから提案があったら夏野菜サラダと、ヨーグルトソースを使ったフルーツサラダ。


 そしてバーベキューソースも作っていく。


 と、言っても、ほぼほぼ市販品を混ぜたものとなる。


 中濃ソース、ケチャップ、ハチミツ、醤油、ショウガ、ニンニク、リンゴ酢。


 それを混ぜたら完成で特にこれといった工夫はない。


 あとは付け合せの野菜を切っておいて……ミンチタルタルに続いてバゲットも用意しておく。


 そうこうしているうちに肉の内部温度が90℃を超えて完成……時刻も朝となって、準備万端となる。


 肉をバーベキューグリルから下ろし、庭に用意しておいた食事用テーブルのまな板の上に。


 そうしてアルミホイルを剥がしていくと現れるのは真っ黒な肉。


 と、言っても焦げている訳じゃぁない、加熱中にずっと使っていたスモークチップの影響と、アルミホイルの内側に塗り込んだ砂糖やハチミツが変色した結果で……実際その部分を食べてみると苦くはなく、焦げではないことが分かる。


 肉の状態は問題なし、軽く押した感じもとても柔らかく仕上がっているようだ。


 そんな肉をいざカットだというところで、まずテチさんと由貴が起きてくる。


 しっかり身支度も整えているようで、少し前から起きていたようだ。


 そしてコン君とさよりちゃんも駆けてきて……それに続く形でフキちゃんと長森さん、御衣縫さん夫妻、そしてテチさんが面倒を見ている子供達も駆けてくる。


「皆おはよう! これからカットだよ!」


 と、俺が声を上げると皆がおはようおはようと挨拶を返してくれて……そしてコン君とさよりちゃんと、由貴がテーブルの上の肉のすぐ側でやってきてかぶり付きで見学する中、焼き上がった長森牧場の特上特大牛バラ肉をカットしていく。


 包丁を入れた瞬間肉汁が溢れてきて……当然だけども中まで火が通っている。


 だけども外側は赤い……というかピンク色で、それを見つけたコン君が声を上げる。


「にーちゃん、なんでここ赤いの?」


「ああ、それはスモークリングって言うんだったかな。

 しっかり焼き上がった証拠というか、燻製が出来ている証拠というか……それのあるなしがちゃんとBBQ出来ているかどうかの判断材料になるらしいよ。

 今回はだいぶ綺麗に仕上がっているし、切るだけで分かる柔らかさ……かなり美味しく仕上がったんじゃないかな」


 と、そう言って俺は肉をカットしていって……カットが終わったら、バラ肉についていた骨を持ち上げる。


 骨付き肉というか、すっごく贅沢なボーンステーキというか……持ち上げる間もずっと肉汁が滴っていて、それを皆に手渡していく。


 今回は大勢来ることを見越して、複数台のバーベキューグリルをフル稼働させたから、これだけの人数相手でも平気で……皆に肉が行き渡ったなら、


『いただきます!』


 と、皆で声を上げて、噛むだけで肉汁弾けるその肉にかぶりつくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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御衣縫さんは住職ではなく神主では・・・
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