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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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くるみバター改め……


 扶桑の種を食べてからの由貴は……まぁ、特に変わった様子もなくいつも通りに元気だった。


 朝目覚めたらベビーベッドから飛び出し、家中を駆け回っての見回りをし、異常がなければテチさんか俺の寝床へ。


 寝ている大人を起こしてはいけないと学んではいるので布団の中に潜り込んで、胸辺りに抱きついて俺達が起きるまで待って……俺かテチさんが目覚めたら一緒に洗面所へ。


 洗面所で顔を洗ったり毛を整えたり、着替えだのなんだのを済ませたら朝食タイム……といういつもの流れ。


 最近の由貴はオムツを脱却し、おまるでのトイレが可能になったので、着替えなどの作業は朝と夜だけで済むのでだいぶ手がかからなくなってきた。


 その分だけ自分で色々考えるようになり、活動範囲も相応に広がって目が離せなかったりするのだけども……それはそれで喜ばしいというか、多少の手間さえもが嬉しく楽しく、子育ての妙を味わえている。


 あまり癇癪を起こさないというか、我儘を言わないのでストレスも少ないし……幸せ者と言って良いのだろうなぁ。


「パパ、パン!」


 台所に立つとその由貴から注文が入る、どうやら今日はパンが食べたいらしい。


 ……と、言ってもすぐに食べられるパンは食パンしかない訳だけども……。


「えーっと……どんな食べ方が良い? ジャム? バター? ハチミツ? それともハニーナッツ?」


 と、問いを返すと由貴は、流し台の前に立つ俺の背中へと飛びついてきて……ガシガシと背中を登って肩に立ってから注文を返してくる。


「……バタークルミ!」


「……パンに塗って食べるクルミだね、分かったよ」


 由貴の言うバタークルミとは、クルミバターのことで……最近俺はそれをパンに塗って食べるクルミと呼んでいる。


 理由は簡単でバターではないから……クルミを砕いてペーストにして、砂糖と塩、少しの牛乳とちょっとのオリーブオイルを混ぜて煮詰めて作ったそれを果たしてバターと呼んで良いのやら、気になってしまったからの変更だ。


 結局はピーナッツバターのようなもので、普通にクルミバターと呼べば良いのだろうけども……由貴にちゃんと言葉を教えていきたいと考えてのことだ。


 そんなパンに塗って食べるクルミは、畑で採れたクルミを使っての自作品で、あえて荒く砕いたクルミも入れているからか、リス獣人には大好評だ。


 テチさんもコン君もさよりちゃんも……由貴もテチさんの友人や親戚も。


 皆に作って作ってと頼まれてしまい、出荷した以外の保存しておいたクルミ全部がそれになりそうな勢いだ。


 流石にそれだけの量となるとタダという訳にもいかず、お金を取ることにしたので以前に準備してもらった加工場でしっかり衛生管理した上で加工し、しっかりと煮沸消毒した瓶に瓶詰めにして売っていて……そのうち一つは毎回保健所に送って加工と殺菌に問題ないかの確認をしてもらっている。


 獣ヶ森にもしっかりと保健所があって、頼めばほぼタダのような金額で検査をしてくれていて……検査が終わっての残りは職員のオヤツ用になるとあってか、何度も頼んでも嫌な顔をされることはない。


 そんなこんなで家事育児の合間を塗ってそんなことを始めた関係で……少しだけ、ほんの少しだけ我が家の財政は改善しつつある。


 いや、生活に困るとかでは全然ないんだけど、最近は特に食費が異常だったから……そこら辺をなんとかしようと考えた訳だ。


 猟期になれば余った肉を加工してのペットフード作りも始めるし、一部の肉は長森牧場の食肉加工部門に買い取ってもらえることになったので、かなりの改善が見込めるはずだ。


 これから由貴にも色々とお金がかかるかもしれないし……貯金を増やしておくに越したことはないだろう。


 なんてことを考えながらパンにたっぷりパンに塗って食べるクルミを塗ったらトースターへ。


 由貴は焦げるギリギリ前くらいがお好みなので少しだけ長めに時間を設定して……サラダを用意する。


 レタスなど、葉っぱ系だけのサラダだと渋い顔をする由貴だけど、由貴が好きなミニトマトたっぷりにすると文句もないようで……レタスを用意している間は強く俺の肩を掴んでいた手の力が、ミニトマトを洗い始めたことで緩んでいく。


 あとは海藻スープと牛乳とヨーグルトを用意したら文句なしの朝食の完成で……それらを居間に運んでいるとテチさんも身支度を整えて居間へとやってくる。


 だけどもまずは由貴の食事から、配膳を済ませたら俺は台所へ向かい、テチさんは由貴の食事の見守り。


 もう一人でも大丈夫だとは思うのだけど、焼き立てトーストとほかほかスープは火傷の可能性もあるので見守りは必須ということにしている。


 それに……テチさんの食欲を満たす朝食の準備は、すぐには終わらないので見守りをしているくらいでちょうど良いのだ。


 頬の毛についたクルミとかを放置していると乾燥してカチカチになって毛に絡んで悲惨なことになるので、その辺りのフォロー役も必須だったりする。


 テチさんはサラダ多め、パン多め……他は程々。


 スープや牛乳ばかりたくさん飲んでも意味がないと言われたことがあるので程々に。


 俺の分は普通の一人前にしてそれらを居間に配膳していると、満腹になったのだろう、膨らんだお腹を天井に向けて堂々と寝る由貴の姿が。


 そんな様子を見ると食べ過ぎなのでは? なんてことも思うけどもテチさんが言うには普通のことらしい。


 ……そもそもとして獣人は多くのカロリーを欲する体質で、それが育ち盛りの子であれば尚更で……特に成長が早めの由貴の場合は、これで本当に足りているかと心配なくらいなんだとか。


 特にここ数日は気持ちは元気でも体がついていけていないというか、動きたいのに動けない、アンバランスさがあった……らしい。


 俺は全く気付かなかったけども、そんなアンバランスさも最近改善されたとかで、テチさんは安心した表情を見せてくれている。


 ……もしかしたらこれも扶桑の力なのかもなぁ……。


 と、そんなことを考えた俺はいつもの席に腰を下ろしてから、


「いただきます!」


 と、そう声を上げてからホカホカのトーストへと手を伸ばすのだった。


お読みいただきありがとうございました。


参考元の商品が名前変えていたので記念(?)回です



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