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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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ソバ打ち


 ソバ打ちはウドンよりも丁寧というか細かい手順がある。


 ソバ粉に水をいれる時は複数回に分けて丁寧に……偏りが出来ないよう慎重にやっていく必要がある。


 何度も何度も丁寧に……固まりが出来てきたらしっかり固めて今度はコネる段階に。


 ツヤが出来るまでコネてコネて……ツヤが出るまでコネたならボウルの中で転がし、円錐形にしていったなら……円錐を立ててから押しつぶし、綺麗な円形が出来上がる。


 今度は延ばしの段階……しっかり打ち粉を使いながら麺棒で延ばして麺棒に巻き付けながら転がして、また延ばして。


 最初の円形が綺麗なら出来上がりも綺麗になるので、あとはそれを畳んだなら切れば出来上がり……後は普通のソバのように茹でれば良い。


 ウドンはある程度雑にやっても美味しくなるのだけども、ソバはこの手順一つ一つが重要というか、手抜きをすると露骨に食感が悪くなるので、奥深いとされている。


 奥深いからこそ様々な方法やテクニックがあって……趣味として確立されているくらいにはマニアックな世界だ。


「俺がやった方法以外にも方法があるというか……手順一つ一つに深い世界があって、極めようと思ったら果てがない世界だね。

 まぁ、普通に食べる分なら今やった感じで問題ないと思うよ。

 麺状にしなくても蕎麦ガキとかガレットとか、色々な楽しみ方があるから、そっちで楽しんでも良いかもね。

 あとは……ソバ粉の割合も深い世界があるかな、ソバ粉を何割にするか……十割ソバとか大好きだけど、自分で作るのは無理かなぁと思っているよ。

 十割はプロが作った麺を使うのが一番だね……最近は技術発展のおかげか特に美味しくなっているから、名産地のを通販で買うのも楽しいよ」


 と、台所でソバ打ちを終えた俺がそう言うと……割烹着姿のコン君とさよりちゃん、そして由貴がうんうんと頷く。


 そう、今回は由貴も割烹着姿だ、テチさんの手作りで……毛の混入防止というよりは、由貴が楽しめるように着やすい作りとなっている。


 そんな3人はテーブルの上に立っていて……目の前には調理用シートが敷かれていて、その上には俺が練ってあげた、小さな円形ソバ生地が置かれている。


 そして3人の手には小さな麺棒が握られていて……今日は皆でソバ打ち体験だ。


 流石に全工程をやってもらう訳にはいかないので、水回し他は俺がやっていて……コン君達は延ばし工程からの参加となる。


 俺がやってみせたように麺棒で生地を延ばし始めて……丁寧に力を込めながら生地を延ばしていく。


「しょばー、しょばー!

 しょ~ば~、しょば!」


 そうしながら由貴はマスクの中で歌を歌っていて……しょば作りが相当に楽しいらしい。


 まぁー……由貴が大好きなのは『焼きしょば』であって、厳密にはソバではないのだけど、今までも普通にソバを楽しんでいたから問題はないはずだ。


「良い匂いだねー、美味しそうだねー」


「ソバを伸ばすのって、結構力がいるんですねー」


 そんな由貴に刺激されてか、コン君とさよりちゃんも楽しそうで、由貴の歌を一緒に歌ってみたり、歌の合間にそんなコメントをしてみたりと本当に楽しそうだ。


 俺はそんな皆を見守りながら茹での準備をし始めて……テチさんは台所の隅でスマホを構えての撮影をしている。


 テチさんも一緒にソバ打ちをしようと誘いはしたのだけど、テチさん的にはあまり興味を惹かれなかったようだ。


 それよりも楽しそうな由貴の撮影をしたいとかで……撮影後はもちろん両家の両親に送られることになっている。


 最初はライブ配信でもしようかと話していたのだけど、絶対に面倒なことになるのでそれはなし。


 こっちに期待とかリアルタイムで電話……というか声掛けをしたいとか言い出すに違いないからなぁ。


 テチさんはなんだかんだと、病院に行くついで買い物に行くついで、美容院に行くついでなどで由貴を連れて実家に顔を出しにいっていて、あちらのご両親がこちらに来ることはほとんどないのだけど、それでも来てしまう可能性があって……テチさんのご両親にも後で動画を送ることにしている。


 それはそれで不満が出るかもしれないけども……マシな選択ってやつだろう。


 なんてことを考えているうちにコン君達の延ばし作業が終わり、生地の畳み作業へ。


 丁寧に丁寧に……小さな手で畳む姿はそれだけでもう可愛らしいもので……俺とテチさんがそれを堪能しているうちに作業完了、あとはカット作業だ。


 カット作業は流石に危険なので任せられないが、俺が包丁を持って、コン君達にも柄を握ってもらって……コン君達主導というか、あくまでコン君達が力を込めたら包丁を動かすという方法でカットしていく。


 少しずつ少しずつ丁寧に、時にはわざと大きく包丁をずらしてみたりして、コン君達に修正させて……ちゃんとコン君達がやっている感を出す。


 コン君達のためと言うよりは由貴のために……ソバ打ち体験を少しでも出来るようにしてあげたなら、茹での作業。


 茹では流石にコン君達に任せられることはないので撮影を終了してもらい、テチさんとコン君達で片付けを進めてもらって……その間に俺は茹でたり薬味を揃えたりと、ソバを楽しむ準備を進めていく。


 天ぷらはスーパーで買ってある……麺ツユも買ってある、胡麻ダレも用意してある。


 薬味は刻みネギ、ミョウガ、ワサビ、大葉、砕きクルミ。


 麺ツユにそれらを入れても良いのだけど、個人的な好みは胡麻ダレメイン。


 胡麻をすり鉢ですり……徹底的にすり、すりゴマを超えて胡麻ペーストになるまですりつぶしたなら、それに麺ツユを少しずつ加えて味を調整する。


 味が濃くなりすぎないように程々に……ツユを水で薄めたりしながら入れたら完成。


 これに薬味を混ぜてソバをくぐらせるとソバにしっかりツユと薬味が絡むので、独特の美味しさになる。


 ソバだけでなくソウメンでも使える美味しいタレで……暑い夏には砕いた氷を混ぜたりしても良い。


 麺を氷で冷やすもよし、タレを冷やすもよし……間違いのない美味しさに仕上がってくれる。


 それらを用意しながら麺を茹で上げたなら配膳を済ませて……実食タイム。


『いただきます!』


 と、皆でそう声を上げたなら、皆で作ったソバを存分に……これも撮影した方が良かったな、なんてことを思うくらい笑顔に溢れた食卓で楽しむのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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