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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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うどん打ち


 ボウルに中力粉と強力粉を入れて、塩を溶かした水を少しずつ入れながら菜箸でかき混ぜていく。


 ある程度まとまったら塊にし、ラップを被せてしばらく寝かせる。


 寝かせたならその上にビニールシートをかけて……しっかりと体重をかけて踏む。


 自分で踏むだけでなくコン君達にも手伝ってもらう……何なら棒でもって叩いてもらったりもする。


 そうやって生地を伸ばし……伸びたら畳んでまた踏んで、これを繰り返したならボウルに入れ直して寝かせる。


 この際結構な時間を寝かせる必要があるのだけど、流石にそんな時間はかけていられないので簡略化、納豆などを作るための保温機で保温しながら短く寝かせたら、それで良しと妥協してテーブルの上にこね場を用意する。


 調理用シートを敷いてたっぷり打ち粉を撒いて……そこで生地を、皆でこねてこねて、こね倒す。


「なんかたのーしー」

「気持ちいいですね、これ」


 なんてことを言うコン君とさよりちゃんと共に生地をこねて……たっぷりこねたなら再度打ち粉をし、生地を平らに伸ばしていく。


 伸ばした生地を畳み、包丁で切って茹でて冷水でしめたら完成……なんだけども、この時にヒモカワウドンの形になるように整えておく。


 もしかしたら本物は別の作り方をするのかもしれないけども、流石にそこまでは詳しくないので簡略化、とりあえず形から整えて茹で上げる。


 そして氷でしめたらザルに乗せ……今度は具を用意していく。


 大根オロシと刻みネギに刻みミョウガ、甘めに煮た豚肉……青唐辛子はなしにして、ナスやトマトのマリネも用意する。


 薄味なら中々悪くない具になってくれるはずで……最後に大葉を用意したら、味が整うはずだ。


 あとは爽やか目の味になるよう、柑橘汁入りのタレを用意し……器にウドンを入れて具を入れて、タレをかけたなら完成、居間へと持っていく。


 するとテチさんと由貴、フキちゃんが待っていて……由貴はすぐさま自分用のベビーチェアへと移動する。


 少し前までは俺かテチさんが抱き上げて座らせてあげていたけども、最近では自分で器用にジャンプして滑り込むように着席……前掛けやテーブルの準備も出来るようになった。


 テチさんから台拭きを受け取ってテーブルを綺麗に拭き上げたなら、両手をこちらに向けて早くちょうだいのポーズ。


 テーブルの上に器を置いてフォークを渡してあげたなら準備完了……皆の分や、追加の具材……トマトなどを乗せた皿を食卓の上に置いたなら自分の席へ。


『いただきます!』


 皆でそう声を上げたなら、俺はトマトへと箸を伸ばしながら声を上げる。


「トマトやナスは好みで乗せてね……由貴も欲しかったら言って、すぐに乗せてあげるから」


 と、そう言ってからトマトを乗せてヒモカワウドンで大根オロシやらと一緒に包んで口の中へ。


 ……果たしてこれが正しい食べ方なのかは分からない、そもそも本物を食べたことがないからなぁ。


 しかし結果は上々……大して寝かしてもいない麺だけども、しっかりと美味しく出来上がっている。


 うどんのキモであるコシに関しては……うぅん、平べったくしたからよく分からないけど、うん、普通に美味しい。


「……しょば? しょば……しょば?」


 そして由貴はそんなことを言いながら麺を持ち上げて……疑問を抱えながらも口の中に運び、ちゅるちゅると口の中に。


 頬をいっぱいに膨らませて、もぐもぐもぐと口を動かし……美味しかったのだろう、目を見開いてモグッモグッと激しく口を動かし、それから二枚目の麺といくらかの具を口の中へ。


 やっぱり美味しかったらしく、もぐもぐ口を動かしながら「んー!」なんて声を上げて、なんとも良い笑顔を見せてくれる。


 他の皆にも好評のようで……あまり作らない料理だからか、新鮮に受け止めてくれているようだ。


 そしてちゅるちゅるっとあっという間に完食、用意した具のほとんども完食。


「好評のようで良かったよ。

 今回はあまり寝かせないで雑に作っちゃったから、次回はしっかり寝かせて作ろうか。

 具も丁寧に作ったらもっともっと美味しくなるかな。

 ……まぁー、本場のものを知らないから完璧にはならないだろうけど、美味しくはなると思うよ」


 と、食べ終えた俺がそんなことを言っていると、同じく食べ終えたコン君が言葉を返してくる。


「にーちゃん、ソバもやろう、手打ちソバ。

 手打ちだとおいしーらしいよ!」


「そうだねぇ、ソバも手打ちだと美味しくなりやすいかな。

 まぁ、あれはあれで奥深くて難しいものらしいけど……友達も何人かが手を出していたかな」


「そーなの? 美味しかった?」


「いや、食べたことはなかったかな、皆趣味の範囲で……自分や家族で楽しむだけだったからね。

 中には上手い人もいて、年末には年越しソバ作りで引っ張りだこだったみたいだよ。

 ……そして、ハマりすぎていた人もいたかな」


 ソバ作りという趣味は入りやすくて奥深い、そして家族や友人に喜んでもらえる趣味でもあるので、ハマる人はとことんハマる。


 俺の料理趣味に似ている部分もあって……極めようとする人の中には、それで商売を始めようなんて人もいる。


 しかし商売となると途端に難しくなる。


 美味しいソバを打てたとしても、ソバ屋に求められる物はそれだけじゃぁなくて、美味しい天プラや丼料理なんかも求められ……寿司や刺し身を出している店もある。


 ソバ打ち職人として勝っていても、料理人として勝っているかはまた別で、更にそこに商売人としての勝敗も影響するとなると、成功への道はひどく険しいものとなる。


 他の飲食業だって厳しさはあるのだろうけど、ソバはまた別格の難易度という印象があって……何人か失敗した人も見たことがある。


 ……俺の料理も皆に喜んでもらえているけども、商売するとなると通用しないレベルなんだろうなぁ。


 そもそもコストを重要視していないし、自分の好みを優先しているし……うん、商売向きではないな。


「そっか~、ソバもたのしそーだなぁ。

 たのしそーだから、オレも作ってみたい! 今日みたいに!

 だからにーちゃん作って!」


 そしてコン君もその入口に立ちつつあるらしい、今日のうどん打ちで何かが目覚め始めているようだ。


「分かった、今度勉強しておくよ。

 ただ麺類が続くのもアレだから、しばらくしてから―――」


 と、俺がそう返していた時だった。


「しょば! しょばつくって!!」


 と、由貴が声を上げて割り込んでくる。


 ……どうやら今回の料理は由貴的には麺料理とは認められなかったらしい。


 ヒモカワウドンにしたのは俺の案ではなかったのだけど……まぁ仕方ないかと頷いた俺は、スーパーに電話をして、ソバ打ちに必要な材料があるかの確認をするのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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