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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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冷凍宅食


「ん? 何これ?」


 ある日の昼過ぎ、倉庫の冷凍庫の掃除をしていると、手伝ってくれていたコン君が冷凍庫の中に置いてあったある物を持ち上げる。


 紙製トレーに成分表フィルム、フィルムの向こうにはうっすら冷凍された料理が見えていて……それは以前花応院さんにお願いして届けてもらった、いわゆる宅食と呼ばれるものだった。


「それは冷凍宅食だね。

 レンジでチンして美味しく食べられて……それは美味しさよりも栄養バランスを重視したやつかな。

 冷凍だから賞味期限が長い、ある意味で現代の保存食だねぇ」


 俺がそう返すとコン君は、フィルムに顔を近付けながら言葉を返してくる。


「たくしょく? あー……CMで見たかも?

 おうちまで届けてくれるんだっけ……こっちだと買えないからなー」


「そうそう……昔は一部の会社しか扱ってなかったんだけど、最近はどんどん会社が増えてきて、味も洗練されているんだよね。

 ただまー……栄養バランス重視だからすっごく美味しいって訳ではないけどね。

 ただコンビニ弁当とかよりは俺好みで、健康にも良いからと買っておいたんだ。

 料理が出来ない時とかには頼りになるからね」


「へーへー……へー……」


 と、そう言ってコン君は興味津々な顔をしてくる。


 興味津々というか食べたくて仕方ないというか……まぁ、うん、コン君らしい反応だ。


 それを受けて俺が親指を立てるとコン君はそれだけで理解したのだろう、人数分……俺とテチさん、コン君とさよりちゃん、そして由貴の分を重ねて手にとって、台所の方へとトテトテ持って行く。


 ……栄養バランス重視の、薄味低カロリー弁当を。


 薄味だけどしっかり素材の味を引き出していてとても美味しい、すごく俺好みで美味しい。


 これをいつでも食べられるなら本当にコンビニ弁当とかに頼る必要ないくらいに評価しているんだけど……薄味。


 果たして獣人の皆に好みが合うか……カロリー大好きな皆としては物足りないかもしれないなぁ。


 なんてことを考えながら冷凍庫の掃除を済ませてから台所に。


 すると既にコン君が温めを開始してくれていて……俺もそれを手伝い、米はついていない弁当なので、ご飯を盛り付けて一緒に居間へと持っていく。


 由貴には食べやすいように子供ようの先割れスプーンを用意してあげて……席についたらペリペリとフィルムを剥がし「いただきます」と声を上げる。


 そして皆で箸を伸ばす。


 唐揚げだったりエビマヨだったり、カレイの煮浸しだったり……そんなメインメニューと副菜二つ、野菜多めで薄味で、塩を出来るだけ使わないためか酢が多め。


 それでいてしっかり良い素材を使っているので美味しくて……個人的には大満足。


 由貴も気に入っているのか先割れスプーンを両手でしっかり持って、どんどん甘酢ハンバーグを口の中に運んでいる。


 さよりちゃんも気に入った様子でニコニコしながら食べていて……コン君とテチさんは少しだけ不満そうだ。


 少なくともコン君のいつもの美味しい笑顔は炸裂していない……テチさんは物足りなさを表情でこれでもかと訴えかけてくる。


「うん、美味しい……昔の冷凍食品って今ひとつのも多かったけど、最近は本当に美味しくなったよねぇ。

 そこらの弁当に負けないレベルで……うん、常に何個は保管しておきたいよね」


 俺がそう声を上げると、コン君は綺麗に食べ上げてから言葉を返してくる。


「そう言えば冷凍庫には結構な数あったけど、どのくらいあるの?」


「確か……60個くらいだったかな」


 俺の言葉に皆が目を丸くし……それを見ながら俺は言葉を続ける。


「うちの冷凍庫は大きいし、門の外と違って気軽に注文出来ないから、まとめ買いしておいたんだ。

 まとめ買いだと割引してくれるしね……それとまぁ、欲しがっている人がいればあげても良いかなと思っての多めだよ。

 冷凍食品ならとりあえず冷凍庫さえあれば保管は出来るからね」


 それと獣人の食欲なら60個でもあっという間に完食するだろうという考えもあったのだけど、それはあえて言わないでおく。


「そっかー……結構美味しかったから、オレもちょっともらおうかな。

 これ、かーちゃんが好きな味だし、簡単そうだから!

 ……そう言えば食べた後はこの……お皿? はどうするの?」


「この宅食は燃えるゴミで出して良いやつだね。

 洗い物をしなくて良いっていうのも、この宅食の利点だね……宅食に頼る時っていうのは余裕がない時だから、そういう小さなこともありがたいんだよね」


「おー……! それならオレだけしかいない時でも食べれそう!」


「メニューも多めで飽きないし、他のメニューも欲しかったらまた花応院さんに頼んでおくよ。

 ただそれなりに大きいから冷凍庫に空きがないとダメで……そこはお母さんと相談だね。

 冷凍庫にこれがあれば、冷蔵庫にあれこれ貯め込まなくても安心出来るから、冷蔵庫に余裕が出来るって利点はあるかな。

 ちなみに冷凍じゃなくても冷蔵庫でも何日かは保存出来るよ」


 冷蔵は冷蔵で普通の弁当と同じくらいには保存出来る。


 全て加熱処理されているし……よほどの長期間でなければ大丈夫だろう。


「んー……これ、醤油かけたら美味しいんだがな」


 と、そこでテチさんがようやくコメントをする。


 なんとも身も蓋もないコメントを。


「ま、まぁ、そうなんだけど、これは塩分控えめの健康メニューだからねぇ……どうしてもならしょうゆをかけても良いとは思うよ」


 醤油をかけてしまっては健康メニューではなくなってしまうのだけども、出産を終えて結構経ったからか、元気いっぱい運動しまくりのテチさんなら、多少の塩分追加は構わないのだろう……多分。


 そして醤油瓶を手にとって少し垂らしたテチさんは……一気に食欲を回復させて、残りの冷凍弁当を一気に食べ上げる。


 ……そして普通に量が足りなかったのだろう、すっと立ち上がり倉庫へと足を向ける。


 コン君もさよりちゃんも、由貴までもがテチさんについていって……そうして獣人4人衆達は結局、健康弁当5食分を一気に食べてしまうのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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60食多いと思ったら、一回で20食消費しちゃうのか…
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