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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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海鮮まん


 車海老を大量注文すると養殖所の人は大喜びで下処理と梱包をしてくれて……車への積み込みもやってくれた。


 同時に注文した魚も同じようにしてくれて……ついでにスーパーでの買い物を終わらせたなら、我が家へと向かって超安全運転で車を走らせる。


 と、その途中、チャイルドシートでがっしりと固定されたコン君が、それでもどうにか首を傾げて声をかけてくる。


「にーちゃん、うちのエビは下処理してもらってたけど、他の人のエビはなんでオガクズまみれになってたの? オガクズの中でエビがぴょんぴょんしてたよ?」


「ああ、あれはエビを長生きさせるための処理だね。

 オガクズが湿っているとエビは呼吸が出来るとかなんとか……それこそ伊勢海老とかも活かして配送する場合はああしてたはずだよ。

 うちはこれからすぐ調理するから良いけど、夕食まで活かしたいとか、家が遠いとかならオガクズにした方が良いんだろうね」


「へぇ~……ああしておくと元気でいられるんだ。

 ……で、にーちゃんは今日、どんな料理するの? なんかパン生地のやつとかも買ってたよね?」


「ん~~~……そんな特別な料理じゃないけど、まぁ作り始めるまで秘密かな。

 すぐに分かることだしね」


「う~~ん? ピザかなと思ったけど、チーズとかは買ってなかったしなぁ……なんだろ?

 エビバーガー……?」


 ある意味惜しいなぁと、そんなことを思いながら運転に集中し、我が家に到着したなら荷物を台所に運び、まずは整理をしていく。


 冷蔵庫や冷凍庫に入れるべきものを入れたなら……さっきコン君が言っていた生地を練り上げていく。


 薄力粉と強力粉、ベーキングパウダーとドライイースト、そして砂糖、それをぬるま湯でもってじっくりとこねていく。


 ある程度こねたらごま油を足して更にこね……生地に艶が出るまでこねたなら丸めてボウルに入れて、ラップを被せて常温放置。


 あとは発酵するのを待つことになり……その間に餡を調理していく。


 餡はまずサクラマス、玉ネギ、本シメジ、生姜、煮タケノコ、そして車海老の身を使用量の半分入れてミキサーに。


 そうしたらそれに残りの身、プリプリ食感の元となるエビを入れて、醤油、お酒、ごま油、片栗粉、パン粉を入れてこねていく。


 こねあげたなら餡が完成、あとはこれを発酵で膨らんだ生地で包んで……蒸し上げるだけ。


 完成するのはサクラマスとエビの海鮮まん、最高の食感と旨味の暴力が楽しめる個人的に一番美味しいと思う中華まん料理だ。


 肉まんもあんまんもしっかりこだわれば美味しくなると思うのだけど、海鮮まんの濃縮旨味には負けると思っている。


 まぁ、ここら辺は好みなんだろうけども……魚の種類を色々変えたり、カニを入れてみたり、色々な組み合わせでも美味しく楽しめるのが海鮮まんの良いところだと思う。


 という訳で蒸し器で蒸し上げる間に、残りのエビも調理していく。


 王道にエビフライ、そして明日用のエビグラタンの用意、あとはタルタル焼きをやっても良いかもしれない。


 あとはガーリックシュリンプにしても美味しいのだけど、あれは別に車海老じゃなくても美味しいからなぁ……また今度別のエビでやるとしよう。


 そうやって明日の準備をしていると海鮮まんが蒸し上がり……出来立てが一番美味しいということで、早速配膳をすることに。


 と、言ってもちゃぶ台の上にタオルを敷いて、その上に蒸し器をおいて、あとは取り分け用のトングとお皿を用意するだけなので簡単なものだ。


 合わせるお茶は烏龍茶……市販のペットボトルではなく、茶葉からしっかり淹れて、少し渋めが合うと思う。


 そして我が家で中華まんを出すのは中々ないことなので、食卓ではテチさんが由貴を抱っこしながらワクワクモードで待機していて……調理を見学していたコン君とさよりちゃんも、すぐさま席について早く早くと両手をこちらに伸ばしてくる。


「熱いから持つ時も食べる時も気をつけてね。

 お皿に乗せながら少しずつ食べると良いよ」


 と、言いながらトングでもって取り分けてから、手合わせいただきますと声を上げ……それから皆で海鮮まんにかぶりつく。


 すぐに熱い汁が中から吹き出してくる。


 サクラマスとエビの旨味をたっぷり溜め込んだ汁は、それだけでも最高のスープとなっていて……皮部分と一緒に食べるとたまらない旨さだ。


 そしてすぐに感じるエビの食感……更に噛めば先程の汁以上の旨さが口の中に広がって、やや甘めの皮との相性は最高、一口食べ終えたなら烏龍茶で洗い流してからの二口目。


 中華まん料理は熱くて食べるのが大変なのだけど、逆に言えば中々冷めないのでじっくり楽しむことが出来るのが最高だなぁ。


 ……やや気温が上がってきて初夏に入りつつある今食べるのはちょっとアレだけど、それでもやっぱり美味い。


 本番は冬かなぁとも思うのだけど、しかし今食べたくなってしまったものは仕方ないか。


 サクラマスは養殖でしっかり育てているからか、旨味と脂が強いのが特徴でかなり美味しい。


 天然ものももちろん美味しいのだけど、しっかり太らせた養殖ものにしかない味わいもしっかりある。


 何よりサクラマスには雑味がない、ただただ純粋な甘さを楽しむことが出来て……これが中華まん料理にすると最高なんだよなぁ。


 鮭とかでももちろん美味しいのだけど、サクラマスの美味しさには敵わない。


 ほんっとうに美味しいサクラマスは、醤油などなしにそのまま食べても美味しいと感じるくらいに旨味が強いので、それをこんな風に凝縮させたならとんでもない美味しさになるのは当然だった。


 そこにエビの旨味と食感が加わって……ややサクラマスが主役になってしまっているが、これはこれでエビを美味しく食べる調理ではあるので問題ないだろう。


 そんな海鮮まんのテチさん達の評価は……勝手に蒸し器の二段目に突入していることからも分かるように、かなり良いようだ。


 同じ中身をただ食べる続けるでは飽きてしまうかな? なんてことも思ったけど全く問題なしで、かなりの勢いを見せている。


 念の為、追加の海鮮まんも作れるように用意はしておいたけど……これは早めに蒸し始めた方が良いかもしれないなぁ。


 そういう訳で台所に行こうかとも思うけど……テチさんに抱きつきながら海鮮まんをじぃっと見つめて、羨ましそうに見ている由貴にも食べさせてあげないとな。


 という訳で、一つ食べ終えたところで、新しい海鮮まんを皿に乗せ、菜箸で軽く解体してから冷まし……由貴が食べやすいだろう大きさに整えてから由貴を引き取って抱っこしてから、まずは一口食べさせてあげる。


 すると由貴は目を見開いてモグググググッと凄まじい勢いで口を動かし、そして俺が食べさせてあげるまでもなく皿に飛びついて自分の手でもって解体された海鮮まんを食べ始める。


 無我夢中、止めても聞かないだろうという勢いで……しょうがないので静かにその様子を見守る。


 そしてひとつ分を綺麗に平らげお腹を膨らませた由貴をそっと抱き上げた俺は、手と口の周囲の汚れを拭き取ってあげた上でベッドに寝かせてから……結構な量を用意したはずの海鮮まんを全滅させつつある肉食獣達のために、台所へと足を向けるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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